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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-73 クエスト:ミトラとホテルで一夜を明かそう

 何の因果か敵対していたミトラさんといいムードになり沈黙する事数分、俺は何も出来ないまま硬直していた。


「……………」


 ミトラさんの柔らかい唇が俺の渡した缶コーヒーに触れ、もしもあの唇にキスをしたらどうなるのか妄想しそうになる。


 けど考えが形になる寸前で俺は即座に思考を消し去った。


「智樹さん」

「すすっすみません!」


 だが不意にミトラさんが俺の名前を呼び、邪な心の中を見透かされたのではないかと勘違いした俺は条件反射で謝罪をした。


「はて、あなたはまだ何もしていませんが。NAROの長官である私に何かをするつもりだったのですか? いい度胸をしていますね」

「いやいや滅相もないっす!」


 ミトラさんは皮肉交じりに笑ったが、もちろんそんな事をしてしまえば俺は確実に社会的に死んでしまうだろう。元々死んでいる様なものかもしれないけど。


「別にそこまで気を張り詰めなくても構いませんよ。今日はこの場所で一夜を明かす事になるでしょうし」

「一夜を!?」


 俺はその発言にドキッとしてしまうが、彼女は何を言っているんだとばかりに続けてこう言った。


「ロクな装備もなく夜の密林地帯をピクニックするという自殺行為をしたければ構いませんが。魔物やハブとかもいますし」

「あ、そ、そうですよね……」


 その主張はド正論もド正論であり、生存のためにはそれが最も推奨される選択だという事は頭ではわかっていた。


 うん、わかってはいる。わかってはいるんだけど大人の女性と一晩を過ごすというシチュエーションはなかなか堪えるものがある。


「アイテムボックスの中に何か使えそうなものが他にありますか? もしよろしければ貸してほしいのですが」

「一応大量の水とかタオルとか毛布とかいろいろありますよ。その気になれば簡易クラフトセットで作れますし」


 しかし彼女はサバイバルのためにどうすべきかという提案をしてくれたので、俺の思考は生存するための行動にシフトした。


 いくらラブコメっぽくても今はサバイバルの真っ最中だ。取りあえず窓を何とかして害獣や虫の侵入を防ぎ、少しでも快適な環境にしよう。



 アイテムボックスや簡易クラフトセットを使ってサバイバルの支度をし、廃墟のホテルは修復されてまるで当時と同じ様に快適な部屋へと変貌した。


「よーし、こんなものかな」


 開放的な窓と壁は面倒くさかったので適当にアイテムボックスにあったガレキを設置して粘土で隙間を塞いだ。見栄えは悪いがどうせ一時的な物なので問題ない。


「なんか間抜けだけど……まあいっか」


 ちなみに少しでも殺伐とした空気が和む様、ムゲンパレスの復興作業をしていた時に回収した落書きが描かれたガレキを補修に使ったけど、まさかこれを使う機会があるだなんて思いもよらなかった。


 キャベツやタヌキっぽい落書きが描かれたガレキはホテルの内装とマッチせず違和感しかないが、何も知らずにこれを見つけた奴はもしかしたら古代文明の石板だと勘違いするかもしれないな、と俺はどうでもいい事を考えていた。


 明かりは電気が通っていないので適当に照明器具を設置し、魔石で動くひんやり扇風機も用意して。風と共に冷たい空気を放出する魔改造便利アイテムである。


「ここまでとは……便利なものですね」


 一緒に日曜大工をしていたミトラさんは見事な仕上がりに感嘆の声を上げる。


 まさか彼女も戦場でこんなホテルみたいな部屋で一泊出来るとは思わなかったはずだ。


「わがままついでに要求したいのですが、洗濯やお風呂を作る事も可能ですか?」

「え。あ、はい、出来るっちゃあ出来ますが……魔石とか高性能な浄水器もあるので」

「ではお願いします」


 しかしミトラさんはにっこりと笑いながらえげつない事を言った。


 洗濯はリンドウさんが小遣い稼ぎに作った魔改造洗濯機二号機があるし、ホテルのバスルームも損傷しているが簡易クラフトセットを使えば修理は可能だ。


 しかし彼女はまさか青少年がいるというのに服を脱いで入浴をするというのか。


 いやいや、確かに適切な衛生環境は大事なはずだ、うん。


 もちろん豪華なものは作れないが綺麗な部屋と湯船とお湯があれば十分だ。


 俺はササッと作成して設置、すかさずバスルームから出る。


「どど、どうぞ」

「ふむ、このバスルームにはドアがありませんがラブホテルという設定なのですか?」

「いえいえいえ!? そんなつもりでは!?」


 が、急いで作成したので俺はドアの設置を忘れてしまう。


 俺は慌ててアイテムボックスを探したが、もちろんドアなんてピンポイントなアイテムはストックになかった。


 しかし狼狽える俺がおかしかったのかミトラさんはクスクスと笑ってしまう。


「構いませんよ、適当に衝立でも置いていただければ。タオルとバスローブがあればなおいいのですけれど。風呂上がりに着替えを用意してなかったので……みたいな展開が御所望ならそれでも構いませんが」

「は、はひ」


 俺は要望通りそれっぽいものを用意し竹籠に入れて手渡すと、彼女はありがとうございます、と言ってバスルームへと向かった。


「……………」


 うん、それじゃあ洗濯機でも眺めてのんびりしていよう。


 この精神衛生的によろしくない状況では最高の精神安定剤になるだろうし。


 いや、それよりもメシの支度をしたほうがいいか。


 どうせなら沖縄っぽいものがいいけど何がいいかな。集落で物々交換していろいろ貰ったし、それを使って料理を作ってみよう。

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