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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-74 ミトラさんとサバイバル飲みにケーション

 屋内なので火は使えなかったがそこは文明の利器の出番だ。


 魔石を燃料にした電熱式ホットサンドメーカーがあればあら不思議、短い時間で二品も料理が出来てしまった。


 まあ料理と言っても島豆腐を焼いた奴と、コンビーフとチーズをカリカリに焼いた料理とも呼べない代物だけど。


 後は小腹が空いた時のために食べるつもりだったスパムおにぎりを温めてと。冷えたままでも美味しいけれどやはり温めたほうがいいよな。


 ミニテーブルの上に料理とペットボトルの水を並べ晩飯の支度を終えると、衝立の向こう側で人の気配がしたが俺は全力で心を無にした。


 この衝立の向こう側には全裸のミトラさんがいるかもしれないが、そんなものは存在しないと脳を誤魔化すんだ。


「いいお湯でしたよ。智樹さんも後でご自由にどうぞ」

「は、はい。あ、これ晩飯です」


 しばらくしてバスローブ姿のミトラさんが現れる。彼女は座布団に座り、火照った身体を冷ましていた。


 バスローブの下は当然……ううむ、だから気にするな。


「わざわざありがとうございます。しかしよくこの短時間で用意出来ましたね。別に缶詰とかでも良かったのですが、まさかこんな豪勢な食事が出来るとは思いませんでした」

「料理って程のものじゃないですけどね。ああ、島豆腐ステーキは鰹節とコーレーグースもあるんで」


 俺は実に辛そうな赤いコーレーグースの瓶を食卓に置く。


 ちなみにコーレーグースとは島とうがらしを使った調味料でタバスコの様な食材だ。


 辛い物が好きなリアンが欲しがったから取りあえず入手しておいたけど、早速出番に恵まれて良かったよ。


「ふむ、このラインナップだとお酒が欲しくなりますね」

「え?」


 けれど料理を眺めていたミトラさんは眼鏡をきらりと光らせアニマを審査する目つきになった。


 ほんの一瞬アル中教師の顔が脳裏によぎったのは気のせいではないだろう。


「ビールならありますが、飲みます?」

「ありがとうございます」


 俺は戸惑いながらもキンキンに冷えたご当地ビールを用意し、彼女は御神酒を受け取る様に有難く頂戴した。


「えーと、任務中なのにいいんですか?」

「捕縛対象に襲われるリスクがあれば飲みませんが、こうして智樹さんとお話している時点で成功している様なものなので。飲みにケーションも仕事です」

「確かにそうかも知れませんが……まあいいですけど」


 ミトラさんの目的が俺との交渉だとするのならば、既に最高の状況で達成出来ているとは言える。


 なのでその主張には一理あるかもしれないけど、本音ではただ単に酒が飲みたいだけなのかもしれない。


「ふう……」


 プシュッ、と缶を開けて待望のビールを飲んだミトラさんは、先ほどまでのクールな顔が嘘であるかの様に幸せそうな顔になってしまう。


 俺はその変わり様を見てやっぱり彼女は希典先生の遺伝子を受け継いでいるんだな、と納得してしまった。


「なんかこんなジャンクな料理ですみません。NAROの長官ともあろうお方に」


 彼女が最初に食べたのはコンビーフチーズだったが、コンビーフとチーズをカリカリに焼いただけの料理とも呼べない料理を美味しそうに食べる彼女を見て申し訳なくなってしまう。


「何を言っているんですか。最高にも程がある酒肴ですよ。チーズを使っているのがなおいいですね、はむはむ」

「チーズ、ですか」


 希典先生はチーズ系のつまみが好きだけど彼女も好みは同じらしい。


 ハムスターの様にもひもひと食べるミトラさんを見て、俺はなんだか微笑ましい気持ちになってしまった。


「お酒とつまみを用意した対価と言っちゃあなんですが、いろいろお話を聞いても良いですか?」

「話せる範囲でならば構いませんよ。流石に機密事項は無理ですが」


 空気が悪くなるのを覚悟で俺はダメ元で尋ねると彼女は意外にもあっさりと快諾してくれた。この様子だと向こうも話すつもりだったのかもしれない。

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