4-81 独占スクープ『ゆうべはおたのしみでしたね~タンスの中からの半裸のNARO長官! まさかの敵との熱愛! 轟くゲス勇者の絶叫!~』
暴君クリーチャーヒカリから必死の思いで逃走し、俺はセーフゾーンに駆け込む様にミトラさんが待つ部屋に突入した。
「ミトラさぁん! 起きてくださーい!」
「むにゃー」
泥酔したミトラさんはそれはそれは幸せそうに涎を垂らして眠っており、俺が揺さぶった事でごろんごろんと転がってしまう。
「のおっす!?」
そういえばこんな感じで坂道を転がるブタの面白動画があったっけ。
しかしあの面白動画と決定的に違う事は彼女がバスローブを着た大人の女性であるという事だ。
それは例えるならば時代劇のよいではないか、アーレー的な奴であり、まあどういう状況になったのか察して欲しい。
「アニキー! どこでヤンスか!?」
「トモキ、どこだ! 助けに来たゾ!」
「のお!?」
しかもあろう事か仲間の声まで聞こえてくる。すぐにマップで確認すると仲間想いの皆が俺を助けるために集結していたのだ。
「向こうからトモキさんの声がしまシタ!」
「ともきくーん!」
「ああ、オレにも聞こえた! すぐそこにいるはずだ!」
この声はニイノとマタベエとリアンか。今回は非戦闘員のニイノがちょいちょい出しゃばっているが、何で今回に限って活躍しやがるんだ。
「……………ッ!」
そして部屋には半裸の泥酔した女性がいるわけで。
皆が必死になって助けに来てくれたのに、もしもこの状況を見られたら俺は主人公としての信頼を失い社会的に死んでしまうだろう。
それはどのようなホラーゲームよりも恐怖を感じるもので、ある意味二作目の暴君に追い掛け回されるより遥かに恐ろしかった。
「そぉいそぉいそぉいッ!」
俺は誠実に説明するのを諦め隠蔽工作を行う事を即断即決し、アイテムボックスから使えそうなものを引っ張り出し簡易クラフトセットで素早く必要なものを作成した。
劇場版の猫型ロボットの様にパニックになりながら道具を散らかした事で、殺風景だった部屋は様々なものが雑多に並ぶゴミ屋敷になってしまう。
「ミトラさぁん!」
「むにゃーん」
俺は大急ぎで作ったクローゼットの中にミトラさんを放り投げる。
まるで女友達が急に家にやって来た際エロ本を隠す青少年の様だが、彼女はこんな雑な扱いをされても目を覚ます事はなかった。
「ここかぁ!」
「もぉぉん!?」
そして彼女を隠し終えた直後に暴君ヒカリが扉を破壊して出現し、俺は扉と共に吹き飛ばされ、それ以上抵抗する時間を一切与えられずに全身の痛みで悶絶してしまう。
「うぉいゴルァ! ミトラさんはどこじゃーい!? 早く答えーにしなすよー!」
「しなすっ、NAROのコンプラ的にその言葉はセーフなのか!?」
「沖縄の方言でしばくぞって意味だからセーフだよ!」
「そうか、なら安心……ってほぼ同じ意味じゃねぇか!?」
ヒカリのおかげで沖縄の方言にまつわる雑学を知る事が出来たが、惜しむらくはその知識を生かすことなく生涯を終える可能性がある事か。
「じー。ツボとかタルとかタンスとかあるね」
「ヒ、ヒカリ。そういうのを調べて許されるのは一部の世界の勇者だけだからな。どうせガラクタだけだしメダルとかはないぞ?」
彼女はすぐに部屋にミトラさんがいない事に気付き、目を見開いて周囲に存在するツボやタルといった全ての物を凝視する。
こんなにたくさん調べるものがあったのならば、ド〇クエの主人公は決して逃さないだろう。
「ツボ! タル! ツボ! タル! ツボ、ツボ、タル!」
「ちょおい!?」
勇者ヒカリは素早い手つきでツボやタルを漁り始める。なお最低限のコンプライアンスには配慮したのか壊さずに調べる最近のパターンの方だった。
「タンスゥゥゥウッ!!」
「ギャー!?」
「むにゃーん」
結局抗う暇も与えられずにタンスは開けられ、当然の如くポテンとミトラさんが零れ落ちてしまう。
きっと為すすべもなく勇者に家財を奪われてしまう村人は人知れずこんな絶望に耐え続けていたのだろう。
「トモキ! 助けに来たぞ! ったく、世話の焼ける野郎だぜ!」
「トモキさん! 加勢しま……す?」
「ヒィイイ!?」
そこに少年漫画の主人公の様にリアン達が颯爽と現れる。カムナも含めぞろぞろと全員揃っていたがこんな状況で皆と出会いたくなかった。
「ワンナイトボマイェの責任を取ってください……むにゃむにゃ」
さらにあろう事かほぼ全裸状態のミトラさんは先ほどのやり取りを寝言で呟いてしまう。
つぎはぎで組み合わせた結果ワンナイトボマイェという訳の分からない単語になってしまったが、多くの人は良からぬ想像をしてしまうだろう。
パシャッ。
世界は静寂で包まれシャッター音と共に光が生まれた。
ハニィはパパラッチとしてひとまずこの決定的な瞬間をカメラに収める事にしたらしい。
「聖智樹さん」
「はい」
ヒカリは俺に背を向けたまま感情の籠っていない声で俺の名前を呼んだ。
怒っているとも絶望しているとも解釈出来ないが、明確な殺気だけは感じ取る事が出来た。
「どうしてクローゼットの中に泥酔状態の半裸状態のミトラさんがいるのか、納得出来る説明をしていただけますか?」
「意気投合して仲良くなりました。性的な行為は一切ありませんでした」
「そうですか。ではワンナイトボマイェとはどのような事をしたのでしょうか?」
「言えません。わかりません。上手く説明出来ません。忘れました。けれど同意はありました!」
そのやり取りは取り調べの様で、まともな言い訳が出来なかった俺は社会的死亡ルートをまっしぐらで突き進んでいた。
この状況で無実を証明してくれるのはミトラさんしかいないけど、彼女はとても幸せそうに熟睡している。
何故だろう、希典先生と一緒にいた時も似たような状況に遭遇した事があるけど、それと同じくらい殺意を抱いてしまった。




