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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-103 ついでに謎のアジアンビューティーゼン板長の裏設定

 和やかな空気の中、マタンゴさんの幸せパワーによってイッてしまったハニィさんを眺めていたイルマだけは異なる反応をしていた。


「鳳仙達だけじゃなくてヨンアとノミコがそちら側ってのはなんとなく知ってたけど……それだけじゃないよね?」

「ふむ?」


 希典先生がニマニマと笑うとイルマは何故かゼンに視線を向けてしまう。彼女は自分が見られている事に気付き、


「え、まさか私? 何で? 私ゼンゼン怪しくない中国人アルヨー。ゼンだけにネ、哈哈哈ハハハ!」


 と、笑いながら一昔前の胡散臭い中国人のように振舞った。だけど俺はそれを見てもやはり彼女が怪しいとは思えなかったんだ。


「マジ!? ねえ鳳仙、ゼンってそうだったの!?」

「私を信じるアルヨ、ヒカリ! 汪汪うるうる!」

「うーん」


 しかし真実を当然知っているであろう鳳仙は言い淀んで即座に否定する事はなかった。たった一言違うと言えばいいのに何故彼はそうしないのだろうか。


「ちなみにイルマ、お前さんがそう思った根拠は?」

「肝が据わり過ぎてるからだよ。半グレの銀狼会には元々カタギの人間もたくさんいるけど基本的に暴力に慣れていない。だけどこいつは銃撃戦が起きようが異世界に来ようがいっつも笑って平然としている」


 イルマの述べた根拠は明確なものではなかったが、確かに彼女はほとんど動揺している様に見えなかった。


「下手をすればあたし達よりずっと修羅場をくぐってるはずだよ。こんな風にね」

「「っ!?」」


 イルマは自らの主張を照明するためいきなりライフルの銃口をゼンに向け、その場にいる全員が命を奪いかねない行為に動揺してしまった。


「弾が入ってなくてもそんな事したら駄目だヨ、イルマ。でも安全装置は外した方がいいヨ」

「もちろん外してるよ」

「嘘嘘、一度言ってみたかっただけサ。でもそんな事言われてもねー、どう説明したらいいのかナー」


 けれど銃口を向けられてもゼンは全く動じておらず、それどころか冷や汗一つ流さずに冗談を言った。


 その恐怖すら感じる胆力に俺は彼女がただの中国人留学生ではないと確信してしまう。彼女はきっとそういうのに慣れているはずだ。


 民間人と軍人の最大の違いは精神の強さだ。


 軍人が戦場で平然としているのはそういう風に訓練されているからであるが、本物の戦場では訓練を受けた屈強な兵士ですら精神を保てず使い物にならない事も多々ある。


 戦闘行為は口で言うのは簡単だが、実際に命のやり取りをして正気を保てる人間はまずいない。


 なので覚悟のない民間人を無理矢理徴兵して兵士にした所で何の役にも立たないパターンがほとんどだ。


 だけど彼女はおそらく本職よりも死線を潜り抜けている。きっと鉄パイプ一本あれば新兵くらいなら余裕で倒せるはずだ。


「私はカタギでただの脇役なんだけど……希典さんからもなんか言ってヨ~」

「ゼンは確かにこちら側の人間だけど内通者じゃないよぉ。見ての通り普通の中国人留学生さ。もし何かがあってもお前さん方とは敵対しないから気にしなくていいんじゃない」


 ゼンに助けを求められた希典先生はイルマの推理を認めた。とはいえこの光景を見ても彼の主張通り普通の中国人留学生とは思えないけども。


「そういうわけだからさぁ、裏設定みたいなものと思いなよ」

「心配しなくても私は何もしないし何も出来ないヨ。大体何か出来るものならとっくの昔にやってるサ」

「わかったよ」


 彼女はまだ納得していなかったけど、ゼンから漂う悲壮感を察してそれ以上追及するのを止めた。


 ゼンがどのような考えで行動しているのかはわからない。


 けど危ういニオイも感じないし俺の直感では悪人ではなさそうだ。それを根拠とするには少しばかり頼りないが十分だろう。

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