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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-48 クエスト:管理者権限を持つ聖智樹の捕縛

 ダンディな芦田隊長が実は異世界で暗躍していたNAROの暗部だったと知ったけど、それは一旦さておいて私達は問題を解決するための話し合いに戻った。


「それでミトラさん達は異世界転移した私達を助けに来てくれたんですか?」

「それももちろんありますが、我々がここに来た最大の目的はこの地に封じられた人類の遺産を異世界の支配者の手に渡らない様にする事です」

「人類の遺産、ですか」


 それはきっと智樹が話していたニライカナイの遺産の事だろう。


 智樹によるとこの世界では昔終末戦争があってあちこちに人類が遺した負の遺産があり、管理者権限なる能力を持つ智樹はそれを処分するためにニライカナイにやってきたらしい。


 ミトラさんの目的は智樹達の目的と近いしもしかしたら協力出来るかもしれない。もっとも智樹のほうは聞く耳持たずだけど……。


「それはわかりましたが、NAROって異世界の支配者と仲良くしているんですよね?」


 遺産が何なのかはわからないけれど、それが世界を滅ぼしかねない禁忌の力である事は容易に想像が出来る。


 ただNAROの立場からすれば異世界の支配者に恩を売っておきたいだろうし、むしろ協力しそうなものなのに。


「確かに我々と異世界の支配者とは良好な関係を築いていますが、必要以上に軍事力を持たれても都合が悪いのですよ」

「ふむ、ちょっと前の日本とアメリカみたいな関係って事ですか」

「……大体そんな感じですね」


 私はズバズバと正直に思った事を言うと彼女は困った顔をしてしまう。確かにこういうのは周知の事実だとしても国の偉い人に言うべきではないだろう。


 もっとも最近は相対的に力関係が変化しつつあり、衰退したアメリカに変わって今では日本のほうが軍事力は上だったりするけども。


「ですが遺産を狙っているのは異世界の支配者だけではありません。我那覇総督や旧希典派の軍勢もです。いいえ、既に保有していますが彼等はそれを抑止力にしていると言ったほうが適切ですね」

「抑止力、ですか」


 遺産が何なのかはわからないけれどきっと異世界では無類の強さを誇るものだろう。


 異世界の伝承には核ミサイルっぽいものが出てくるし、もしかしたらそういった危険なものなのかもしれない。


 そしてミトラさんは言いにくそうに言葉を続けた。


「皆様が不在の間現実世界を取り巻く状況は大きく変わりました。我那覇総督の離反で不信感の募った連合軍は瓦解寸前となり、福岡も生物兵器による攻撃で壊滅的な被害を受けました。近々戦況は好ましくない方向に変化するでしょう」


 わかってはいたけどやはり英雄である我那覇総督の離反は、日本や世界にとてつもない影響を与えてしまったらしい。


 それは軍事的な要衝である沖縄が陥落した事と同義であり、今まで自分達が安全だと思っていた人も考えを改める必要に迫られたからだ。


「増税に次ぐ増税は市民生活を逼迫し厭戦機運も高まりつつあります。個人的にはそれでも構いませんが、たとえ武装蜂起による革命が起きたとしても何も変わらないでしょうね」

「……………」


 争い続ける人類に絶望したミトラさんは愚かな群衆に何も期待していなかった。彼らは結局のところ誰かの命よりも自分達の生活のほうが大事なのだ。


 けれどそうした人もまた結局権力の座を狙う人間に利用され全てを奪われてしまう。そんな馬鹿馬鹿しい歴史を人類は繰り返し続けてきたのだ。


「ですがそんな大変な状況なのにこっちの世界に来た理由は……私達の救助と異世界の支配者に遺産が渡るの防ぐって言ってましたけど、本当にそれだけなんですか?」

「仲村渠さんは本当に勘が鋭いですね」


 私がなんとなく気になった事を尋ねるとミトラさんは脱帽してしまう。そこまで驚かせる事を言ったつもりはないんだけどどうしてかな。


 しかし油断しているとミトラさんは耳を疑う様な事を言った。


「仲村渠さんにはまだ伝えていませんが、少し前の大規模なテロは旧希典派の幹部の瀬田直子によるものです」

「えっ」

「彼女は八咫鏡の開発にも携わりましたが、防衛システムの抜け道を利用しドローン爆撃を行いました。あなたにはもう少し早く伝えるべきだったかもしれませんが」


 私達の街を滅茶苦茶にしたあの攻撃が防衛システムを作り出した人間が引き起こしたテロによるものだった――その事実は衝撃的でなかなか受け入れ難かった。


「大丈夫ですか」

「……いいえ、続けてください」


 ミトラさんは私を気遣ってくれたけれど事態を把握するためちゃんと話を聞かなければならない。これ以上悲しい思いをする人を増やさないためにも。


「現在瀬田直子は防衛システムを無効化し、二千発以上の核ミサイルで各国の首脳を脅しています。いわば彼女は最強の矛と盾を持っており完全に支配権を奪われている状況です」

