4-63 NARO長官、荒木美虎への尋問
別室で眠っていたミトラは既に目を覚ましており、手錠をかけられ拘束されているというのに尋常ならざる殺気を放っていた。
しばしばこうした状況は鎖で繋がれた猛獣と形容されるが、もしも迂闊に近付けば俺は猛虎に喉笛を食いちぎられてしまうだろう。
「ど、ども。取りあえず拘束させてもらいましたが」
強気で行くつもりだった俺もその凄まじい気迫にたじろいで思わず敬語を使ってしまった。鬼のミトラはやはり伊達ではないらしい。
「秘密警察でもあるNAROはこの様な状況も想定しています。私に拷問は無意味ですよ」
「そういうのはしませんけど」
もちろん俺は拷問をするつもりはなかったが、きっと強い信念を持つミトラはそんなもので屈服させる事は出来ないはずだ。
(それにしても……やっぱり似てるよなあ)
改めて見るとやはりミトラは鳳仙と雰囲気が似ていた。
そしてそれは言い換えればヒナとも容姿が似ているという事でもある。
鳳仙は荒木鳳仙という名前なので、苗字が同じ事からもしかしたら親族なのかもしれない。
ヒナはもう死んでいるので別人である事は間違いないだろうが、もしも希典先生の関係者ならばいろいろな可能性が考えられる。
その辺りの事も尋問すべきだろうか。だけどその情報はむしろ機密情報を聞き出すよりもずっと難しかった。
敵の気迫に何も出来ずにいると、ニヤニヤと笑いながらリアンが現れる。
「おーう、早速エロイ事すんの?」
「しねぇよ。なのでそんな汚物を見る目で俺を見るのは勘弁してください」
「……………」
彼女は拘束されたミトラを恐れる事はなく、嘘か本気かわからなかったがその発言にミトラは強く警戒してしまう。今の状況では俺の方が悪人だし丁寧に進めないと。
戦地では国際法なんてものは一切存在せず、拷問も強姦も当たり前の様に行われているが俺は人間を止めるつもりはない。
確かにこいつは不俱戴天の仇だけど、人としてその辺りのルールは絶対に護らなければ。
「拷問とかはしませんが、情報を聞きだしたり言いなりにさせたりする方法はいくらでもあります。卑怯だという自覚はありますけどね」
俺は催淫弾をセットしたM9を用意しミトラに銃口を向ける。これを使えば尋問だけでなく意のままに操る事も可能だ。
「隊員を操った武器ですか。言っておきますがそれを使っても同じですからね」
ネーミングのせいで犯罪チックだがあくまでも全年齢対象の催眠として用いるのでギリギリセーフだろう。
それでも人として褒められたものではない手段ではあるのだろうけど……。
「ククッ、なら試してみるか? そのすまし顔がヒィヒィよがる姿が見ものだぜ」
「リアン、アホな事を言うな」
あくまでもポーカーフェイスを崩さないミトラに、リアンは山賊の様ないやらしい笑みを浮かべた。
しかしミトラは嫌悪する事無く悲しげな表情を浮かべ、
「……こんな形で再会したくなかったんですけどね」
「?」
と、聞き取りにくかったがそう呟いた。
けれど俺もリアンも彼女と知り合いではないので聞き間違いだったのだろう。
「じゃズドン」
「んっ」
この手の尋問では焦らす過程が好きという人もいるが、くどい様だがそういうやましいつもりが一切無かった俺はさっさと催淫弾を発射した。
「ええと……催淫にかかりました?」
ミトラは一瞬声をあげたが特に目立った変化はなく変わらずポーカーフェイスのままだ。
俺は実際にかかったのか心配になってしまいそんな馬鹿な事を尋ねてしまう。
「これくらいなら気合で何とかなりますね。私はそれなりに精神力が強い方なので」
「マジっすか」
ラフランは一発で催淫にかかったがミトラはなんと根性だけで耐えたらしい。
流石はNAROの長官、一筋縄ではいかない様だ。
困っていると様子をうかがっていたリアンはアドバイスをした。
「一発で無理なら何発か撃てばいいんじゃね? 弾はほぼ無制限なんだし」
「それもそうだな」
今は他に敵がいないうえ反撃の心配がないのでいくらでも弾を撃てる。俺は再び催淫弾を発射、ミトラに二発目を撃ち込んだ。
「んんっ」
「おっ、効いてる?」
「効いてません」
ミトラは艶めかしい声をあげたがこれも耐えポーカーフェイスを貫いた。ひょっとして耐性の様なものがあるのだろうか。
いくらタフな精神を持つNAROの長官とはいえ限度がある気もするけど……ともあれズドンともう一発試してみよう。
「ん、んっ……!」
「えーと」
三発目ともなると流石に効いてきたのかミトラの顔は紅潮し始めた。
でも相手があの鬼のミトラだってわかってるのに喘ぎ声がなんかエロく、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
熱中症対策のために上着を脱がせたが薄いシャツの下にはきっと……って何を考えているんだ!
