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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-76 コンプラ大好き官僚のミトラさんの言葉遊びとか意見交換とか

 食事が終わり、軽く風呂に入って汗を流した俺はミトラさんと部屋に二人っきりになってしまう。


 どうにも間が持たないが、取りあえず簡易クラフトセットでサバイバルに必要な物でも作ってみよう。


「というかまだ飲んでいるんですか?」

「こういう時でなければお酒を飲めないので。パパラッチも流石に異世界までは来ないでしょうから、こっちの世界に来るのはささやかな楽しみだったりします」


 リラックスモードのミトラさんはチューハイ片手にすっかりくつろいでいた。


 ちゃんぽんしたせいで赤ら顔になっているし、ようやく酔いが回ってきた様だ。


 これで累計三本目だが希典先生と同じくらい飲める口らしい。彼と飲み比べバトルで対等に渡り合えるのは彼女だけかもしれない。


「それに出張先で羽目を外すのは官僚や政治家のあるあるネタです。パリに旅行した方もエッフェル塔で記念撮影していたじゃないですか」

「そんな事ありましたけども。最近はあまり聞きませんよね、そういうの」


 彼女は元居た世界なら物議を醸しそうな発言をした。


 あの頃は良くも悪くもコンプライアンスがガバガバだったからそういう事をする政治家や官僚がたくさんいたそうだけど。


「グローバル化に伴い日本の常識が通用しなくなりましたからね。やらかした人が何で普通に仕事を続けているんだと、その辺りのルールに厳しい方々が抗議をしたせいです」

「海外の人ってそういうのにうるさいイメージがありますからね。やり過ぎたら普通に弱みを握られるリスクもありますし」


 いつの時代も政治家は不始末をするものだが、一番良くないのはその弱みを他国のスパイや反社会的勢力に握られる事だ。


 スキャンダルが好きという国民はいないだろうけど、それは俺達の様な現場で戦う兵士も同じだ。


 特に今はご時世がご時世だし、強い不満がクーデターに発展するリスクだってあるだろう。


「海外でも政治とカネのスキャンダルはありますよ。むしろやる時はとことんやるので、政府専用機を使って出張したり、家族同伴でスイートルームを何部屋も抑えたりと億単位の無駄遣いをしています。それで国民から反感を買って辞任というのが定番ですね」

「欧米はやっぱりスケールがデカいんですね。ならエッフェル塔で記念撮影とか政務活動費でキャバクラっていうのは可愛いものかもしれませんね」


 俺は海外の政治とカネの問題のスケールの大きさに感心してしまった。


 小児性愛者がどうのこうのという陰謀論もあるけど、基本的にどの国でも大半の政治家は生々しいスキャンダルで失脚するものなのだろう。


「でも意外と自由な方だったんですね、ミトラさんって」

「これが私の素顔ですよ。まだ本性を知らない仲村渠さんには内緒にしていただければ嬉しいです」


 しかしこういう話をNAROの長官から聞けるなんて意外だった。


 立場があるので普段は言えないのだろうけど、彼女も内心いい加減な政治家たちに嫌気がさして鬱憤がたまっているのかもしれない。


「智樹さん達の戦いぶりを見る限りお互い相手を殺す気はない様ですし訓練の様なものです。せいぜい私がいなくても上手く作戦を遂行出来るか見物させてもらいましょう」


 俺と話し合いをするという目的を達したミトラさんはすっかり消化試合モードだ。


 実際俺も殺し合いに発展する事はないと考えているしそこは全く問題無かった。


「うーん、でもヒカリは完全に誤解してましたし……あいつに見つかったら半殺しにされそうな気がしますけども。ましてやこんな状況を見られたら」


 けれどやはりヒカリとの揉め事が懸念事項として残っている。


 傍から見れば田舎のラブホテルで寛いでいる様なこの光景を彼女が見てしまえば、確実に怒り狂って第三形態のゴリラに変貌してしまうだろう。


「それは大変ですね。ならば何かがあれば全ての責任を智樹さんがとってください。社会的地位を失いたくないので」

「嫌っすよ」

「まあまあ、私達って結構長い付き合いじゃないですか。責任を取ってください」

「ワンナイトの関係ですけれど。ってこれだと違うニュアンスになりますね」


 しかしミトラさんは他人事の様に気にする事はなかった。


 実際催淫弾を撃った俺に百パーセント原因はあるんだけど、もう少し気にかけて欲しいものだ。


「ではそうですね、もしも社会的に死んだらお詫びに一つだけ智樹さんの願いをなんでも叶えるという事でどうでしょう」

「さっき言った事といいわかって言ってます?」


 ミトラさんは誘っているというわけではないが明らかにからかっていた。


 NAROに文句を言ったら青少年の純情を弄んだ罪で摘発出来るかもしれない。


「ならヒカリと仲直り出来るようにナシをつけてくれませんか。俺はとっくの昔に社会的に抹殺されたんで」

「それは無理ですね。お二人は大変仲がよろしいので部外者である私が何かをする必要もないでしょう。ただ彼女は少々おバカなので説得の際はプロレス技を使えばいいと思います。オススメは鏡割りですよ」

「んな単純な、って思いましたけど多分それで何とかなるでしょうね。クガニナーの祠に行く前には仲直りしたいんですけどねぇ」


 ヒカリは基本的には純粋無垢で天真爛漫な少女だ。なのであれこれ考えるよりも肉体言語で語り合ったほうが簡単かもしれない。


「というわけでお詫びはそれ以外でお願いします。なおコンプライアンス的にセーフなものでお願いしますね」

「コンプライアンス的に、ですか。今のこの状況がまあまあコンプラ的にアウトだと思いますけど……週刊誌がいたら大変な事になりますよ」

「大丈夫ですよ、ズブズブの関係なのでどうとでもなります。そうでなければタイミングよく政治家のスキャンダルの記事が出るわけがないじゃないですか。明るみになるのは基本人身御供をするのに丁度いい人の大丈夫なネタばかりですし」

「聞かなかった事にしますね」


 ミトラさんはクスッと微笑み童貞を殺しにかかって来る。


 ついでに政治の闇を知ってしまったが俺は何も聞かなかった事にした。


「それにぶっちゃけ貴方が催淫弾をバンバン撃ったせいでその……性欲を持て余している状態なのですよ」

「コンプラ的にアウトな迷言をドストレートに言いましたね!?」

「言葉遊びを楽しんでいるだけです」

「財務省の偉い人じゃないんですから!? おっぱい触っていいとか言いませんよ!?」

「なら意見交換という事で」

「コンプラァ! いろんな所から怒られますから!?」


 けれどミトラさんは官僚が言ってはならない発言をしてしまった。


 もしもこんなやりとりが週刊誌にすっぱ抜かれたならば確実に辞任するに違いない。


「……………」


 しかもあろう事か不意に彼女はとろけた目になり、無言で女豹の様にゆっくりと近付いてくる。


 俺は身の危険を感じ思わず後ずさりをしてしまった。

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