表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

609/627

4-98 現代チーム後続部隊から伝えられた壊滅的な現状

「……話、戻していい?」

「あ、ごめんイルマ」


 だがニイノが余計なおしゃべりに夢中になったせいでイルマはうんざりとした表情になってしまう。


 話が脱線したけどイルマ達がどうして異世界に来たのかって話をしていたんだっけ。


 妄想ラブコメ劇場が始まったせいで完全にほったらかしちゃったよ。


「簡単に言えば六天街が街ごと転移して、ムゲンパレスって所に集団で移住したの」

「ムゲンパレスに?」


 イルマの口から聞き覚えのある単語が飛び出たので俺達は驚いてしまう。


 六天街と言えば葉瀬帆の防空壕跡地に出来たスラム街だけど、街ごと転移するだなんて。


「んで、ついでに困ってるみたいだから動けるメンツを連れてオトハとかタカオっていう奴とニライカナイにやって来たってわけ。ああそうそう、向こうにはあんたの親やアニメのスタッフもいるから」

「そっかー、それは良かったよ!」

「成程、オトハ達が」


 イルマはヒカリに聞かれる前に知人が全員無事だという事を教えた。


 関係性はよくわからないが随分と仲が良さそうだ。


 ほんのり輩っぽい香りやタバコのニオイもするし、世間的にはあまり良しとされない不良なのかもしれない。


 だけどこちらにはそれ以上の極悪人がいるし、気にするほどの事でもないだろう。


「んー?」

「なに」


 ただお尋ね者のリアンはイルマをこれでもかとガン見し、彼女は不愉快そうな顔をしてしまう。同じアウトロー同士何かを感じたのだろうか。


「どうした、リアン」

「いや、なんかこいつの声をどっかで聞いた様な……いや、気のせいか」

「そう」

「ふーむ?」


 リアンはモヤッとした感情を言葉にする事なく飲み込む。


 だけど確かに言われてみればどこかでこの可愛らしいアニメ声を聞いた様な……どこだっけ?


 だが不機嫌そうなイルマは真面目そうな顔になり、それ以上に衝撃的な事実を伝えた。


「そんな事より現実世界は結構大変な事になってるよ。福岡にキノコ雲みたいな化け物が現れてどんどん人間をゾンビに変えていってる。ざっくり言えば九州はもう壊滅したよ」

「マジか」


 それは世界がひっくり返る程の衝撃だったけど、俺は不思議とその事を伝えられても平気だったんだ。


「そっか、智樹君達はその辺りの事はまだ知らなかったっけ。私達も軽くミトラさん達から聞いてるけど……しばらくは忙しくなりそうだね」

「こっちとしてはむしろ稼ぎ時ではあるけどね。平和ボケした日本人リーベンレンは大慌てだよ。ざまぁ無いね」


 深刻な様子のエマにイルマはハン、と鼻で笑ってしまう。


 リーベンレンと中国語で言っていたし、きっと彼女は日本人の事をあまりよく思っていないのだろう。


 重苦しい空気に会話が止まり、モリンさんは黙り込んだ俺を優しく気遣った。


「……えと、トモキさんは悲しくないんですポ? 故郷が大変な事になったのに」

「うーん、言う程悲しんではいませんね。元々俺は殺伐とした向こうの世界が好きじゃなかったんで」


 だけど俺は実の所特に何も思わなかった。


 俺にとっては向こうの世界は少しばかり苦し過ぎた。


 こういう感情になったのはきっと知った事ではないと考えたからだろう。


 それに何よりも現実世界の長崎はご時世によって戦争仕様に作り変えられてしまったが、ムゲンパレスには平和だった頃の長崎がそのまま残っている。


 居心地がいいのはどちらかなんて考えるまでもないだろう。


「もしかしたら俺の心からはもう現実世界への想いは離れてしまったのかもしれません。それが少しだけ寂しくはあるんですが」

「そうですポ……」

「智樹……」


 俺がやんわりと現実世界との決別を告げ、ヒカリは何かを言いたそうだったが言葉を飲み込む。


 それを伝えれば大切な何かが壊れてしまうのではないか――もしも俺が彼女の立場なら、きっとそう考えたはずだ。


 だけど余計な感傷に浸る暇はない。今はこの状況を打開するために建設的な話し合いをする時だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