「それで瀬田直子の目的は」

「脅迫に関してはまだ目的はわかりません。ですが彼女もまたニライカナイの遺産を狙っていて、我那覇総督から瀬田直子の手に遺産が渡れば事態はさらに悪化してしまうでしょう」


 私は与えられた情報を整理し、ミトラさんの目的を理解した。


「つまりNAROは我那覇総督というよりも瀬田直子を追いかけてきたと」

「そういう事です。ニライカナイの遺産さえ回収出来れば我那覇反乱軍はこの際無視しても構いません。もっとも彼等がその様な要望を受け入れるはずもないので戦う事になるのでしょうが」


 説明を聞いた私はおおよその目的を理解する。つまり私もニライカナイで旧希典派の残党である瀬田直子を倒してニライカナイの遺産を回収すればいいというわけか。


 でも私達の世界も大事だけど、ようやく平和な暮らしを手にした沖縄の人達の平穏な日々が脅かされる事があってはならない。


 沖縄の人からすれば旧希典派や我那覇総督は戦争から助けてくれた英雄であり、私達が何かをするのは余計なお世話でしかない。そこを理解した上で慎重に立ち回らなければならないだろう。


「ミトラさんがこっちに来たって事は、向こうの世界とこっちの世界を自由に行き来出来る方法があるって事ですよね」

「ええ。我々だけが知る独自の経路がありますので、帰りに関しては気にする必要はありません」

「ふむふむ」


 どうやら戻ろうと思えばいつでも戻れるみたいだけど、瀬田直子を野放しにするわけにはいかないので問題を解決してから帰る事になるのだろう。


「……でもそれってNAROはずっと前から知っていたって事ですよね。異世界の存在を」

「そうなりますね」


 ただ私はその事実に少し引っかかってしまった。


 彼女の話を信じれば、NAROは異世界が楽園ではなくチートもハーレムも存在しない世界だとずっと前から知っていたらしい。


 それはただの嘘よりも残酷な真実だった。


 鉄兵の様に政府のプロパガンダを信じ、異世界転生に希望を見出して戦争に行った人も少なからずいたというのに。


(ノミコちゃん。私は協力したほうがいいのかな)

(答えは決まってるんでしょ)


 私はノミコちゃんとこっそり相談したけれど、何もかもを理解していた彼女は優しく突き放した。


(……そうだね)


 思う所はあるけどそれは沖縄の人を護る事よりも大事ではない。


 ここで頑張れば私達は彼らの平穏な日々を護る事が出来、元の世界に戻って今まで通りアニメ作りも出来るのだから。


「それでミトラさん。私はまず何をすればいいのですか?」


 異世界でやるべき事を理解した私はミトラさんから指示を仰ぐ。


 戦争は嫌だけど、葉瀬帆や沖縄の悲劇を繰り返さないためにも今回ばかりは戦わなければいけないだろう。


「ニライカナイの遺産は強力ですがそのままでは使えません。遺産を使用するには管理者権限が必要で、現状その力は聖智樹さん以外に保有していません」

「智樹、って……」


 だけどミトラさんの口からは予想だにしていなかった人物の名前が飛び出した。そして動揺する間もなく彼女は続けて、


「異世界の支配者も瀬田直子も真っ先に彼を狙うはずです。なのでそうなる前に捕縛する必要があります。もちろん仲間も含めて誰一人として一切殺さずに」


 と、そんな思いもよらない指示を伝え、私はしばらくの間唖然としてしまったんだ。


「つまり我々の第一目標は聖智樹の捕縛です。出来ますか、仲村渠さん」

「……………」

「智樹君が……」


 衝撃的な通達に智樹と親しい間柄のエマも狼狽えてしまう。


 沖縄を護り、捕縛が目的とはいえ私達はこれから親友と命のやり取りをするのだから。


「やります。やらせてください」


 だから私は迷う事無くその任務を引き受けた。


 親友の命がかかっているのならば、そんな役目を他の誰かにさせるわけにはいかなかった。


 智樹にああ言った手前嫌われちゃうかもしれないけど……だとしても私は逃げるわけにはいかない。


 智樹と真正面からぶつかり合って、お互いに想いをぶちまけて仲直りして、本当の意味で親友になるためにも。

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