4-95 ニライカナイ編前半のバトルを終えて
NAROとの戦いから始まった魔王マーラや天龍リンドヴルムとの死闘を制し、俺達はようやくショッピングモールの集落で一息つく事が出来た。
ショッピングモールの集落ではNAROが炊き出しを行っており、市民と親睦を深めつつ休憩を取っている。
「いやー、なんか大変だったみたいだネ! 取りあえずスミ汁があるから元気つけるヨ!」
「はあ、戦いが終わってから食べるものでもなさそうですが」
炊き出しのリーダーは中国人っぽいアジアンビューティーな女性が担当しており、彼女はテキパキと調理と配膳をこなしながら真っ黒なスミ汁の入った器を俺に渡してくれる。
「あなたもNAROですか?」
「成り行きで加入した仮メンバーだけどネ。私はゼン、一応書類上はヒカリの八番隊だヨ。普段は場末の喫茶店で板長をしてるネ。見ての通り料理は得意だけど、戦いはあまり期待しないでほしいネ」
「どおりで。なんか慣れた手つきだなあと思いましたけど」
気さくなゼンは引き締まった身体だったのでスポーツ経験はありそうだが、戦いを専門にしている人間特有のニオイは感じられなかった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
彼女の他にもう一人、カタギっぽい女医が救護所を仕切っていた。
医者が高齢化した昨今では珍しく若い年齢だったが、親身に接した事ですっかり住民の信頼を勝ち取っている様だ。
「あっちにいるのはクスノキって闇医者で私達のツレだヨ」
「闇医者?」
「うん。信用スコアが低かったりお金がない人がメインのネ。元ギャルで悪い奴じゃないから大丈夫サ」
「ふーん」
ゼンは彼女について元ギャルというどうでもいい裏設定も教えてくれる。
ニイノは何故かクスノキイコールギャルという謎の先入観があったが、実は俺が知らないだけで一般的な認識なのだろうか。
「つーかあれってラフランとウタだよな?」
手当てを受けている人間の中にはカルラ族部隊もいて、時間経過で催淫が解除されたのかすっかり元に戻っている。
「いやー、本当に災難でしたよ。私変な事されてないですよね? うう、先輩、汚された私を慰めてください~グスン」
「はいはい、訓練して汗を流して綺麗サッパリ忘れなさい」
ウタはラフランに泣きついたがまるで相手にされていなかった。
だが彼女達は俺が見ていた事に気が付き、百合コンビを引き裂こうとした間男を物凄く嫌そうな顔をして睨みつけた。
「ハハ……」
俺は取りあえず愛想笑いをしたが余計に火に油を注いでしまい、視線に籠められた感情は嫌悪から殺意に変わってしまう。
うう、自業自得とはいえここまで嫌われるとちょっと悲しい。
催淫なんて犯罪チックなものじゃなくてもう少し主人公らしいスキルが欲しいよう。
「えーと、救護所はここですか?」
救護所を眺めているとついさっき俺を助けてくれたアクルディーパの少年が現れる。
医学の知識があったし、彼はひょっとしてニライカナイで医者をしていたのかもしれない。
「あ、はい、そうです……」
けれどクスノキはアクルディーパの少年を見て目を丸くし、そのまま硬直してしまう。
「あのー?」
「は、はい! あなたが手伝いに来てくれたアマビコさんですね!」
少年は不思議そうな顔をして彼女に声をかけると、クスノキは我に返り仕事の説明をした。
はて、一体クスノキは何に対してそんなに驚いたのだろうか。
「ん? アマビコ?」
だが俺は少年がアマビコと呼ばれた事に気付いた。
そう言えば彼もアンコウスーツを着ているけど、あれってリンドウさんのお手製だからその辺で手に入るものじゃないんだっけ。
「え? ちょいちょい! お前アマビコなのか!? なんか人間になってるぞ!?」
「はい? 何言ってるんですか、トモキさん?」
そして俺はようやく彼がアマビコと同一人物であると認識、彼に改めて確認した。
しかしどうやらアマビコはこの異常な事態に気が付いていなかったらしく、またしてもポカンとしてしまう。
「ちょい」
「?」
俺は説明するのを諦め手鏡を見せる。
アマビコは鏡に映った自分の姿を認識し、しばらく目をぱちくりとさせ、
「えええ!? なんか僕人間になってるけど!?」
と、変化に全く気付いていなかったアマビコは誰よりも自分の姿に驚愕していたんだ。




