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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-47 芦田隊長の正体

 争いを避けるため沖縄の人は無関係を貫くつもりみたいだけど、フードコートで堂々ときな臭い話をしていたら不信感は募るだろう。


 そう考えた私達は人がいない喫茶店跡地に移動し、ミトラさん達と情報交換もしつつ今後の事について話し合った。


 今回は内容が内容だから禍悪巣亭のメンバーは不参加で、会議には私、ヨンア、エマの正式なNAROの隊員だけが参加した。


 後は影の中にノミコちゃんがいるけどこれはデフォだしカウントしないでおこう。ただ空気の読めない私はずっと気になっていた事を真っ先に質問する。


「あのぉ、芦田さん。今話す事じゃないかもしれませんが……その格好についてお尋ねしてもいいですか?」

「やっぱりバレていたか。流石だな」

「?」


 けれどダークヒーロー衣装の芦田隊長は観念した様にダンディな笑みを浮かべる。


 爽やか若手イケメン俳優が演じるニチアサは無理でも、深夜なら特撮番組で主演を務められそうなくらいダンディだ。本当にこの格好は何なんだろう?


「勘の鋭いお前ならもう大体わかっていると思うが、俺はこっちの世界で工作員みたいな事をしている」

「え、そうだったんですか!?」

「白々しいな。つーかさっきの会話でなんとなくわかってんだろ」


 芦田隊長が語った正体はなかなか衝撃的で私は驚愕してしまうけど、何故か彼は私がその事に気付いていたと勘違いしていたみたいだ。


 うーん、入隊試験で結果を出し過ぎたせいで未だにスゲェ奴って勘違いされてるなあ。仕方ない、ここは話を合わせておこう。


「成程、私もそういう噂は聞いた事はありましたけど……実在してたんですね」


 隊長になって日が浅いエマは別班的な部隊の存在を知らなかったみたいだけど、それほど驚いてはいない。


 元々司馬桜龍の影武者のエマ自身が機密事項の塊みたいなものだからそんなものなのだろう。そもそもを言えばNAROは機密じゃないアレコレのほうが珍しいけど。


「ヨンアは知ってたの? ヨンアもちょいちょい裏側の仕事をしてるけど」

「なんとなくはね」


 私がそう尋ねるとヨンアはニコニコ笑いながらやんわりと肯定する。だけどなんとなく知っていた、っていうのは嘘だろう。


 甲東官房長官の動向を探るためにスパイとして送り込まれていたくらいだし、ヨンアはNAROの中でもトップクラスのエージェントだ。きっとガッツリおおよその事情を知っていたに違いない。


「ですが工作員って何をしてるんですか? 異世界って外国みたいなものですしアニマ法は適用されないと思いますが」

「もちろん俺達の活動は非合法だ。こっちの世界の支配者のご機嫌を取って恩恵を得るためギブアンドテイクの関係で仲良くしてるって感じだな。どこぞの国が利権のために工作員を送り込む感じだ」

「ははあ、なるほど。CIAとかKGBとか公安が自分達の国と仲良くしてもらうためにアレコレするって感じに近いですか」

「その通りだが忖度しろ、ぼかして言ったんだから」


 諜報機関が自国の利益のため、他国の支配者に恩を売るというのはどこの国でも普通にやっている。


 裏工作は時間と手間がかかるけどミサイル一つを作るよりも遥かに安上がりで大きな利益をもたらすし、時として核抑止力すらも無力化出来るので国を維持するためにやらない手はない。


 まさか異世界でそんな事をやっているとは思わなかったけど、そうした行為自体は特段珍しいものではないだろう。


「つっても実際はやらかして消された隊員の受け皿的な役目の意味合いのほうが強い。基本的に俺も含めて隊員は全員訳アリの連中ばかりだ。簡単に言えば野垂死んでも構わない左遷された奴の寄せ集めだな」

「……むぐぐ」

「?」


 芦田さんがそう言うと何故だか隊員の一人が私に強い敵意を向けていた。もしかしてあの人は私と因縁がある人なのだろうか。


 でもフロンティアスピリットウーマンといい錦界収容所といい、やりたい放題の私には恨まれる心当たりしかない。


 ……うーん、まあ気にしないでおこう!


「ははあ、つまり芦田隊長の正体は消されたNAROの元長官で、異世界で暗部として活躍しながら密かに影響力を持ち続けている影のトップ……的な?」

「っ」


 私は面白がって勝手な妄想を口にしたけれど、それを聞いた芦田隊長達は明らかに動揺してしまう。


「あれ?」


 何だろう、この空気。


 私またやらかしちゃったのかな。確かにこういう冗談は真面目な話し合いの場で言うべきじゃないよね。


「……仲村渠さん」

「はい」


 ミトラさんの冷たい声で私は即座にピンと背筋を伸ばしてしまう。


 ヤバい、よくわかんないけどこれ多分怒られる奴だ。


「NAROに消された長官など存在しません。次に同じ事を言えば精神に問題があるとされ更迭されますのでそのつもりでいてください」

「はい」


 うん、よくわかんないけどこれっていわゆる語ってはいけない鮫島事件的なアレだ。


 なら身の安全を確保するために知ってはいけないんだろうね、消されるから。


「でもまさかNAROが異世界で暗躍してただなんて驚きました。イナエカロ? ってところでひと悶着あったって聞きましたけど」

「この空気でよく質問出来るね。凄いね、ヒカリって」


 私は気を取り直してもう一つ気になっていた事を聞いてしまい、ヨンアは図太過ぎる神経の持ち主の私にやや引いてしまった。


「ああ、アレか。アレも恩を売る為でそれ以上の意味はない。上手く利用されたっていうかハメられた感はあるが」

「ハメられた?」


 ただ芦田隊長はこっちに関しては隠すつもりがなかったらしく素直に話してくれた。だけどハメられたって一体誰にだろう。


 けれどこっちは答え辛かったのか、ミトラさんはコホンと咳をして会話を中断させた。


「気にしないでください。それよりもヒカリさん、あなたはこの世界で荒木希典の関係者と出会いませんでしたか?」

「いえ、直接は会ってませんけど……ただ沖縄で戦った旧希典派が我那覇総督と一緒にいるとは聞いていますね」

「そうですか」


 私は把握していた情報を正直に話す。きっとミトラさん達は旧希典派がこの世界で悪さをしないか警戒しているのだろう。


「それともう一つ、イスキエルダ隊長の姿が見えませんが彼女はどこにいるのですか?」

「イスキエルダ隊長はさっき揉めて集落を出ていった智樹達が心配だって追いかけて行きましたけど、やっぱり入れ違いになっちゃいました?」

「そうですか。妙ですね、彼女がそんな事をするなんて。ふむ……」


 私は眼を逸らしながら智樹と喧嘩別れしたという事実を隠しつつ伝えた。けれどミトラさんもイスキエルダ隊長の不自然な行動に引っかかってしまったらしい。


 確かにイスキエルダ隊長はずっと何かが変だったけど、私にはそれを上手く言葉にする語彙力がなかった。でもミトラさんならその違和感を的確な言葉で説明出来るのだろう。


 ただ芦田さんの正体もイスキエルダさんの違和感も正直どうでもいい。


 話が脱線しかけたけど今は目の前の脅威に集中しないと。智樹の事もやっぱり心配だからちゃんと話し合いたいし。

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