4-82 続報『あらいけませんわ、おひきとりください! 地に堕ちる勇者の信頼! ハーレム崩壊!』
――さて、ここにいるのは正義のヒーローだけではない。
頼れる仲間は一斉に冷たい眼差しになり、俺を汚らわしい害虫と認識してしまった。
「ともきくーん?」
「見たら駄目ですポー! うちの子がすみませんポー!」
モリンさんは何が起こったのか理解出来ない様子のマタベエを安全な場所に連れて行く。
別に彼女と親子関係はないけれど、モリンさんの泣き顔は心を大きく抉ってしまった。
「うわーん! アニキが変な事をしてるでヤンスー! 怖いでヤンスー!」
「サスケ、泣くな。オウコラトモキ、テメェ自分が何をしたのかわかってんのかァッ!」
「ヒィ!」
純朴な舎弟のサスケも泣き叫んでザキラに縋り付き、信頼度が一気に地の底に落ちていく。俺の人生はきっとこれで終わってしまったのだろう。
「んゾ? 裸でいるだけだゾ。トモキを助けなくて大丈夫なのか?」
「助けなくていいと思いますよ」
もう一人、文化圏の違うキーアだけは半裸のミトラさんを見ても動揺しなかった。
だがカムナが彼女を連れて一切俺と目を合わさずに去っていく様は地味に堪えてしまう。
「ま、こういう事もあるんじゃないかナ。ところでアンジョさんの子供はお腹の中で共食いしてお腹の中でお乳をあげたりするのかネェ」
「それはディーパ族だけだと思うよ、母ちゃん」
「サメの雑学はいいですから!」
さらに文化圏が違い過ぎるリンドウさん達は人外の反応をした。
そういえばサメってかなり独特な方法で繁殖と子育てをするんだっけ。
「ありゃりゃ、既成事実を作っちゃったのかあ。かけがえのない一夜限りの過ち……ってね」
「まあ前世から相思相愛でしたし結果オーライなんじゃないですか。前世って言うべきかどうかはわかりませんが」
それに引き換えミトラさんと特別な関係にあるはずの希典先生と鳳仙はこの状況を好意的に捉えており、むしろ喜んでいる様に見えた。
俺とミトラとの関係を知っている二人はもしかしたらずっとこうなればいいな、と影ながら応援していたのかもしれない。
「智樹ちゃん。ミトラを頼んだ。ちゃんと男として責任取りなよ」
「いやいや、まだ責任取りたくないっす!」
せめて彼等に説得を協力してもらえばまた違っていたんだろうけど、この様子では期待出来そうにない。
本気なのか悪ノリなのかどうかわからないけど、希典先生もいつになく老いた父親っぽい優しくも真剣な顔をしていたし。
が、一番ブチ切れていたのは意外にもリアンだった。
「なあ、これはどういう状況だ? 折角オレ様が助けに来たってのになぁにをムフフな事をやってんだお前? どうなったら敵のこいつが全裸になってタンスイン状況になるんだよ」
「いやあ、そのぉ……そう、種泥棒が王様から逃げるためにタンスの中に入って、異世界に行ってモンスターを仲間にしようとしたんだろうな!」
「異世界転移って言えば何でも誤魔化せるわけじゃないぞ。ラノベじゃねぇんだから」
俺は苦し紛れの言い訳をしたがそれはかえって彼女の神経を逆なでしてしまった。
リアンは怒声を上げていなかったがそれ故にガチギレしているのだとわかってしまう。
「ニイノォ!」
皆に見捨てられた俺はダメ男が元カノに助けを求める様にニイノに泣きつく。
きっとブレずに俺を思い続けてくれていた彼女ならば優しい言葉をかけてくれるはずだと信じて。
「トモキさん。うちはあなたが罪を償って帰ってくるのをずっと待ってますカラ。ディーパのぼりの竿に黄色いハンカチを掲げテ……!」
「ニイノォォオ!?」
しかしニイノは北海道で収監された夫の帰りを待つ昭和の名女優の様に健気に愛を与え続けた。
むしろ純粋が故にこの清らかな涙が一番精神的なダメージが大きかったかもしれない。
「さて、と」
「うおう」
ヒカリはゆらりと幽鬼の様に揺らめきシーツを半裸のミトラさんにかけた後、ベッドを持ち上げ両手持ちのオブジェクト武器に変えた。
「……………」
リアンも無言で爆弾を取り出しちゃってるし。
こんな狭い場所で爆発させてしまえば皆も巻き添えになってしまうけど、きっとギャグ補正という世界の理によって護られるのだろう。
「お前の罪を数えろォ! 聖智樹ィィイ!」
「テメェで数えろバカタレェエ!」
「ぎょえーーっっ!!」
プロレス好きな二人は伝説の名場面を再現し息の合った攻撃で俺を殺しにかかる。
応急処置で配置したキャベツの壁画は正義と女の怒りによって粉砕され、俺は即座に穿たれた壁から脱出した。
俺は絶対にやらないけど、きっと痴漢を疑われて線路を走る人はこういう気持ちなんだろうなあ……。




