4-58 ゴリラと智樹との決戦?
リアンとの死闘を終えた私は急いで市役所の階段を駆け上がり、本陣の総大将であるミトラさんの下へと向かった。
肉体言語で語り合ったおかげでリアンと分かり合えたのはよかったけれど少し時間をかけすぎてしまった。何とか間に合えばいいんだけど……!
「おりゃー!」
バリケードを障害物競走の様に飛び越え、スピードを落とす事なく有刺鉄線を第五匍匐前進でぬるぬると滑る様に突破し、操られたカルラ族兵士を空中で踏んづけて高所へ飛び移り。
まるでアクションゲームの絶対王者であるヒゲの配管工になった気分だけど、私の立ち位置的にかつて敵だったゴリラのほうがピッタリかもしれない。
ちなみにあのゴリラはレディを誘拐してジャンプマンにシバかれたけど、実は立場が逆でジャンプマンのほうが悪者という説もまことしやかに囁かれている。
レディ役がミトラさんとするならジャンプマンは智樹になるのだろう。今の状況ならばこちらの説の方がいいか。
道中私はどこかで見たわかりやすいハンマーを発見する。
ゴリラを倒すエクスカリバーとも呼ぶべきこの最強の武器があれば一気に進めるはずだ!
「ウホー!」
「ギャー!? ゴリラが来たぞ!」
「急げ、ありったけのタルを投げろ!」
お馴染みのBGMが流れ、ハンマー状態になった私は高速でハンマーを上下に振りバリケードや進路を遮るものを全て破壊していく。
「おもぼぼっ!?」
「待て俺達は味方ッギャース!」
「勝てない……ッ! 人間如きがハンマーを持ったゴリラに勝てるわけがない……ッ!」
修羅と化した私には敵味方の区別がつかなくなり、うっかり操られていないNARO隊員も倒してしまう。だけどギャグ補正があるからきっと平気なはずだ。
さあ、もうすぐミトラさんがいる作戦本部だ。
私ははやる気持ちを抑えきれず、扉を破壊して部屋に突入した!
「ミトラさーん!」
「のおッ!?」
吹き飛んだ扉は智樹目掛けて飛んでいくけれど、智樹は驚きつつも抜群の反射神経で回避した。
「仲村渠さんですか。少しばかり手荒なやり方に言いたい事は多々ありますが助かりました」
室内にいた護衛役は全員戦闘不能になっており智樹とミトラさんの一騎打ち状態だった。
絶体絶命のピンチっぽいしどうやら最高のタイミングで突入出来た様だ。
「無茶苦茶しやがるな。しばらく見ない間にゴリラに拍車がかかったんじゃねぇか?」
「誉め言葉として受け取っておくよ!」
態勢を整えた智樹は日本刀を握りしめキッと睨みつける。
その眼差しは親友に対するものではなく敵意に満ちたものだったけど、私は底抜けの明るさで跳ね返した。
やはりこの様子だと智樹もリアンと同じで私の事を良く思っていない様だ。分かり合うためには同じ様に肉体言語で語り合うしかないのだろう。
「とにかくこれで二対一だよ。形勢逆転だね」
親友と戦うのは心苦しいけど他に道はない。
戦いの果てに互いの手を強く握りしめる結末をイメージして全力でぶつかるだけだ。
「それじゃあ智樹、正々堂々とサシで勝負しようか。智樹もこういう少年漫画みたいな胸アツ展開は好きでしょ?」
私はハンマーを向け智樹を挑発するけど、自分勝手な申し出にミトラさんは怪訝そうな顔をしてしまう。
「仲村渠さん」
「ミトラさん、お願いします」
「……………」
戦いに美学なんてものは不要だ。
私のしようとしている事は全くもって非合理的であり、作戦の総指揮を執るミトラさんにとっては受け入れがたい提案に違いない。
それでも即却下しなかったのは、親友と決着をつけたいという私の気持ちを慮ってくれたからだろう。
もちろんミトラさんと一緒に戦えば楽に勝てるかもしれないけど、やっぱり私にだって矜持の様なものがある。
分かり合うためにはやはり一対一で戦うのがセオリーだ。
智樹はしばらく悩み、フッと笑みを浮かべて前に出る。
「俺はそれでもいいぞ。お望み通りサシでケリをつけようじゃねぇか、ヒカリ」
「流石、わかってるじゃん」
やはり智樹も思う所があったのだろう、一対一の決闘を承諾してくれる。
勝手に話を進めてしまったけど、ミトラさんは肩をすくめ馬鹿な部下の説得を諦めてしまった。
「ただ勝負は一瞬で終わるだろうな。お前は俺にどう足掻いても勝てねぇよ」
「言ってくれるね。私だって強くなったんだから」
私は親友との戦いが楽しみで仕方がなかった。
強敵と書いてともと呼ぶ間柄じゃないけど、やはりこんな展開に血沸き肉躍らないわけがない。
「来い、ヒカリッ!」
「行くよ、智樹ッ!」
そして私は智樹と決着をつけるため拳にありったけの想いを込める。
苦しみ傷付け合っても、私達が分かり合うにはそれしか方法がないから。
「――なぁんてな。悪い、ヒカリ」
「え?」
けれど智樹は不敵な笑みを浮かべ、死んだ魚の様な眼を光らせる。
(なに、これ……?)
妖しげな瞳の光を見た私は得体の知れない力によって脳と精神を侵され、意識はフェードアウトしていき、世界から強制的に存在を切り離されてしまった。




