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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-83 ゲス勇者智樹の密林逃避行

 何の因果か再び逃走劇を繰り広げる事になってしまったが、今度は味方だったはずの異世界チームも含めて鬼ごっこが始まってしまった。


「デンジャー先輩、協力して追い込むぞッ!」

「おうよッ! オイコラ逃げてんじゃねぇよチンカス野郎がァ!」

「「鰤起こしブリ・ザ・ブリクッ!!」」


 ザキラとデンジャー先輩は連携攻撃で俺を追い詰め、膨大な魔力によって作られた光り輝く氷と雷で作られた神話の宮殿はそこに存在するものを無尽の煌めきで消し飛ばした。


「どうだッ! ってブリ・ザ・ブリクってなんだよ?」

「コシノ地域名物鰤起こしが名前の由来だッ! 毎年冬になって雷が鳴ると美味いブリが食えるから地元民はテンションが上がるんだよッ!」


 地元愛溢れるマイルドヤンキーのザキラは北陸地域とは切っても切り離せないブリを技名に起用したらしい。特に天然の生簀とも呼ばれる石川とか富山は有名だっけ。


「こんなタイミングでご当地にちなんだ新必殺技を習得するなよッ!? つーかテメェの地元は新潟だろッ! 新潟は北陸地方であってんのかッ!?」

「あ? ニイガタ? 何言って……」

「ん? どうしたザキラ」


 しかし俺がそもそもの疑問をぶつけると猛攻を仕掛けていたザキラは制止し、パートナーのデンジャー先輩は訝しげな顔をしてしまう。


 なお厳密には彼女の地元はスクワロルであって、ちょいちょいご近所さんと喧嘩している金物産業で有名な某市ではないが些細な問題だろう。


「……何故だ。よくわからんがアイデンティティが崩壊しそうだ。ニイガタはどこ地方なんだッ! ニイガタは本当に存在するのかッ!?」

「新潟はちゃんと実在するぞ!? ポッポ焼きを食ってとっとと正気に戻れ!」

「いよしッ! 今のうちに逃げるぞッ!」


 新潟県民が必ず悩む難題をぶつけた事でザキラのSAN値はごっそり削られ精神が崩壊して正気を失ってしまう。デンジャー先輩が何故新潟のご当地駄菓子を持っていたのかは謎だ。


