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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-111 ビワガブリン改めツンツンの加入

 NAROとの顔合わせを終え、俺達はクガニナーの祠への突入作戦の準備をするため集落へと戻った。


 決行の準備は着々と進んで戦力も徐々に集結し始め、ムゲンパレス勢からはオトハとタカオが応援にやって来たので、俺達は集落の入口に移動して援軍を出迎える。


「めんそーれでーす!」

「どもー」

「めんそーれだな、オトハ、タカオ」

「なんでやってくる方がいらっしゃいませ、って言ったの? でも異世界転移した皆のお世話をしただけじゃなく案内までしてくれてありがとうね」


 意味を理解しないまま沖縄で最も有名な方言を使ったオトハにヒカリは首をかしげたが、かりゆしウェアに着替えた彼女はすっかり観光気分だった。


「いえいえ、お客様へおもてなしをするのはキャストの生きがいですから~。後は関連施設への視察という事で勉強してきました!」

「沖縄を楽しんでくれた様で何よりだよ~」


 お気楽なオトハとヒカリは馬があったらしく、ゆるーりまたーりな空気を醸しだしていた。


 周囲に近付いたら時間の流れが遅くなりそうだけどこの現象を論文に書けばきっと何かしらの賞が貰えるだろう。せいぜいイグノーベル賞だろうけど。


「いい御身分な事で。でもちょっと到着が遅れたのは流石に観光してたってだけじゃないよな。随分と大荷物だけど」


 正直オトハならその可能性も十分にあり得たが、もふもふ君部隊はコンテナをえっほ、えっほと運んでいた。おそらく役に立つ物資をいろいろ持ってきてくれたのだろう。


「よくぞ聞いてくれました! お土産をたくさん用意しましたよ!」

「武器とか食糧とかいろいろ揃えたから好きに持っていって。でもニライカナイのコミュニティへの支援物資は残しておいてね。あとお金は払ってね」

「金は取るのか」

「こっちも仕事だからねー」


 だけど無料ではなかったらしくタカオはちゃっかり金銭を要求する。RPGではしばしばダンジョンの売店で仲間が金銭を要求するが実際にこの状況でやるとは。


「ちゃんと売り上げはコミュニティへの支援物資で赤字になった分を補填するのに使うからじゃんじゃんお金を落として。お金を出せば出す程コミュニティの人への支援物資が充実して幸せになれるから」

