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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-96 星のかけらで強化された仲間達

 戦闘終了後でただでさえドタバタしているというのに、アマビコがアクルディーパに変化したというトンデモ展開はまあまあ騒ぎになってしまった。


「ほけー。いやー、驚いたヨー」

「こういう事もあるんだネー」

「そうは見えませんが?」


 本来一番驚くはずのリンドウさんとニイノを除いて。


 NARO詰所の会議スペースにやって来た彼女達はスミ汁を飲み、アマビコの変化を割とすんなりと受け入れまったりと寛いでいた。


「なあ、俺はグリードの事をよく知らないが、こんな感じで進化するパターンってあるのか?」

「普通はないですね。アンジョに例えたら猫や犬に変身する様なものです」


 どうやらこれは普通の事ではなかったらしくカムナは困惑しながら当たり前の事を教えてくれた。


 常識的に考えて魚が人間になるわけがないし、そりゃそうだろう。


「ええ、だから僕もなんか手とか足がアンジョさんっぽくなったなー、と思いましたが、そんなわけないかー、熱っぽかったし風邪でもひいて幻覚でも見てるのかな、と思ってスルーしちゃいました」

「お前が一番あり得ないのかもなあ。天然とか大らかってレベルじゃないぞ」


 アマビコはのほほんと笑いながら自分の変化に気が付かなかった理由を教え、やはり彼はリンドウさんの息子なのだな、と俺は妙に納得してしまった。


 ただリアンはいやいや、と手を振って強く否定した。


「いやそうはならんって。オレも魔法が使える様になったし、皆も強化されたし何が起こってるんだ?」


 だけどノミコはその答えを知っており、不可思議な事象が起こった理由をはっきりと説明してくれた。


「理由は明白だよ。星のかけらを食べたからだよ」

「星のかけら? ってあの金平糖の事か」

「これー?」


 ぐでんとなっていたマタベエは星の形の瓶に入った金平糖を取り出した。


 デミウルゴスの箱から入手したもので、そういえば皆で揃った時に食べたっけ。


「潜在能力を引き出すって言うか、簡単に言えばこれを食べたらパワーアップするの。上位種に進化したり、上位の魔法が使える様になったりね」

「それでオイラも中級魔法が使える様になったんでヤンスか」

「キーアもなんだかいつも以上に元気いっぱいだゾ!」


 サスケもまた自らの変化の理由を知り腑に落ちてしまった。他のメンツも全体的に強化されたけどきっと同じ理由なのだろう。


「ほへー、てっきりただの賞味期限切れのお菓子だと思っていたけど、これってそんなチートアイテムだったのか」


 俺は『星のかけら』が入った小瓶を手に取りじっくりと眺める。


 数に限りはあるがこれがあれば戦力が大幅に強化出来るし、使わないという手はないはずだ。一人一粒くらいで大事に食べないと。


「ひょっとしてずっと熱っぽいのもそういうアレなのカイ? アタシやニイノもアクルディーパになるって事なのカイ?」

「うん、しばらくすればそうなると思うよ」

「わあ、なんだかワクワクするネ!」


 自らの姿が全く別の生物に変化する。


 それはアイデンティティが喪失しかねないなかなか恐ろしい変化だが、本人達の性格もあるのか半魚人親子は割と好意的に受け止めた。


「うーん、私は出来ればタヌキの姿のままがいいんですけど。アンジョさんの姿になっておうちに帰ったら子供がびっくりしちゃいますポ」

「まあまあ、その時は俺も説得に協力しますから」

「お願いしますポ」


 常識人のモリンさんは子供への影響を恐れて変化を拒んでいたが、こうなったのは俺の責任でもある。もしも揉めたらしっかりフォローしよう。


「ぼくもスーパーなキノコになるの? スーパーマタンゴさんになるの?」

「そうなるんだろうね」

「そっかー。ならしばらくむにむにしてるー」


 強化に伴う体調不良は当然マタベエも感じているのだろう、彼は気だるげにむにょんむにょんと脱力していた。


