4-52 智樹チームとのバトル(密林地帯)
「血肉を貪り食らえ、アイスクロウッ!」
氷のカラスの大群の羽ばたきと、二丁のガトリングによる凍てつく銃弾は戦いの開始を告げる号砲となり常夏の密林を氷獄へと変えてしまう。
「ぐッ!?」
「うわああ!?」
見た事もない開幕ブッパの範囲攻撃は散会していたモブ隊員の動きを封じ、足元を凍らされ身動きが出来ない間に犬耳の忍者が駆け抜け戦場を撹乱する。
「うららー!」
とどめを刺したのは巨大な斧を振り回す鳥の骨の仮面を被ったダークエルフ、あるいはキジムナーのような少女だ。
彼女は一切の小細工を用いず、圧倒的な怪力だけで右往左往する隊員達を吹き飛ばしていった。
「ていっ!」
「おっと!」
キーアの無双を止めたのは同じく力自慢なチクタ君だ。
彼は振り下ろされた廃材の戦斧を鋼の拳で受け止め、攻撃が通じなかったキーアは空中で一回転して後退する。
「お前デカくて強そうだゾ! キーアはお前と戦うゾ!」
「そうだね。君になら少し本気を出しても良さそうだ」
パワータイプの両者は斧と拳による乱打戦を繰り広げる。だけど生身でロボット兵器と渡り合えるなんてこの子は何者なのだろう。
そんな激しい戦いの最中もチクタ君は普段通りの愛嬌のある表情を崩さず、あ、そうだと思い出した小ネタを口にする。
「ちなみにリアンが言ってたけどナーゴ族のご先祖様は僕と因縁があって、そのご先祖様は君たちのご先祖様と盟友だったそうだよ」
「なるほどそうか! なら友達の友達みたいな感じだゾ! ならチクタはキーアの友達だゾ!」
「そういうものなの?」
裏設定を聞いたキーアは喜びを力に変えて戦斧を振り回した。
なかなか独自の理論だけど、彼女は強敵と書いてともと呼ぶ世界の住人なのだろうか。
「ヒャッハー! やるじゃねぇかッ! 最高のエクスタシーを楽しもうぜェッ!」
「のおお!?」
デンジャー先輩もまた崩れた隙を逃さず負けじと雷警報を発令、重低音のベースの音色は稲妻へと変わり、予期せぬ攻撃に空を飛んでいたザキラも怯んでしまう。
雷による攻撃は空中を飛んでいても全く問題ない。
むしろかえって攻撃が命中しやすくなった分、アドバンテージは一切無くなり不利になってしまった。
「よう、デンジャー。随分とクールな見てくれになったじゃねぇか!」
「ハッ! 普段の姿は世を忍ぶ仮の姿、これがデンジャー・スネイル様の本当の姿だッ!」
イメチェンをしたデンジャー先輩を見てもザキラは割とすんなり受け入れる。
蛇穴とザキラという名前だけでなく、趣味も似ている彼女はインパクト抜群のコープスメイクを見てむしろ親しみを感じたらしい。
「つーかまさかそれ雷魔法か? アンジョでも魔法が使える奴はたまにいるけど珍しいな」
「なーに訳の分からない事を言ってやがるんだッ!」
雷攻撃はデンジャー先輩の特異体質に由来するものだけど、ザキラは先輩の雷攻撃を魔法と勘違いした様だ。
確かにこの特異体質は科学で再現された魔法だと言えるかもしれない。
でもこの世界の魔法はどういう原理なんだろう。
オカルトって可能性もあるけど、もしかしたら私達の世界とは違う科学に由来する技術だったりするのかな。
「おうザキラ、テメェはドMなのかッ!? ちったあやり返せよチキン野郎がッ!」
「だれがチキンだッ!」
ザキラはチキン野郎と呼ばれた事に憤慨し、攻撃はより苛烈になって大量の弾丸がばら撒かれる。
欧米ではテンプレな罵倒に用いる言葉だけど、鳥類だからその言葉は最大限の侮辱を意味する言葉だったのかもしれない。
