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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-91 尊いマタンゴさんの優しさ

 悪戦苦闘する俺達そっちのけで希典先生は相変わらず無双しており、散弾銃に変化させた腕で雑魚を蹴散らしながらノミコと談笑していた。


「なんか楽しそうだねぇ。でも俺っちはステーキよりも牛汁のほうがいいかなぁ。オジサンにはアメリカンなステーキはしんどいのよぉ」

「あんたもモーブルを食べ物って認識しないで下さい。そういうのはヒカリだけで十分です」


 基本的には最強の二人が雑魚をフルボッコにしてくれるし、最大の敵であるモーブルもヒカリが抑えつけている。敵も減ってきたし油断しなければ何とかしのげるはずだ。


「やあやあたあたあ!」


 独自の戦いを繰り広げてモーブルに立ち向かっているマタベエは可愛いから問題ない。


 勇敢な彼はヒカリとモーブルの戦いに割って入り、懸命に愛嬌とキノコ胞子をぽふぽふと振りまいていた。


「おこらないで! おちついて! こわくないから!」

「ブモー!」


 ポンポンと吹っ飛ばされて最初は気の毒だったが、一生懸命な姿を見せつけられ次第にその想いは応援へと変わる。


 ヒカリに捕食されるくらいなら無力化されたほうがモーブルも幸せかもしれない。


「ぽふぽふぽふぽふー!」

「ブモー!?」

「みゃー!?」


 勇気ゲージが最大まで溜まったのかマタベエは最大級のぽふぽふをした。


 広範囲に撒き散らされた幸せな気持ちになるキノコ胞子によってモーブルは無力化され、ついでに捕食者ヒカリも大量に吸い込んで戦闘不能になってしまう。


 そのオチは想定通りだったが、俺は信じられない光景を目の当たりにしてしまう。


「ぶもー?」


 なんとあれほど暴れ狂っていたモーブルの瞳は穏やかなものになり、大人しくなって敵意も一切無くなっていたのだ。


「よしよし、いーこいーこ」


 愛と優しさによって無事に命を奪う事無く戦いを終わらせ、マタベエはボロボロになりつつも最高の結末に上機嫌になり、ポカンとした表情のモーブルの頭をなでなでする。


「うお、なんか手懐けてるぞ!?」

「マジか。マタベエの奴スゲェな」


 リアンと俺はその衝撃的な光景に唖然とする事しか出来なかった。


 モーブルはいわばマーラの生み出した怪物であり、使役なんて出来るはずがないのに。


「ありゃ、まさか従えるなんて。いや理論上は無理じゃないか。だってマタベエは、」

「ストップ、ノミコ。まだ早いよ」

「そっか、そうだったね」

「?」


 ただその際ノミコと希典先生は声を潜めて何かを話していた。


 なんだか思わせぶりですごく気になるやり取りだけど、追及しても教えてはくれないんだろうな。


「いやいや!? それ私のおにく! 牛肉うしぬにくゥ!」

「このうしさんはぼくのともだち! だからたべたらだめー」

「ぶもー」


 ステーキを食べたかったヒカリだけはこの勝利に絶望してしまう。


 しかしマタベエとモーブルはすっかり仲良くなってしまったし、真っ当な精神をしていれば美味しく頂くのは無理だろう。


 もしかしたらこれがマタベエが会得した能力なのかもしれないけど、心優しい彼にはそうした能力が元々備わっていたに違いない。


「マタンゴ~ゴンタマ~、マタンゴ~ゴンタマ~」

「ぶもー」


 ニコニコと笑う彼は逆立ちをし、嬉しそうにうしさんの背中の上でくるくるとブレイクダンスの様に回っていた。


 うしさんもふにふにとした程よい重さが心地よいのかのほほんとした顔で笑っている。


 拝みたくなる様な尊い光景だけど、可愛らしいだけでそういう意味合いはないのだろう。

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