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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-101 外宇宙のオッサン希典先生の目的

 希典先生は人類史の影で暗躍していた一族の実質的な当主だった――それだけでも衝撃的だったが、俺はもう一つどうしても気になった事を質問した。


「つーか少なくとも縄文時代から生きてるって何歳なんですか、希典先生って」

「さあね、忘れたよ。でもデンジャー先輩よりは年上だねぇ」

「いや私の年齢は設定ですから」


 彼は実年齢をぼかしたがそのせいでデンジャー先輩が巻き添え事故を食らい、心の準備をしていなかった彼女は困ってしまう。


「そういう設定あったんですね。ちなみにデンジャー先輩って何歳なんです?」

「ええと、ちょいちょい自分でも設定を忘れちゃうからなあ。六百六十六歳だったり一万歳だったり十万歳だったりするけど……取りあえず今の世を忍ぶ仮の姿は十八歳以上だよ」


 彼女は苦笑しながらヒカリの疑問に正直に答える。コープスペイントをしている時は蠟人形にしてしまいそうなくらいヒャッハーしているのに割と設定が甘くブレているらしい。


 だけどそのいい加減がインディーズの良さでもあると言えよう。このテキトーっぷりすらも愛おしい。


「それで、そんなに長生きをしてまれっちは何がしたかったんだ」


 ただ正体を知ってしまったザキラの笑顔は引きつっていた。


 設定ではなく実際に永遠にも近い時を生き続けた荒木希典はまさしく現人神と言うべき存在であり、彼がそう望めば世界を作り変える事も容易かったからだ。


「何も。元々自分達の世界をよくしようって積極的にアレコレ介入してたんだけど、やらかして滅ぼした結果こっちの宇宙にやって来たわけだからねぇ。少なくとも人類の発展のために何かをしに来たわけじゃないのよ」

「……さらっととんでもない事を言った気もしますが、続けてください」


 希典先生は今の所爆弾発言しかしていなかったが、いちいち指摘しては時間がいくらあっても足りないので、俺は精神の安定を保つためにスルーを選択した。


「んで、一族にも派閥があってね。大まかに言うと積極的に介入しようって奴と、技術の拡散を防ぐために関わらないでおこうって奴と、やらかした後始末程はしておこうって奴に別れるんだけど……今は俺っちが当主代行だから後始末派が最大勢力だねぇ」

「後始末、ですか。それは向こうの世界でやらかした話と関係が?」

「うん、ガッツリ関係があるね」

「そうですか」


 そして俺はその時ようやく答えに辿り着いた。


 今まで何が目的で行動していたのかはわからなかったが、超越者である外側の存在の彼がこの世界で何をしようとしているのかを。


「希典先生は俺を介して世界に干渉していましたが、それは後始末の手伝いをさせるためだったんですね。自分の一族が遺した負の遺産を消し去る後始末を」

「せいか~い。花丸をあげちゃうね。ほっぺに描いてあげようか?」

「いりません。でも希典先生の行動の理由と目的がわかって少しだけ安心しました」


 彼は重苦しい空気を誤魔化すためにわざとらしくおちゃらけたが、その姿は少しばかり痛々しかった。


 結局のところ俺が希典先生に恐怖していたのは理解が出来なかったからだ。彼が何故テロリストになったのか、あるいはテロリストではないのかも。


 スケールの大きさに戸惑いはしたが、希典先生はやはり極悪人なのかもしれない。


 だとしても長い時間をかけてまで自分が犯した過ちを償おうとしているというのなら、少しは彼の行動にも共感出来る部分はあった。


 だけど俺の考えを察し、希典先生は珍しく教師の様な眼差しで諭すように言った。


「俺っちに心を許しちゃ駄目だよぉ、智樹ちゃん。俺っちはあくまでも俺っちの目的のために動いている。目的のためなら人類はもちろん、身内の事も一切考えずに利用して切り捨てる。俺っちはそういう人でなしなんだよ」

「それでも、ですよ。あなたにとってこの世界は牢獄でしかないはずなのに、あなたはそれでも生きる事を選びましたから」


 荒木希典が歩いてきた道は決して希望に溢れた旅路ではなく、社会を変革するという自分の思い描いた夢を壊すための物語だ。


 そんな苦難の道を彼は自分の過去にケジメを付けるためにたった独りで歩き続けた。俺ならばその絶望に耐え切れず容易く心が折れてしまうだろう。


「生きる事を選んだ、か。そういうのじゃないんだけどねぇ。俺っちほど長生きをしなくても、仕事とか夢とか家族とか、いろんなものを諦めながら人生の折り返し地点まで生きたらそのうちわかるんじゃないかなぁ」


 けれど俺の尊敬の眼差しは希典先生にとっては最大の苦痛だったらしい。彼は水代わりのプレアデスビールの缶を握りしめたが、それを飲む事はなかった。

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