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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-80 ジーマーミ豆腐サバイバー

「待たんかレイパァアアアッ!」

「だから違うってェ!?」


 誤解したヒカリから死に物狂いで逃げ出した俺は暗闇のホテルの中を疾走する。


 クリーチャーと化した彼女は悍ましい唸り声をあげて追跡し、獲物を食らうためにどこまでも追いかけ続けた。


「そこかあッ!」

「ぎょえー!?」


 ようやく撒いたかと思いきやバキィ! と壁が破壊され出現する。もう完全にホラーゲームの追跡者だ。


 ホテルの中を逃げ回っていた俺はかつてエントランスホールだったであろう開けた場所に迷い込む。


 そしてその部屋には何故かタイプライターとコンテナ、三つのメダルを嵌められそうな女神像があった。


「これは!? なんだかセーブポイントっぽいしこの場所は安全な気がするぞ!」

「関係ねぇなッ!」

「ギャー!? セーブポイントなら普通安全だろ!?」


 が、ヒカリはそんな事お構いなしに部屋に侵入してタイプライターを粉砕、三つのメダルを嵌められそうな女神像を持ち上げブンブンと振り回した。


 俺は咄嗟に近くにあった隠し部屋に逃げ込む。


 もしもこれが駄目だったらどうにもならなかったが彼女は何故か追いかける事が出来なかった。


「ググッ! どうして!? 見えない力で入る事が出来ない! 仕方ない、別のルートを探そう!」

「成程、こういう仕様なのか!」


 どうやら某クリーチャーと同じく隠し部屋には入れないらしく、階段を降りたら普通に入れるはずなのにヒカリは悔しそうに諦めてその場から離れてしまう。


 彼女がいなくなったところで俺は即座にその場を離れ脱出する。


 だが逃走して通路を駆け抜け、ドアを開けるとまたすぐにヒカリと遭遇してバッチリ目が合ってしまった。


「ヒィ!?」

「そこかあッ!」


 俺は彼女が掴みかかる直前ですぐにドアを閉める。しかし馬鹿力を持つ彼女はすぐにドアを粉砕して追いかけてくるはずだ。


「な、なんで!? よくわかんないけど前に進めないよ!?」

「まさかの壁ハメバグッ!」


 しかしここでもシステムの仕様が追跡者ヒカリに牙を剥いてしまう。


 いかなるクリーチャーも世界の理であるバグには決して勝てないのだ。


「とにかく今のうちに!」


 俺は彼女が壁ハメバグに翻弄されている間にその場から離れる。


 このバグはあくまでもルート計算によるバグであり、結局別のルートで追いかけてくるからだ。


「がおー!」

「ギャー!」


 けれど通路から離れると俺はやはりヒカリと鉢合わせになってしまう。


 彼女は笑いながら威嚇し、更には背後から別のヒカリが出現してしまった!


「こ、これは! 同時出現バグか!?」

「助けてー、智樹に襲われちゃうよー!」

「待てやコラー! むむっ、智樹ったら私まで襲おうと……あれー!? なんで私がもう一人!?」


 もう一人のヒカリはわざとらしく身をよじって助けを求め、彼女を助けようとしたヒカリは訳の分からない状況に混乱してしまう。いや今までも十分悪ふざけとしか思えない状況だったけど。


 ――けれど。


 もう一人のヒカリはニヤリと笑って、マジシャンの様に何もない空間からステッキを取り出し先端から紫色の光弾を放った。


「ふぎゃー!?」

「へ?」


 ヒカリはもう一人のヒカリの攻撃によって吹き飛んでしまい一時的に戦闘不能になる。一体これはどういう状況なんだ。


 けれどおかしな出来事の連発についていけず戸惑う俺に、もう一人のヒカリは不敵な笑みを浮かべてこう告げた。


「安心して欲しいのです。二作目と同じで彼女が死ぬ事はないのです。そういう仕様なのです」

「何を……?」

「では智樹、シーユーアゲインなのです。もうすぐ混沌の道化師である僕の驚天動地のエンターテインメントが始まるので楽しみにしてほしいのです」


 パチン。


 もう一人のヒカリが指を鳴らすと警察署の様な内装は元の廃墟のホテルに戻ってしまう。


 そしてヒカリの姿をした何者かもいつの間にかいなくなり、後には静寂だけが残った。


 どうやら今まで見ていたのは幻覚だったようだ。


 冷静に考えればあんなゲームの様な馬鹿馬鹿しい出来事が現実で起きるわけがない。


 俺達は一体今何を体験したんだ。


 何故狂った状況に対して何の疑問も抱かず、当たり前の様にあいつが作ったルールを受け入れたんだ。


 ヒカリの姿をしたあいつの正体は一切わからないが、この世界の理には当てはまらない異質な存在である事は間違いないだろう。


 だけど俺は偽りの顔を持った得体の知れない存在に、どういうわけか不思議と懐かしさと心地よさを感じて心が満たされてしまった。


 もしかしたら彼女は俺を助けてくれたのかもしれない。あるいはただ遊びに来たのかもしれないけれど。


 あいつが何者なのかはわからないがおかげで時間を稼ぐ事は出来た。


 今のうちにミトラさんと合流し、ヒカリの誤解を解くために協力してもらおう。

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