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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-94 天龍リンドヴルムの襲来

 オオオオン!


「ギャー!? 来やがった!」


 大金星に笑みを浮かべていたリアンは天を裂く龍の咆哮を聞き、一気に血の気が引いてしまった。


 残念ながら不遜な行為は禁足地を守護する龍の逆鱗に触れてしまったらしい。


 エッグヘッドを撃破し過ぎたせいで天龍リンドヴルムは明確に俺達を敵と認識し、小型の多連装ミサイル――ではなく炸裂する魔力の弾を降らせてくる。


 極超音速ミサイルの様に不規則かつ高速で移動する天空の覇者には攻撃を当てる事すらも出来ない。たとえ近代兵器があったとしてもあいつを迎撃する事は極めて困難だろう。


「……っ」


 天龍リンドヴルムはよくよく見るとメカニカルな見た目をしていた。


 元々が核ミサイル系の兵器の類ならその名残があるのかもしれない。


 だからだろうか。


 牙を剥き出しにして怒り狂う奴を見て、口から噴き出す炎を見て、あの地獄の光景を思い出しそうになってしまうのは。


 考えるな、考えてはいけない。


 思い出してはいけない。


 あの絶望を、あの痛みを、あの熱を。


 それを認識してしまえばその時点で精神は崩壊し、敗北と死の運命が確定してしまう。


「ひー!」

「な、なんだよあいつ!」

「サスケ! ザキ姉!」


 道中俺達は逃げ惑っているサスケとザキラを発見し、そのまま一緒にチェイスバトルをする事になる。


 ただリアンも救いの手を差し伸べる余裕もなく、無意味に天に向かって針を射出する事しか出来なかった。


「おいリアン! これお前の仕業か!? ならなんとかしろ!」

「なんで真っ先にオレを疑うんだよ!?」

「日頃の行いのせいだろうが!」


 パニックになったザキラはリアンに八つ当たりしてしまうが、実際彼女のパルスグレネードが引き金になったので否定は出来ない。


 禁足地であるニライカナイに足を踏み入れた時点で、遅かれ早かれこういう展開にはなったんだろうけど。


「ッ!?」


 しかしそのままコメディ展開になるわけもなく、天龍リンドヴルムは再び拡散光弾を放ち苛烈に攻め立てる。


 本来この手の兵器は広範囲を攻撃するためのもので一発一発の威力はそこまでではない。


 だけどそれでも軍事施設を壊滅させるには十分であり、人間なんてものは言うまでもない。


 それは流れ弾だったのだろうが、光弾のうちの一発が風に吹き飛ばされる木の葉の様に俺達のいる場所へと猛スピードで落下してくる。


「これじゃあ皆が……! 認めない……こんな結末私は認めない……ッ!」


 ヒカリは悔しさのあまり歯を食いしばり、それと同時に世界が揺らいだ様な錯覚に陥ってしまった。


 俺が思い浮かべた最悪の未来は訪れなかった。


 何故ならば『ライフルの弾が光弾を貫き』『俺達はなんやかんやで助かってしまった』からだ。


 そしてヒカリはそのあり得ない事実を『観測』し、本来起こりえるはずがなかった予定調和の結果が『確定』してしまったんだ。


「イルマ!? イスキエルダさんも!」

「遅くなってしまい申し訳ございません、ヒカリさんッ!」


 初見の銀髪の少女と共に戦線に復帰したイスキエルダさんも巨大な銃槍を携え、ライフルモードに切り替え天龍リンドヴルムを狙い撃つ。


 その時のダメージは微々たるものだったが、『烈槍』イスキエルダの攻撃によって初めて俺達は奴に傷をつける事が出来たんだ。


「どうしてイルマがここに!? っていうか今何したの!? なんかすんごいミラクルが起きたけど!?」

「よくわかんないけどこれでよかった? っていうか今何が……?」


 光弾を迎撃したライフルの弾丸を放ったのはどうやらイルマという名前の銀髪の少女だったらしい。


 ただ彼女も自分が起こしてしまった奇跡が信じられずかなり困惑している様だった。


 それもそのはず、それは例えて言うのならミサイルを銃弾で迎撃する様なものだったからだ。


 フィクション作品ではこの手の神業はよく見かけるが、現実でそれを再現するのはほぼ不可能だろう。


「細けぇ事はどうでもいいだろッ! とにかく逃げるぞッ!」

「あ、ああ!」

「うん!」


 けれどリアンの罵声で思考は中断されてしまう。


 彼女の言うとおり今は何故こんなあり得ない事が起こったのかを考える余裕はない。とにかく急いで逃げないと。


「うしさん、おねがい!」

「ぶもー!」


 どういうわけか助かってしまったが死地を脱したわけではない。


 マタベエは必死にモーブルの頭にしがみつき、全員で生き延びるために密林地帯を走り抜けた。


「痛タタ……」

「お母さん! お母さんっ!」

「リンドウさん!? ニイノも!」

「ニイノちゃーん!?」


 だが今度はリンドウさんとニイノを発見してしまう。


 巻き添えでロボット兵器に攻撃されたのかリンドウさんは全身血塗れになっており、ニイノはどうする事も出来ずに泣き叫んでいた。


「トモキさん! お母さんを助けてくだサイ!」

「おねがい、ともきくん!」

「ああッ!」


 ニイノは俺を目撃するとすぐにマタベエと共に助けを懇願する。


 一瞬の隙が死に直結するこの状況では足を止める事は自殺行為だが仕方がない。


 俺はすかさずリンドウさんに回復弾を撃って傷を癒し、すぐに天龍リンドヴルムに銃口を向ける。


 この行為に意味はない上に弾を撃った所で回復させてしまうが、兵士として反射的にそうしてしまったのだ。


「ダメ……お母さんを殺さないデ……!」

「よ、よさないカ、ニイノ」


 無力なニイノは震えながら身を盾にする。リンドウさんは逃げる様に促すが、家族思いの彼女が言う事を聞くわけがなかった。


 オオオオンッ!


「え?」


 だが天龍リンドヴルムはどういうわけか攻撃を中断してしまう。


 その咆哮は今までの荒ぶる神の様な猛々しいものとは打って変わり、強い悲哀を感じるものだった。


 天龍リンドヴルムは旋回し空の彼方へと去っていき、静寂の密林に取り残された俺達は全員何が起こったのか理解出来ず呆気に取られてしまった。


「あなたはうちとお母さんを助けてくれたノ……?」

「ニイノ」


 しかしニイノだけは天龍リンドヴルムを消えていった虚空をずっと見つめていた。


 その瞳には恐怖は一切感じられず、ただ純粋で深い悲しみだけが宿っていたんだ。


 そしてしばらくしてようやく助かったという事実を理解し、俺は足をガクガクと震わせてしまう。


 気まぐれなのか理由があったのか、何故天龍リンドヴルムがこのような行動をしたのかはわからなかったけれど、とにかく俺達は地獄を生き延びたのだ。


(だけどやっぱ天龍リンドヴルムはそういう事なのかな)


 確証はなかったが、そう考えざるを得ない光景を目の当たりにした事で俺は奴の正体に辿り着いてしまった。


 ……とにかく一旦拠点に戻ろう。


 合流したイルマやイスキエルダさんとも今後の事を話す必要があるし。

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