「どぅえーい! ノウマクサンマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマンッ! マーラよ立ち去れい!」
「うお、どうしたんだ。暑さで頭がやられたのか?」
俺は不動明王のマントラを唱えて煩悩を捨て去る。
だがそんな様子を見ていたリアンはゲスな笑みを浮かべ俺に悪魔の様な提案をした。
「やっぱ何度か撃てば効果はあるみたいだな。次は連続で撃ってみろ。フルバーストで」
「ええ? 本気か?」
三発でこんな状態だというのに、もしも何十発も撃ってしまえば一体どうなるのだろう。
出来れば少しずつ撃って精神に問題がないか確認しながら尋問を進めたいんだけどなあ。
「くっ……! いっそ殺してください……!」
「リアルでくっ殺を聞くとは思いませんでしたよ。敵に捕まった姫騎士じゃないんですから」
しかしミトラの悔しそうな顔とその台詞を振りだと解釈し、空気を読んだ俺は引き金を目いっぱい引いた。
「あ、あぁ、んッ!」
「うぉう……」
催淫弾を大量に浴びたミトラは嬌声を上げ激しく身をよじってしまう。
呼吸も荒くなり明らかに魅了が付与されていたが彼女はそれでも耐えていた。
しかしそんな事よりも滅茶苦茶ゲスい事をしている気分になってしまう。
本当に何で催淫はセーフで催眠はアウトとかわけのわからないルールが出来たんだ。
改めて見ればミトラって結構肉付きが良いっていうか、スタイルがいいっていうか……もちろん露出度は低いけどだからこそ余計にエロさを感じるっていうか、うん。
俺は今更ながらミトラを女として意識してしまった。
そして同時に俺がまあまあ人としてやってはいけないとんでもない事をしているという事実にも。
「うわ……えっろ……」
「だ、黙りなさい!」
リアンは思わずそう呟いてしまい、ミトラも平常心を保てなくなってきたらしい。
そして彼女は何を思ったのかミトラに接近しつん、と太ももの辺りをつついた。
「ああぁッ!」
「ぬぉっ」
ミトラはわずかな刺激で激しく悶えてしまう。
どうやら催淫弾の効果で極限まで敏感になってしまい、いわゆる全身性感帯な状況になってしまった様だ。
「ハァ、ハァ、ハァ……! 私はあなた方の様な外道には決して屈しません……ッ!」
審査機関でもある彼女はそういうコンテンツを熟知しているのか、エロ同人でネタにされそうなセリフを公式で言った。
もしもわかってやっているのなら実はノリノリなのかな?
「よしトモキ。もっとやれ!」
「えー……マジ?」
リアンは面白がってさらに催淫弾を撃つように促す。
これを繰り返していけば陥落しそうだが、俺は苦悶しながら悔しそうに歯を食いしばって耐えるミトラの姿を見て罪悪感が勝ってしまった。
だけど気が進まなくてもやるしかない。
ミトラを意のままに操ればニライカナイでの戦闘は終結し、俺達はもちろん民間人への被害も避けられるはずだ。
外道極まる手段だとしてもそれは命を護る事より重要ではない。俺は心を鬼にしてM9の引き金を引いた。




