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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-109 理解不能な瀬田直子の思考回路

 ヤンデレ気味な恋原隊長とひと悶着はあったもののそれは一旦さておき、改めて作戦会議をするため俺は恐る恐るミトラさんに尋ねた。


「……で、まさかとは思いますがこの会議室にいるのは全員NAROの隊長ですか?」

「はい。長官の私も含め、一番隊から十番隊まで全ての隊長が揃っています」

「にゃは~」


 先程絡んできた恋原隊長は手を振って存在をアピールするが、たとえて言うなら魔王軍の幹部が集まる会議に放り込まれた俺はバキバキに緊張してしまう。


「つまりアンジョさんの世界で秩序を担う組織の幹部が全員揃っているわけなんですね。向こうの世界は大丈夫なんですか?」

「ここにいるのはあくまでも九州地方を担当するNAROですから。それにここにいるのは精鋭とはいえ全体のほんの一握りなのでさほど組織運営には問題はありません」


 カムナはNAROの仕組みが気になって質問をしたが、実際人数はかなり多いので仮にここにいる幹部が全滅したとしてもあまり変わらないだろう。


 長官も在籍する最前線の九州NAROには強大な権限が与えられているけど、もしも何かあれば大阪NAROが引き継ぐ事になるはずだ。


 ミトラさんも政府全体で見れば中間管理職であり、良くも悪くも消耗品である彼女達の代わりはいくらでもいる。NAROはそんなにヤワな組織ではないのだ。


「でも特殊部隊が全員揃っているみたいなものですよね。少しばかり大げさすぎやしませんか? 異世界の支配者や我那覇総督からすれば喉から手が出る程欲しいんでしょうが、今の時代ならガラクタみたいなものでしょうし、妨害するにしてもここまでの戦力は……」


 俺はミトラさんから異世界の支配者とNAROに繋がりがある事は聞いており、人類の負の遺産がこの世界に破滅をもたらしかねない事も理解していた。


 だけど今の時代にはそんなものよりずっと強大な力を持つ兵器はいくらでもある。


 仮に核ミサイルがあったとしてもそれを上回る兵器を使って制圧すれば事足りるので、特殊部隊を総動員する必要なんて全くなかったのだ。


「智樹さんにはまだ伝えていませんでしたね。今回の件には旧希典派の瀬田直子と大儀見ジャックスハルオも関与してします」

「旧希典派の? 我那覇総督と向こうの世界で反乱を起こした事は軽く聞いていましたが、瀬田直子も絡んでいたんですか」

「っ」


 ミトラさんは俺の疑問点に答えてくれたが、何故かヒカリは瀬田直子の名前が出た時に一瞬ドキッとしてしまう。


 旧希典派の幹部である瀬田直子は確かに極悪人で民衆の敵だ。


 けれど指名手配のポスターでしか見た事がないテロリストに対して俺はそれ以上の感情は抱いていない。もちろんNAROに就職したヒカリはそうではないのだろうけど。


「ニライカナイには核ミサイルの類の兵器が存在しているであろうという可能性は想定しており、異世界の支配者もそれを狙っていますが、結論から言うと我々の本命はその様な兵器ではありません」

「と、言うと?」

「旧希典派の瀬田直子は葉瀬帆でドローン爆撃によるテロを行った後、防衛システムの八咫鏡のシステムの抜け道を利用し、推定二千発の核ミサイルによって各国へ脅迫のメッセージを送りました」

「……え?」


 だけどミトラさんが語った言葉に俺は絶句する。


 内容的には後半部分のほうがとんでもなかったが、個人的には圧倒的に前半部分のほうが衝撃的だったからだ。


「そうですか、あいつが葉瀬帆を……愛理を……」


 俺の第二の故郷でテロを行ったのは瀬田直子だったのか。


 愛理を殺したのはあいつだったのか。


 あいつが俺から何もかもを奪ったのか。


 地獄から這い上がってようやく掴んだ、これっぽっちしかないなけなしの希望を。


「トモキ」

「大丈夫だ、リアン」


 俺は腹の底からこみ上げる激しい怒りを抑えて拳を握りしめた。


 今はこの想いを爆発させる時ではない。そんな事をしてしまえば皆は怖がってしまうだろう。


「まれっち。瀬田直子は何でそんな事をしたんですか?」


 俺はあいつの事を理解したくもなかったが、せめて動機程は知りたかったので元上司に尋ねた。


 だが希典先生は無の表情で首を小さく横に振る。


「その場のノリとかなんとなくとかそういうアレじゃないの? あいつは良い奴とか悪い奴とかそれ以前に頭のネジがぶっ飛んでるからねぇ。常人の思考じゃ絶対にあいつの事を理解出来ないよ」

「まれっちには理解出来るんですか、あいつの事を」

「なんとなくはね」


 先生に聞いても欲しかった答えが得られなかったが、仮に分かったとしてもどの道理解は出来なかっただろう。


 俺はこれ以上瀬田直子の事を考えたくなかったので思考を中断させた。

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