4-188 クガニナーの祠からの脱出
――聖智樹の視点から――
死に物狂いで走り続け、どうやって元の場所に戻ったのかわからないままに俺達はどうにかしてエレベーターに乗り、増援が現れない事を確認してから呼吸を整える。
地上のバックヤードエリアは特に大きな変化はないが、爆発音は鳴りやまないのですぐ近くでドンパチが始まっているのだろう。
「皆!」
「トモキさん!」
俺達は真っ先にスタッフルームに戻って皆の無事を確認すると、不安で泣きそうな顔のニイノが笑顔で出迎えてくれた。
「リアンとマタベエちゃんは?」
けれど室内には二人だけがおらず、ヒカリは意味もなくキョロキョロと探してしまったが、彼女はリンドウさんの顔を見て身体が固まってしまう。
「っ」
「ついさっき使えそうなものを探すって出て行ったたよ。二人とも会ってないのかい?」
リンドウさんはいつも通り優しい目をしていたけど、目の前にいる存在が先ほどまで戦っていた鍋島竜胆と別人とはいえこうなるのは無理もない。
「ん? まさか何か」
「あ、いえ。入れ違いになったのかもしれませんね」
「そうかい、なら良かったよ」
その反応でリンドウさんは良からぬ予想をしてしまったが、ヒカリは誤解を解くためにすぐに安心させる言葉で誤魔化した。
「でもリアンとマタベエはどこに……ん? 扉が開いてる?」
マップ機能で彼女達を探していると俺は格納庫らしき場所を発見し、そこから巨大な何かと一緒に出ていくマタベエを発見した。
「いました。多分ですけど機神兵に乗って戦うつもりなんでしょう」
「そうですか、なら良かったです」
実況する様に安否を伝えるとアマビコはホッと胸をなでおろす。
だけど待っていろって言ったのに勝手に戦いを始めるのは少しばかりいただけない。
「全く、泥棒に盗られるなんてセキュリティが適当にも程があるな」
その部屋は雰囲気的に後から増設された部屋の様にも見え、中にあった機神兵も俺の知っている機体はほとんどなかった。
おそらくそこにある機体の全てが神代の技術で作られた物であり、俺達の時代の機神兵と比べても比べ物にならないくらい高性能なものばかりなのだろう。
だけど厳重なセキュリティが求められる軍事施設は弾丸一つたりとも簡単に外に持ち出せない様にするのが常識だ。案外先人達はいい加減だったのかもしれない。
「まあいい、俺達も急いで外に出てリアン達に加勢するぞ。だけど敵が敵だから他の皆は下がっていてくれ。あれは生身の人間じゃ太刀打ち出来ない」
「わかりました」
特に用事もないしこのまま戦場のど真ん中にあるクガニナーの祠にいては危険だ。
俺が指示を出すと、カムナも戦うという選択肢を放棄し素直に従ってくれた。
スタッフルームを後にし、屋外に出ると戦いも佳境に差し掛かっていた。
大山の如く巨大な黒鉄の機神兵クルガネザーシーは沖縄の大地を、天空の覇者たる天龍リンドヴルムは沖縄の空を支配し、オトハやノミコと交戦を続けていた。
「二人とも大変そう。このままじゃジリ貧だよ。でもどうやってあんなのと戦えば」
強大な敵を相手にオトハもノミコもどちらも消耗が激しく、ヒカリは無力感に途方に暮れてしまう。気が乗らないが戦う以外の選択肢はない。
「あれは……」
天龍リンドヴルムを観察していると羽虫の様なものが頭部に接近、魔龍はパクンと一飲みにしてしまう。
どうやら鍋島竜胆は一番安全な場所に隠れてしまったらしい。黄金の箱を取り返すにはあいつを倒すしかなさそうだ
「やるしかないか。俺がやらなきゃ誰がやるってタイプじゃないんだけどな」
「智樹、それは」
アイテムボックスから八百八狸の杖を取り出した俺は、管理者権限を実行してヤオハチを召喚する。
あの神話レベルの怪物を倒すには同じく神話として後世に語り継がれている伝説の機神兵の力を借りるしかないだろう。
「後は任せた。こんなクソみたいな戦いで命を捨てるつもりはない。生きるために戦ってくるから。絶対に生きて帰って来るから」
珍しく主人公らしい事を告げ、葉瀬帆のドローン攻撃の後俺の死がこんな感じの台詞で捏造されていた事を思い出した。
誰もが当たり前のように死ぬ終末の世界において、生きたいと願う事は最大の罪だ。
「頼んだぞ、ヤオハチッ!」
もしこの嘘偽らざる想いをあの時に実際に言ったとしてご時世を考えれば検閲が入るだろう。
だけどたまにはこういうのもいいな、と思ってしまった。