「そう言われると文句を言いにくいな」

「私高給取りだから結構懐が温かいんだよね~。そういう事なら地元を応援するつもりで散財しておこうか」


 メタ的な理由を言えばゲームバランスの調整が理由だけどタカオは現実的に納得の出来る説明をしてくれた。ひょっとしてゲームでも売上金は復興とかに役立てているのかな。


「これなんてオススメですよ~、昔ムゲンパレスで働いていたもふもふ君が考案したとっておきのカリもふパンです!」


 オトハはルンルン気分でコンテナをパカッと開けた。俺もムゲンパレスの売店で見かけた事があるけど一番人気ですぐに売り切れちゃうんだよなあ。


「フガ~」

「あれ?」


 しかしコンテナの中には丸々太ったガブリンがいて、口元にパンくずを付け幸せそうにお昼寝をしていた。


 もしも人語を話せるのならお腹いっぱいでもう食べられないよ~、と寝言を言っているのだろうか。


「ちょおい!? 私のカリもふパン! このずんだれガブリンがくらすぞオラー!」

「フガ~!?」


 楽しみにしていたカリもふパンを全て食べられてしまったオトハはブチ切れ、ガブリンの全身をゴム鞠の様にぐにんぐにんと引っ張った。


 でもほっぺたをむにょむにょされる柴犬みたいでなんとも可愛らしい。俺もずっとやりたかったけど良心の呵責があったから止めてたのに。


「おいおいオトハ、パンぐらいでそんなに怒るなよ」


 可哀想だったので俺は仕方なく止めるがもちろん嫉妬とかしてるわけじゃない。


 だけど優しくしたせいでガブリンの好感度が上がってしまい、怒られた不安から俺に泣きついてしまう。


「フガ~」

「おーよしよし、怖かったなあ」


 掴めば指が沈むほどのもっちりボディのガブリンは触るととてつもなく心地よく癒されてしまう。このわがままボディには抗える人間なんていないって。


「じー。私も撫でていい!?」

「いいぞー」

「じゃ遠慮なく!」


 手をわきわきとさせたヒカリはガブリンを鷲掴みにしてむにょんむにょんと揉みくちゃ苦にする。


「うへへ、すべすべぷにぷにでたまらんでごわす」

「フガフガ~」


 なんだかいやらしい事をしている様に見えるのは気のせいだろうか。


 だけどここまでされてもガブリンは喜んでいる様に見える。オトハの場合は怖がっていたのに要は感情の問題なのだろうか。


「フガ!」

「お、くれるのか」

「わあ、ありがとー。もぐもぐ」


 ガブリンは助けてくれたお礼にいつものビワをくれ、ヒカリは早速むしゃむしゃと食べた。しかし毎回どこから取り出しているんだろう。


「むう、ガブリンを人に慣れさせたら駄目ですよ。可愛くても噛まれたら大怪我をしますし、ゴミ捨て場や畑を荒らして生態系を壊す厄介者なんですから」

「へー、こっちの世界じゃアライグマとか野良犬とかああいう感じなのかな。でもこの子はいい子だもんね」

「フガー」


 オトハは一応注意したが、ヒカリは全く気にせずむにょんむにょんと揉みくちゃにする。でもこれだけもちもちボディで可愛いのなら仕方がない。


「めんそーれー。あそびにきたのー?」

「フガー」

「ありゃ、また可愛いのが来たよ」


 楽し気な気配に気が付いたマタベエは建物から出て来て俺達に絡んでくる。ムゲンパレスのマスコットキャラのツートップはいつ見ても愛らしい。


 ガブリンは彼にもお土産のビワを渡すと、マタベエはわあ、と喜んで星のかけらが入った小瓶を取り出した。


「ありがとー。これあげるね」

「フガ!」

「あ」


 潜在能力を引き出す星のかけらは数の限られたチートアイテムだが、マタベエにとっては友達から貰った幸せな気持ちを返すほうが大事だったらしい。


「ま、いっか」

「フガ~」


 ガブリンはきらきらした金平糖をポリポリと美味しそうに齧った。よく一緒にいるこいつが成長した姿を見てみたい気もするしこれはこれでありか。


 だが意外にも変化はすぐに現れた。


「フガ?」

「わあ! しろくなった!」


 星のかけらを食べたガブリンは水色ガブリンから白いガブリンに変化してしまう。


「白くなったな」

「白くなったねー」


 ただマタベエは驚いていたが、目でわかる変化はそれだけだった。


「ド〇クエ方式か。地味すぎるけどこういうパターンもあるのか」

「赤と青のセットでみんなのトラウマになりそうだね」


 どうせならポ〇モンの様にガッツリ見た目が変わったほうが面白いけど、あまり変わり過ぎても本人が困ってしまうしこれで良かったかもしれない。


 俺達は特に気にせず白くなったガブリンを揉み撫でた。


「よし、それじゃあ白いから君の名前はツンツンにしよう!」

「フガ!」

「白いからツンツン? 本人も気に入ってるみたいだしいっか」


 白いガブリンは白いからという理由でツンツンと名付けられた。多分だけど白から雪、雪からツンドラ、そこからツンツンに変化させたのだろう。


 付き合いの長い俺にしかわからない独特な発想だが、ビワのガブリン改めツンツンは名前をプレゼントされ喜んでいた様だ。


 オトハはほのぼのした光景に脱力し、口を尖らせ不満げに言った。


「はあ~、なんだか怒る気も失せました。お腹が減ったので皆でごはんにしましょうか」

「うんうん、それが一番だよ!」


 食欲モンスターのヒカリは美味しいごはんというキラーワードにすぐに食いつき、ずっと様子を見ていたタカオはよいしょ、と荷物を運ぶ手伝いを始めた。


「じゃ、とっとと運ぶのを手伝って。あと私ももにゅっていい?」

「いいぞ?」

「フガ」


 そしてちゃっかりポーカーフェイスでツンツンをもにゅもにゅした。それにしても本当に人懐っこいガブリンだなあ。


 ひょっとしたらツンツンって元々人に飼われていたのだろうか。


 他の怪異同様、ガブリンも動物系の民間伝承や都市伝説がベースになったとかそういう背景があったりするのかもしれない。

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