4-183 大災厄の因縁に終止符を打つために
全ての真実を語り終えた希典先生は絶望する俺達に気を配る事なく急かし、膝を崩れて倒れていた俺達を無理矢理起こそうとした。
「時間も押してるしさっさと最深部に行くよぉ。ほれ、ハーリーハーリー」
「嫌です」
だけど俺は意地でも先に進みたくなかった。
ここで何かをした所で永遠にこのくだらない戦争は終わらない事はわかっていたからだ。
「どうせこの先にあるのはろくでもない兵器なんですよね。希典先生が一人で行ってください。あんたなら大体の事が出来るはずですよね」
「こっちにも事情があってねぇ。それに確かに使い方次第では世界を滅ぼせるけど、」
「あんたの都合なんて知りません。俺はもう戦争に関わりたくないんです」
彼に認められた安仁屋首相がそうであった様に、俺はずっとこの超越者にいい様に利用され続けるだけなのだろう。
「……ごめんね、智樹ちゃん。俺っちの尻拭いをさせて」
だけど俺がごねた時、超越者であるはずの彼はあろう事か謝罪した。
「俺っちは安仁屋を選んだ。その結果世界は終末へと向かった。だから俺っちは大人としてケジメをつけなきゃいけないのさ」
「だったらあんたがやればいいでしょう!? そう思ってるんだったらッ!」
直接手を下す事はなかったがブレーンである希典先生は暗君安仁屋を生み出す遠因を作ったはずだ。
正直この怒りは筋違いかもしれないけど、高ぶった感情を抑えきれずに俺は声を荒げてしまった。
「殴りたきゃ好きなだけ殴っていい。今なら運命が変えられる。それでも行かないのかい?」
希典先生は甘い言葉で唆し、お望み通り殴り飛ばそうと拳を握りしめた。
「頼む。夢を終わらせてくれ。俺っちが、安仁屋が、竜胆が見た夢を」
けれど俺は次第に何もかもがどうでもよくなり、拳から力が抜け立ち上がる事も出来なかった。
「私は行くよ」
「ヒカリ」
しかしヒカリは再び運命に立ち向かう事を選択する。
その曇りのない瞳に太陽の様な光を宿した彼女に、もう迷いはなかった。
「お願い智樹、力を貸して。いくらゴリ押しでも管理者権限がないとどうにもならないから。こうなったら最後まで付き合うから。智樹の事は絶対に私が護るから」
ああ、やっぱり彼女は根っからのヒーローだなと俺は思ってしまった。
何度でも立ち上がる彼女にどのような小細工を使った所で、卑怯なモブの俺は絶対に勝てないだろう。
「……馬鹿言うな。ゴリラなお前に任せきりじゃうっかり俺も投げ飛ばされちまうよ。ダチと一緒に戦わない親友がどこにいる」
ヒカリはいつだって底抜けの明るさで俺達を導いてくれた。
親友の彼女がいたからこそ、死と隣り合わせだった俺は絶望にも負けず過酷な毎日を生きる事が出来たんだ。
「背中は任せるぞ、ヒカリ」
「当たり前だよ、智樹」
だからこれは普段からお世話になっている親友への恩返しだ。
戦う理由はそれだけでいい。
希典先生の都合も、大昔の人類の都合も、反乱軍やアンジョの都合も何もかもがどうでもいい。
「この戦争が終わったら絶対に生きて帰るぞッ!」
「行っちゃうぞバカヤローッ! 最強友情タッグのスペシャルエキシビションマッチの始まりだッ!」
「はは、若いっていいねぇ。けど若者はこうでないとねぇ。よろしく頼んだよ、未来ある若人よ!」
俺とヒカリは過去から続く因縁に終止符を打つためにクガニナーの祠の最深部へと向かった。
ほったらかしにされた希典先生は暑苦しさに苦笑していたけど、もちろんオッサンの事なんて眼中になかった。




