4-54 残念ダンディなオジサンとか
本陣の周辺には既に敵が目前まで迫っており、カムナが単騎無双してヨンアと渡り合っていった。
モブ隊員はとっくに蹴散らされて戦闘不能になっているけど幸いにして誰も死んでいない。強さもだけど手加減しながら一人でやってのけるなんて化け物にも程がある。
「ハァ!」
あと他にもいろいろ破壊力が凄いからカムナには勝てる気がしない。
何がとは言わないけどね、うん。大剣を振り回すたびにぽよよんとね、うん。
「ヨンア、負けたら駄目だよ! ヨンアも結構いい勝負してるから!」
「なんか凄い邪念を感じるんだけど」
このままじゃ勝てないと思い私はたまらずヨンアを応援してしまった。
私の考えを察した彼女は苦笑し、どうにかカムナの猛攻をしのいでいた。
「それにしてもカムナとかち合うなんて。あなたとは絡みがあるようで絡みがないけど」
「はて、ヨンアさんとはついこの間初めて会ったばかりですが。ですが相当な手練れとお見受けしました。これならば少し本気を出しても良さそうですね!」
NAROでも屈指の実力者のヨンアは異世界の剣豪と対等に渡り合っていた。
彼女もまたヨンアを好敵手と認め、ギアをチェンジしさらに奮起してしまう。
ううむ、あそこだけ世界観が違うっていうか速すぎて動きが見えない。巻き添えを食らわない様に近付かないでおこう。
「なんか増えてるなあ。あれも智樹の知り合いかな?」
「ラフランとウタか。あいつらは確か異世界軍の所属だから返り討ちにされてそのまま兵隊にされたんだと思う」
ノミコちゃんは影に隠れながらこっそり情報を教えてくれ、周囲に気付かれない様に影の手で敵の動きを封じ援護していた。
彼女の力を借りられたら嬉しいけど、ここじゃあ事情を知らない人にも見られる可能性があるからなあ。
それにシンプルにこういう立ち回りのほうが効果的かつ安全に迎撃出来るし、双方に犠牲者を一人も出さないためにもサポートに専念してもらおう。
「トモキ様のためにッ!」
「この戦いが終わったらトモキ様にご褒美を貰うんだ~!」
敵の中には翼の生えたカルラ族兵士もいて、敵だったはずなのにどちらもすっかり魅了バステが付与されて忠実な僕となっている。
特にクーデレ隊長っぽいラフランとスポーツ少女っぽい兵士のウタは他の兵士より強いから要注意だろう。服装も他の兵士と違って豪華だし階級も上なのかもしれない。
「でもノミコちゃんってなんで二人の事を知ってたの? やっぱりすんごい人工知能だから?」
「そういえばそういう設定だったっけ。まあそんなとこ」
「ふーん、まあいいや」
ノミコちゃんは何故か自分が最先端の人工知能である事を忘れていたらしい。
とにかく今大事なのはこの場に強敵が何人もいる事だろう。
ただあの二人はいいとして……。
「君は俺とヤりたいのかい? 極上のテクを見せてあげるよ」
「な、何をするアッー!」
なんでここにフェロモン溢れるAV男優がいるんだろう。
でも明らかに場違いだけどレジェンドのフィンガーテクニックでこちらも無双している。
「どうだ、どうだ、アァ!」
「ら、らめぇ……! 肩こりと腰痛がイッちゃうでふ~!」
ちなみに誤解を招きそうなやり取りだけど戦闘スタイルは普通に柔術スタイルで、整体スキルもあるのか身体にガタが来ていた芦田隊長を快楽昇天させつつ関節技で倒していた。
「芦田隊長……何やってるんですか」
そこにダンディな面影は一切無く、ほんのり彼をお父さんの様に思っていた私は幻滅してしまい、そして芦田さんの立ち位置を理解してしまう。
ぬるぬる階段から落ちていった入隊試験の時もそうだったけど、きっと彼はこういう残念ダンディな役割なのだろう。
うん、あの二人は無視しておこう。
見せ場を作ってもアニメ化された時にどうせ諸般の事情でカットされるだろうし。
「仕方ないよ、あいつはマダオはマダオでもまるでダンディなオジサンじゃなくて、まるで駄目なオジサンのほうのマダオだから。どっちもあの御大がやってるけど」
「?」
ノミコちゃんは長崎のレジェンド声優を代表する役でみっともない様を表現したけど、何故かカムナはその言葉に反応してしまう。
「このご時世に昔から変わらない安定の残念ダンディだねぇ。だけど今後も宜しく頼むよ」
「何言ってるの、ノミコちゃん?」
ただ彼女は昔を懐かしむ様に幸せそうな目をしていた。
この口振りだとひょっとしてノミコちゃんは芦田隊長と昔から知り合いだったりするのだろうか。
けれど彼女はクスクスと笑って、
「ううん、何でもないよ」
「?」
と、はぐらかしたので私はそれ以上聞く事が出来なかった。
うーん、なんかミステリアスって言うか、ノミコちゃんの謎が深まったっていうか。
「ノミコちゃんってこういう風に笑う事も出来るんだね」
「そりゃ私だって人の子だから。いや違うか、人間じゃないか」
けど友達の飾らない笑顔を見れたのは少し嬉しかった。私達は戦いの最中だという事を忘れて笑い合ってしまう。
「なーにヘラヘラ笑ってんだよ!」
「わわっ!?」
「おっと」
しかし仲良くおしゃべりを楽しんでいると射出された義手が飛んでくる。
ノミコちゃんが影の手で弾いてくれなければ、私はきっと首根っこを掴まれて投げ飛ばされていただろう。
「やっぱりリアンもここにいるよね」
どうやら私の対戦相手は彼女らしい。
死んだはずの私の友達と瓜二つの容姿をしたリアンはニカッと笑い、素早く義手のワイヤーを巻き取って手元に戻した。
そのいたずらっ子の様な笑顔は愛理の物とは大分異なっていたはずなのに、私はどういうわけか愛理と同じだと感じてしまったんだ。