「もう弾幕シューティグゲームみたいになってるしあそこには行きたくないでござるな、サスケ殿」
「本当でヤンス。でもやっぱりこういう展開になるんでヤンスねぇ」
先日戦ったばかりのニアちゃんとサスケは友達と戦うというのにどこか楽しそうだ。
戦場で生きてきた二人にとってはじゃれ合いの延長線上の様なものなのかもしれない。
「うーん、でもどうするでござる? どっちも殺す気ないみたいだけど。適当に遊んで終わるのを待つでござるか」
「楽しそうでヤンスね! オイラもそっちのほうがいいでヤンス!」
この戦いは本番だけど本番じゃない。その事を理解していたニアちゃんはやる気が全くなく、サスケも尻尾を振って全面的に賛同する。
けれどはしゃいでいた彼女は耳としっぽをシュンとさせ、小太刀を構えて戦闘態勢に入った。
「ただそれだとアニキが捕まっていい様に利用されちゃうででヤンス。戦争に関わりたくないアニキにとってそれは殺されるよりも辛い事なんでヤンス」
「ああそう。それでサスケ殿を危険な目に合わせるってのもなんか卑怯な気がするけど」
折角友達になったのに戦わなければいけない――ニアちゃんも落胆しながら密造カラシニコフの銃口を向けたけど、その言葉を聞いたサスケはむすっと怒ってしまう。
「違うでヤンス! アニキはちゃんと一番危険な仕事をしている最中でヤンス! 勝手な事を言わないでほしいデヤンス!」
「ははあ、つまりサスケ殿は陽動で、智樹殿は一発逆転を狙うため本命の作戦を遂行しているわけでござるか? たとえばNAROの本陣とか」
「ハッ! しまったでヤンス~!?」
しかしニアちゃんはそのやり取りから狙いが別に存在する事を見抜いてしまい、作戦を暴露するという失態を侵したサスケは情けなく絶望してしまう。
「だそうだよ、ヒカリ。ここは拙者達に任せるでござる!」
「ふむふむ、ガッテンだ!」
つまりここにいる皆は囮なのであまり時間をかけてはいられない。むしろ最悪の事態を避けるために放置したほうがいいだろう。
「ああッ!? 待つでヤンス!」
「駄目だよ」
サスケは失態を挽回するためすぐに私を追撃しようとするけど、ニアちゃんはすかさず割り込んで何かをポイ、と放り投げた。
「ひゃばー!?」
「忍法沖縄の引く程デカいオオゲジの術でござる」
「うわあ」
無数の足を持つ巨大なオオゲジはサスケの全身を這い、地元民でも苦手な人も多いオオゲジによって彼女は戦意を喪失、虫に慣れている私もドン引きしてしまう。
「アフリカマイマイとアマビコヤスデもあるでござるよ」
「やーん! 意地悪しないで取って欲しいでヤンス~!」
ニアちゃんは事前に用意した巨大なカタツムリと巨大なヤスデも取り出す。
あんなものを素手で触れるなんてただ物じゃない。アフリカマイマイは元々食用だし、食べようと思えば食べられるけど……。
沖縄は豊かな自然が売りだけどそこにいるのは美しい生き物だけではない。
多くの人は大自然との触れ合いで本物の沖縄を知って幻滅してしまうのだ。
そうそう、ちなみにアフリカマイマイもアマビコヤスデも寄生虫とか毒性があるから皆は素手で触らない様にね。
特に世界最大のカタツムリでもあるアフリカマイマイは普通に外来種で生態系を壊すから、間違っても本島に持っていったら駄目だよ。
「とと、今のうちにっ!」
ともあれニアちゃんが隙を作ってくれた間に私はすかさず戦場を離脱してミトラさんの下へ向かう。
今の話を信じるのならきっと智樹は戦力が分散している間に拠点にいるミトラさんを狙うはずだ。急いで救援に向かわないと!




