4-62 荒木希典と荒木美虎の関係
「さて、と……」
一休みして体力を回復した所で俺は覚悟を決めて重い腰を上げ、別室で監禁していたミトラの下へ向かった。
「智樹ちゃん」
俺が何をするのか察した希典先生はほんのり真面目そうな顔になってしまったけれど、
「いや、何でもないよ」
「……はい」
結局彼は目線を逸らして酒を飲み続けた。一体希典先生は何を言おうとしたのだろうか。
「ミトラの苗字って荒木ですけど……関係ないですよね」
俺は少しだけ気になっていた事を彼に尋ねる。荒木希典と荒木美虎、両者の共通点はありふれた苗字と眼鏡くらいだ。
第一最強最悪のテロリストと秩序を司る組織のトップに関係などあるはずがないだろう。そんな事はわかっていたはずなのに。
「さあねえ。早く行きな」
「……………」
しかし希典先生ははぐらかし何も答えてくれなかった。彼の真意が全く分からなかったが機嫌が悪いというわけではなさそうだ。
「ああそうそう。この後の展開次第ではあの約束を特別サービスで叶えてあげていいよぉ」
「あの約束、って」
あの約束とは以前俺が希典先生とかわした約束の事を言っているのだろう。
人を殺せば願いを叶えるとかそんな事を言っていたが、まさかミトラを殺せと言っているわけではないはずだ。
特別サービスという事はつまり例外であり、殺す以外の行動だ。
ひょっとするとミトラを操り傀儡にするとかそういう展開を期待しているのだろうか。
「あんたは何が望みなんです?」
しかし俺は明確に意図を理解出来なかったので確認をした。
少なくともニマニマとした笑みからは悪意しか感じられないのでロクなものではないだろう。
「んー。ミトラルート? からの結婚?」
「はい?」
希典先生は訳の分からない事を告げ、しばらくしてその意味を理解し憤りを感じてしまう。
「そういうのは間に合ってます」
おそらく彼は催淫弾を使って隷属させろとかそういうのを望んでいるのだろう。
エロゲとかならともかく、そんな倫理に背く事をするつもりは一切無かった。
「ありゃりゃ、なんか勘違いしてる?」
しかし彼は苦笑いをして否定する。
どうやら勝手に憤慨してしまったが別にそういう事は望んでいなかった様だ。
「まあいいや、お前さんの好きにやんな。いい加減結婚して欲しいのは本心だけど」
そして彼はまるで実家の面倒くさい父親の様な願いを口にした。
こんな事を言うなんて、やっぱりミトラと希典先生の間には血縁関係があるのだろうか。
「はあ……行ってきますけど」
結局どうして欲しいのか俺は最後まで希典先生の真意がわからなかったが、いずれにせよ戦いを避けるために交渉は行わなければならない。
どのみち一線を越えるつもりはないし、無理のない範囲でやってみるか。