「オイラ達も負けていられないでヤンスッ! 人として許されない過ちを犯したアニキはオイラが止めるでヤンスッ! ニアちゃんッ!」

「合点承知の助でござる。忍法影分身の術でござるー!」

「のお!?」


 ニアに至っては世界観を無視して忍者の様に影分身をし、氷で出来た分身と共に俺を追い詰める。


 幸いにして一撃でも攻撃を与えればすぐに壊れる程度に耐久性は低いが、ただでさえ強いニアが何人も増えてしまえばとんでもない脅威だ。


「おお! ニアちゃんってそんな事出来たんでヤンスか!?」

「拙者もびっくりでござる!? なんか出来ちゃったでござる!」


 しかし一番驚いていたのはニア本人だった。彼女はフィクション作品でしか見かけない技を成功させ戦いの最中だというのに大はしゃぎしてしまう。


「よくわかんないでヤンスがオイラもなんか出来そうでヤンス……! 昨日くらいから熱っぽくてずっと身体がうずうずして仕方がなかったでヤンス!」

「ちょいちょいちょい!?」


 さらにニアの戦いぶりに感化されサスケもなにやら力に目覚めてしまう。覚醒するにしてもきっとそれは今ではないはずだ。


「断ち切れ、瑞風の精霊よ! シルフィンドッ!」

「のぉーん!?」


 簡単な魔法しか使えなかったサスケは何故か威力が増加した風魔法を使い、旋風は戦禍の残骸を容易く吹き飛ばしてしまう。


 威力的にはつむじ風から竜巻に強化された感じか。もしも生身の人間があんなものに命中してしまえばひとたまりもないだろう。


「すごいですね、サスケちゃん!? いつの間に中級魔法が使える様になったんですか!?」

「オイラもなんか出来たでヤンス! だからカムナもきっと出来るでヤンス!」

「確かにそうですね……」

「あの、ちょ~!?」


 理由はわからないが強化はカムナにも適用されていたらしい。


 ただでさえ強い魔族最強の騎士と呼ばれる彼女がそんな事になった場合、当然手の付けられない状態になってしまうわけで……。


「雷神の魔槍よ、全てを貫き勝利を導けッ! ボルグ・ボルト!」

「ひぃぃいいい!?」


 それはわかりやすく言えばでんきタイプ最強の技、もしくはみんなのトラウマダ〇スレーザー的な攻撃だろうか。


 雷槍の極太レーザーは前方に存在する万物を消し飛ばし、実に通りやすい半円形の道が出来た事で完膚なきまでに犯罪者の戦意を奪い去った。


「魔法剣士ってどっちつかずの事が多いやんけ! セオリー通り中途半端な性能になってくださいって、ホンマ頼んますよ~!」


 追い詰められた俺は精神が関西で過ごしていた頃に戻ったのか、それとも前世の記憶が呼び起されたのか何故か関西弁になってしまった。


「トモキ、なんか喋り方が変になってるゾ? でもよくわかんないけどキーアも一緒に遊ぶゾ! なんだかいつもより元気いっぱいだゾ!」

「おわっと!?」


 魔法を使わないキーアは新たな魔法を習得する事はなかったが、その代わり身体能力が大幅に強化されていた。


 斧を軽く振り回すだけで簡単に廃車が粉砕されてしまうが、これでも本人にとっては遊んでいるつもりなのだろう。


「ご、ごめん、トモキ! 手加減するつもりだったけどなんか力んじゃったゾ」

「あ、ああ……って怪我してるぞ」


 キーアはぺこぺこと謝罪するが、俺はそれよりも壊れた金属片により彼女が負傷してしまった事が心配だった。


「あ、本当だゾ。でもこのくらいいつもの事だからへっちゃらだゾ」

「でもなあ」


 回復弾を撃ちたいけどすぐに逃げないといけない。けれど俺が迷っている間にどこからともなく救世主が颯爽と現れた。


「僕に任せてください!」

「んゾ?」

「え?」


 ヒレと鱗を持つその純朴そうな青年はアマビコが着ていたものと同じアンコウスーツを着ており、救急セットから道具を取り出して素早く処置を施した。


「癒しの種よ芽吹け、キュアシード!」

「おー、お前凄いゾ! ありがとナ!」


 少年は最後に回復魔法を使って傷を癒し、怪我が治ったキーアは奇跡のような力に驚愕しつつも感謝する。


 何気にこの世界で回復魔法を見たのは初めてだけど、回復系の魔石があるわけだし回復魔法も存在するのだろう。


「トモキさん程じゃないですけど僕も回復魔法が使える様になりました。これで大丈夫ですよ」

「あ、ああ、っていうか君誰?」

「へ?」

「ん?」


 しかしアンコウスーツのショタは何を言ってるんですか、とでも言いたそうにポカンとしてしまった。俺と彼は初対面のはずだけどどこかで会った事があるのだろうか。


「だけど回復魔法もだけどアクルディーパなんて初めて見たゾ! やっぱり神様の使いって言われるアクルディーパって凄いんだナ!」


 キーアは身体的特徴からこの少年がアクルディーパと判断した様だ。


 そういえばアクルディーパっていう人間に近い見た目の特別なディーパがごく稀に生まれる事がある、っていう話をちょっと前にリンドウさん一家としたっけ。


「え? 僕が? アクルディーパ? そんなわけないじゃないですか、僕はド庶民もド庶民な平凡な純イナエカロ民のディーパですって」


 しかしアクルディーパの少年は目をぱちくりとさせアハハ、とおかしそうに笑った。うん、イナエカロ民?


「一応母ちゃんはスーパーでバイトをしていた頃、二分以内に五十個の商品をスキャンしてカゴに詰める事が出来たそうなので、ファンキーズイナエカロ店のレジ神って言われたそうですけど」

「へー。って凄ッ!? ガチの神じゃねぇか!?」

「ちなみに母ちゃんはレムリアスーパー協会が主催する大会のレジ応対部門で一位になった事もありますよ。殿堂入りした後はモリンさんが優勝したそうですが」

「そうだったのか……」


 俺は思わぬところで謎のアクルディーパの母親とモリンさんの裏設定を知ってしまう。五十個を二分以内……うーん、全然想像が出来ない。


「待てやオラー!」


 しかしおしゃべりに時間をかけすぎたせいでヒカリ達に発見されてしまう。物凄く面白そうな話が聞けそうだが今はそんな余裕はなさそうだ。


「おっと、とにかくありがとな!」

「はい、トモキさんも気を付けて! 僕も姉ちゃん達も信じてますから!」

「頑張れよー!」


 謎のアクルディーパとキーアは俺に声援を送り、心が折れかけていた俺は勇気が湧き出てしまう。


 そうだ、こんな所で負けているわけにはいかない。何としてでも逃げ切って無実を晴らさなければ!

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