4-65 密林にて、催淫状態のミトラさんと
再度ヒカリに襲撃され、密林地帯で逃走劇を繰り広げているうちに俺はいつの間にか皆と散り散りになってしまった。
「ハァ、ハァ、ハァ……で、何であんたがここにいるんですか」
「あなたが俺を護れと言ったからですが」
どういうわけか俺はミトラと二人きりになっており、催淫状態の彼女は紅潮した顔で不服そうに言った。
きっと本人も思考が定まっておらずぐちゃぐちゃな状態に違いない。
NAROの長官が直々に護衛してくれているなんて頼もしいやら恐ろしいやら。
だけどどのくらいの催淫バステが継続するかわからないし、何かのきっかけに解除されるかもしれない。
今はまだ大丈夫そうだが、もしも敵と戦っている最中に正気に戻ってしまえばそれは死を意味する。
「不本意ながら命令された以上はあなたを護らなければいけません。それに私もヒカリさんを特別公務員暴行陵虐罪で処分したくはありませんし」
「なるほど、精神は抵抗していても納得する理由があれば指示に従うのか……」
ミトラはかなり抵抗していたが、どうやらそのような状態でも命令によっては言う事を聞かせる事が出来る様だ。
どうする、リスクを避けるため今のうちに別れるべきか。
人質兼護衛役のミトラを失うのは惜しいが捕まってしまえば元も子もない。
生き残るためにはどのような選択をすればいい。
判断するには情報が足りないが、もう一度催淫弾を撃って完全に掌握するのが妥当か。しかし普通に撃っても反撃してくるだろう。
「ミトラさん、ヒカリに規則を破らせないためには俺を護らなければいけません。そのためには催淫弾で支配を強化しなければいけません。撃っても構いませんね?」
俺はいけるかどうかわからなかったが丁寧な口調で提案をした。
普通に考えれば無茶苦茶な論理だが、半分催眠にかかっているミトラはどのような判断を下すのだろうか。
「そうですね。規則を護るためなら仕方ありませんね」
「おっ、いけた?」
彼女は怪訝そうな顔をしていたがそれが正しいと受け入れた。なら今のうちに催淫弾を撃ってみよう。
「んんっ」
「だからエロい声出さないで下さいって」
やはりいちいち嬌声を上げるのが気になってしまうが、説得の結果催眠を上書きする事に成功する。
「はぁ、はぁ、はぁ……仕方ありませんよね、規則を護る為ですから」
「は、はい、規則を護るためですからね」
しかし問題はその副作用で魅了状態になってしまう事だろうか。
本来は催淫バステなので当たり前だが、大量の催淫弾を撃たれたミトラは明らかに発情していた。
ミトラは熱気のせいで全身が火照り、じっとりとした汗からは理性を狂わせる色香が漂う。
「……ったく、もうちょっと普通のチートが良かったな」
こんな状態ではむしろこっちのほうが理性を保つ事の方が難しい。これでは俺のほうが拷問を受けているみたいだ。
「どうしたんですか、聖さん。顔色がすぐれない様ですが熱中症になっていませんか?」
「あー、いや、気にしないで下さい」
深い状態まで催眠をかけられたミトラは態度も変化し、媚びる様に自らの指を組んでうっとりとした眼差しで俺に優しく声をかけた。
完全にメスの顔になっているが本当にこいつはあの鬼のミトラなのだろうか。まったく、調子が狂ってしまう。
俺はこれが催淫弾によるものだと必死で言い聞かせて邪な考えを捨て去り、皆と合流するために先に進もうとした。
「駄目ですよ、暑いのなら服を脱がないといけません……」
「はい? ひゃい!?」
しかしミトラは甘い声で囁き俺の身体に触れる。
振り向くと目前にミトラの顔が迫っており、その麻薬の様な吐息に俺の脳は正常な思考が出来なくなってしまった。
「あ、あのー!? いや!? こんな場所で!? NAROが飛んできますよッ!」
彼女の眼はすっかりとろけており、俺はこの後の展開を予想してパニックになってしまう。
だが今はそれどころではない上に人としてアウトだ! どうていをすてるなんてとんでもない!
「無理無理無理、誰かッ! NARO呼んでこーいッ!?」
ヘタレな俺は混乱のあまり敵であるはずのNAROに助けを求めてしまった。
このままでは生物的な死の前に社会的に死んで神の力で世界も崩壊してしまうぞッ!?




