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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-57 リアンの魂の審査

 第二ラウンドのステージとなった空間は吹き抜けの中庭になっており、崩落した外壁には掴める場所が多いのでクライミングには最適だ。


「食らえッ!」


 そんな場所だからリアンにとってはかなり戦いやすく、彼女は義手で窓枠を掴みターザンの様に縦横無尽に移動して爆弾やニードルガンで攻撃をしてくる。


「くっ!」


 私はもちろん空を飛べないので手出し出来ず一方的に攻撃されてしまう。


 さっきみたいに物を投げてもいいけど、動きが不規則な上に早過ぎて狙いが定まらない。


 どうすればいい。


 どうすればリアンを捕まえる事が出来る。


 私は物陰に隠れて猛攻をしのぎながら妙案が浮かぶのを待っていた。


 ……いいや、やめやめ。やはりここはゴリ押しだ。


 私は中庭から離れ、助走をして一気に駆け出し空中に身を投げた!


「そいやー!」


 勢いをそのままに外壁にぶつかる瞬間、私は壁を蹴って再び空中に浮かぶ。いわゆるゲームとかでよく見かける壁キックである。


「テメェ物理法則を護れっての!?」


 人間離れした動きにリアンは驚愕してしまい、動揺のせいで彼女の動きは乱れてしまう。


 今ならきっと捕まえられるはずだ!


「捕まえた!」

「ふぎゃ!?」


 私は空中でリアンに抱き着きそのまま一緒に地面に落下、木々の枝を折りジャングルと化した中庭に落下してしまう。


「うりゃ!」

「っ!?」


 身体のあちこちが痛かったけれど、リアンはすぐに巴投げの要領で押し倒した私を投げ飛ばした。


 逃がしてしまえばまた鬼ごっこが始まるしここで決めないと!


「でぇい! 考えるよりも先に投げっぱなしジャーマン!」

「うぎゃ!?」


 私はすかさずリアンに抱き着き背中を逸らして放り投げる。


 まさかそんな技が繰り出されると思っていなかった彼女は受け身を取る事が出来ずに大ダメージを受けてしまう。


「ッ!?」

「ちぃッ! ならこっちは雪崩式DDTッ!」


 起き上がった彼女は私を掴み、樹木をコーナーポスト代わりにして雪崩式DDTで頭から地面に叩きつける。


 こんな技術が必要な凄い技が出来るだなんて彼女は本物だ。


「うおりゃー!」


 私は負けじとリアンを担ぎ上げ高速回転してから放り投げる。


 技名は特に決めておらず、勢いだけで発動した技だ。


「ハァ、ハァ、仮にも官憲ならもっと綺麗に戦えっての……!」

「泥臭く戦うのが私のファイトスタイルだからね。そういうのはとっくの昔に捨ててきたよ」


 リアンは特殊な武器を持っているとはいえ身体能力は私のほうが圧倒的に上だ。


 スタミナ切れも起こし始め彼女は息を切らしバテてしまう。


「畜生がッ! オレがアンジョなんぞに負けてたまるかッ!」


 自棄を起こしたリアンもまた見栄えを捨てラフファイトに切り替える。


 これがプロレスの試合ならひんしゅくを買う泥仕合だけど、お互いそんな事は一切気にしなくなってしまった。


「お前さっき言ってたよな、どうしてオレがこんな生き方を選んだのかってッ! オレだって好きでこんな生き方してるわけじゃねぇんだよッ!」


 リアンは叫びながら落とした木刀を拾って闇雲に殴りつけたけど、私は避ける事無く彼女の想いと共に全ての攻撃を受け止めた。


「昔アンジョがオレのダチを金づるにしていて、挙句の果てに殺しそうになって、助けるためにオレはその辺の石を投げたんだッ! 次の瞬間にはアンジョの身体はバラバラに吹っ飛んでたよッ!」

「それって……」


 リアンの過去に何が起こったのかはわからない。


 だけどその投げた石は普通の石ではなく、不発弾の様なものだったのだろう。


「どんな理由があってもアンジョ殺しは問答無用で死刑だ! オレは真っ当な人生を送れなくなったッ! 生きるために手段も選べなくなったんだッ! オレはどうすれば良かったんだ、あァ!? 答えろよッ!」


 それは不幸な事故であり、ましてや間違っても子供だった彼女が死刑になる様な罪ではなかったはずだ。


 けれどそんな理屈は通用しない。


 どれだけ理不尽だとしてもそのルールはこの世界では絶対的な掟なのだから。


「だけどトモキはこんな血みどろの手のオレを受け入れてくれたんだッ! 惚れた女と勘違いしてたとしてもッ! オレはもうダチを無くしたくねぇんだよッ!」

「あぐッ!」


 リアンは義手で私の顔面を殴りつけ、口の中が切れ血の味が広がってしまう。


 私は軽く脳震盪を起こしながらも無我夢中で戦い続けた。


「それがあなたの本当の想いなんだね」


 彼女の真意を知り、そして澄み切った涙を見た私はリアンという人間の魂の美しさを知ってしまった。


「ごめんね、あなたの価値を勝手に決めつけて。あなたの魂を勝手に決めつけて」


 リアンは間違っても悪人なんかじゃない。


 彼女が大切に思っている智樹を害する事なんて万に一つもあり得ないだろう。


「だから仲直りさせてッ! リアンッ!」

「うぎッ!?」


 私は力任せに彼女を抱きしめる。


 物理的な解決方法だとしても私はこれ以上彼女と戦いたくなかったから。


 ベアハッグによって骨は軋み、彼女はしばらく抵抗していたけれど次第に大人しくなってしまった。


「約束するよ。私は智樹を殺したりしない。リアンが智樹を思っている様に私にとっても智樹は大切な親友だから。私は偽善者だけど、それだけは断言出来る」

「……フン。知った風な口を利くんじゃねぇよ」


 涙目のリアンは悪態をつきながらも微かに微笑んでくれた。これは仲直り出来たって事でいいのだろうか。


 だけど彼女の顔は次第に苦痛に歪んで青ざめてしまい、


「つーか死ぬ……ゴバァ」

「わわ、ごめん!?」


 泡を吹いて失神しかけてしまったので、危うく彼女を殺しかけた私は急いでベアハッグを解除した。


 荒っぽくて最後はちょっと締まらなかったけどリアンと仲直り出来て良かった。


 たとえ彼女が愛理と別人だとしても、もっと仲良くなれるといいな。

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