 俺も頭がボーっとするし、マタベエも同じ状態なら結構しんどいはずだ。一時的な体調の変化とはいえ気にかけておこう。


「そういえば吹雪達も食べてたよね。体温が上昇してるけどそのせいかな」

「ぶも」

「ぷいー」

「ぷー」

「ぴぎー」


 チクタ君は金平糖を食べた時の光景を思い出しイノシシ一家を気遣う。


 彼女達は人間の言葉を話せないのでわかりにくいが、機械の目を使えば変化がわかる様だ。


「うーん、吹雪達はどうなるんだろう。羽とか生えるのかな。げんしのちからを覚えさせる必要があったり?」

「ぶも」


 ヒカリは不安よりもワクワクが勝ったらしく、家族の進化を心待ちにして顔をジッと見つめる。


「それともオスとメスで運用が変わったりするのかな。とれないにおいって便利だけど、私は搦め手を使うよりもフルアタが好きだからなあ。同じブタならマンモスのほうになってよ。こおりタイプで物理最強クラスだから。御三家でもいいけど」

「ぷいー?」

「何言ってんだお前。野生動物にあんま高望みをするなって。ちなみに羽の生えたブタならこっちの世界にいるぞ」


 ヒカリが何のネタを言っているのかはなんとなくわかるが、妙な期待をされたイノシシ達は困ってしまう。


 でも面白そうだし試しに妄想してみよう。


 リアルイノシシならとくせいはいしあたまで、かくれとくせいはいかりのつぼ、技はすてみタックル、もろはのずつき、かみくだく、あばれるといった構成になるのだろうか。


 適当に考えたけど結構強そうだ。おやこあいはピッタリだけど環境がぶっ壊れるからやめておこう。


「というわけでイスキエルダさん。あなたも食べてください」

「あ、そっか。あの時のイスキエルダさんは偽物だったから、本物のイスキエルダさんは食べていなかったんだっけ」


 ぐったりしているとノミコは明らかになった嫌な事実を伝え、ヒカリはその意味を理解し渋い顔をしてしまう。


「お恥ずかしい限りです。私は異世界転移をしたヒカリさん達を救出するために長官と共にニライカナイにやってきたのですが、そこで道化師の様な敵と遭遇して捕まってしまいまして」

「で、何食わぬ顔でイスキエルダさんに変装して紛れ込んでいたってわけですか」


 イスキエルダさんは自らの失態を恥じてしまう。


 マーラの手先か、異世界軍の人間か、我那覇総督の人間か……いずれにせよそいつが属していたのは敵対勢力だったはずだ。


「偽物も星のかけらを食べてたよね」

「きっと偽物も強化されたんだろうなあ。イスキエルダさんを倒すくらいの相手だしかなり厳しい事になるかも」


 情報がリークしたのも厄介だが、おそらく偽物もパワーアップしているに違いない。


 ヒカリとエマは最悪にも程があるニュースに険しい顔をしてしまった。


 そのままの状態でも手練れのイスキエルダさんを捕縛する程度の相手だし、かなり危険な強敵に変貌しているはずだ。


「でも戦うしかないんだろうね。私は発熱が落ち着いてきたけど智樹君は大丈夫?」

「ちょっとだるいけど問題ない。エマはもう戦えるか?」

「うん。心なしかちょっと調子が良くなったかも」

「そっか、そりゃよかった」


 俺の事を気遣ったエマは元気をアピールするために力こぶを作った。


 病弱な彼女がどれくらい強くなったのかはわからないが、健康になれたのならそれだけで十分過ぎる成果だろう。


(……とは言ったものの)


 エマを心配させないために強がったが正直結構しんどい。


 これが星のかけらに由来するものならいいけど、俺の場合はマーラの触手を食いちぎって食べちゃったからなあ。


 俺の体内に侵入した触手は今どうなっているのだろう。


 不快感はずっと消えないけどまさか胃袋の中でのたうち回っているのだろうか。


 どう考えても食べたら駄目な奴だろうし身体の内側から蝕んでいないといいけど。


 ホラー映画みたく、腹を食い破ってクリーチャーが爆誕とか勘弁してほしいものだ。

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