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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-100 外宇宙の客神アラハバキと、荒木の一族

 まれっちの正体は荒木希典で、荒木美虎と荒木鳳仙は彼の仲間だった。


 ただこの辺りの事情はほとんどのメンツが知らず、ほったらかしにされたリアンは話についていけず困ってしまう。


「ちょーい、何勝手に話を進めて置いてけぼりにしてるんだ。ええと、結局まれっちとミトラとホウセンは仲良しで身内って事なのか?」


 現実世界では歴史に名を残すテロリストである荒木希典の事を知らない人間はないが、異世界チームは当然彼の事を全く知らないのでこうなってしまうのも仕方がない。


 希典先生はああ、と頷き説明を始めた。


「そうだねぇ。細かい話は時間がかかるからおいおい話すとして、需要がないからまずはTS版に戻るねぇ」

「うおう」


 彼は話を始める前に姿をオッサンの姿から見慣れた幼女姿に変化させる。


 しかしドロドロになって変化をする瞬間はいつ見てもまあまあトラウマレベルのグロ画像だ。


「さて、気を取り直して……ミトラと鳳仙は俺っち達荒木の一族によって人工的に生み出された生命体なのさ。家族って表現が適切なのかはわからないけど遺伝子は共通だからそれが一番近いねぇ」

「人工的、ですか。アンジョの技術でそういう技術が存在していたと聞いた事はありますが、そんな事が出来るだなんて本当に神様みたいですね」


 真実を知ったカムナは驚愕と嫌悪が入り混じった表情を浮かべる。


 倫理的な問題も存在するこの手の技術は現代でも神の領域とされているし、異世界人からすれば神の御業と何ら変わらないのだろう。


「神様になったつもりはないけど、荒木の一族は昔っから科学チートでアレコレ歴史の影で暗躍してきたのさ。基本的には表に出る事はないけど、歴史上に名を残した有名な名君とか科学者にも結構関係者もいるよぉ」

「科学チートですか。確かにあれだけすごい技術があったらそうなりますよね」


 俺は希典先生の正体を知って脱帽する事しか出来なかった。


 けれどムゲンパレス然り、彼らの叡智はこの目でまざまざと見せつけられたのでそれほど疑う事はなかった。


 工業、医療、農業、建築、軍事……人類の文明は科学によって作られていると言っても過言ではない。


 異世界でも知識をもたらすマレビトは重要視されているが、希典先生の一族はその先駆けだと言えるのかもしれない。


「んで俺っちは一族の歴史が始まった最初の方からいて荒木の一族の当主代行をしてるんよ。昔は客神まれがみ荒吐あらはばきなんて呼ばれたりもしたけどねぇ」

「そういえばカムナがそんな呼び方があるって言ってましたっけ。アラハバキって確か東北の辺りで信仰されていた神ですよね」

「うん。製鉄と農業と旅の神様だね。インパクトのある見た目だからいろんな創作物で引っ張りだこだよぉ」


 俺はまつろわぬ神アラハバキの情報を引っ張り出し本家と答え合わせをする。


 ひょっとすると荒木の一族はかつてあの辺りで製鉄や農業の知識を与え、旅に必要な道具の作り方を教えたのだろうか。


 猛将が勝負事の神様に、名医が医療の神様になったパターンはいくらでもある。


 きっと彼らもそうした経緯で神様になったのだろう。


「アラハバキって日本史の縄文時代辺りに出てくるずんぐりむっくりしたあいつだっけ。遮光器土偶とかそういう」

「うーん、そういう説もあるね」

「ふむ、やっぱり氷結と物理は無効化するのでござるか?」

「科学技術を使えば火炎でもバステでも大抵は無効化出来るねぇ」


 彼は民俗学者が喜びそうな事を語っていたが、ヒカリとニアは随分と低レベルな質問をしたので困ってしまう。


「遮光器土偶イコールアラハバキに関してはあの辺に住んでた一族が作ってたからそうだとも違うとも言い切れないけど。簡単に言えば公式のスタッフが作った二次創作のエロフィギュアみたいなものかな」

「そういえばうちにもそういうスタッフがいたなあ。一線を越えない限りは黙認してたけど」

「あー、それなら何となくわかるかな」

「んな俗っぽい表現をしないで下さいって」


 希典先生と鳳仙はサブカル好きにはすぐに通じる説明をしたのでヒカリは妙に納得してしまう。


 宗教間の争いに負けて信仰されなくなったとはいえ、アラハバキは日本最古の神様なんだけどなあ。


「実際遮光器土偶は乳房が特徴だしそこまで違わなくもないでしょうに。豊穣神は大体胸を強調するよ。いわば遮光器土偶は二次創作エロフィギュアのパイオニアなのさ」

「ふむふむ、そう聞いたらなんだか急に親近感が湧いちゃったよ! ですよね、イスキエルダさん、カムナさん!」

「え? そ、そうですね。東北ノーザンホークという共通点もありますし」

「ええと、何を根拠にヒカリさんは私達に同意を求めたのですか?」


 パイオツマニアのヒカリはテンションが上がりお色気担当のツートップにセクハラをかます。


 でも確かに現代チームの中でカムナと渡り合えるのは、いろんな意味でイスキエルダさんくらいだろう。


「堂々と民俗学的なセクハラしないの、仮にもNAROの隊長なら」

「民俗学的なセクハラって新しい言葉だね。この場合どのポリコレが適用されるのかな」


 ヨンアは苦笑しながら窘め、ノミコは彼女が作り出した新しいセクハラの概念について思案する。


 字面だけ見れば性差別だ、文化の多様性だっていかにも揉めそうな話題だ。


 しかしこういう時はポリコレと多様性のプロの出番だ。ミトラさんはこんな馬鹿馬鹿しい疑問にも丁寧に答えてくれた


「宗教的な意味合いを持つものならある程度セーフというのが現在の見解ですね。もちろんそれを言い訳にしたセクハラは論外ですが」

「むぐぐ」

「でしょうね」


 結局彼女は誰でもわかる結論を出し、抜け道を発見したと喜んでいたヒカリは悔しそうに歯噛みする。


 話が大きく脱線してしまったが俺は希典先生の説明を聞いてあれ、と引っかかってしまった。


「……ん? アラハバキ? あれって一説には宇宙人だって言われてますよね。眉唾物のトンデモ説ですが」

「宇宙人の定義にもよるけど、宇宙の外側からやって来たからそういう解釈も出来るかもねぇ。ちなみに当主様は今はもうこの宇宙にはいないから、これからも当分俺っちが当主代行だろうねぇ」

「まじっすか……」

「「な、なんだってー!」」


 彼は再び爆弾発言をしたので皆はわざとらしくネットミームを叫んだ。


 何故異世界人も含めてこのネタを知っていたのかは不明である。


「いや何やってんの」

「なんかつい叫びたくなったゾ!」


 キーアはてへっと舌を出して笑っていたが見た感じ誰も本気で信じてはいないか、あるいはあまり気にしていない様子だ。


 現代人からすればまあまあ衝撃的だが、異世界人からすればマレビトも宇宙人も同じようなものなので驚きは少ないのかもしれない。

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