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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-39 ダンディ仮面コテツとの交渉

 ザザッ。


 いるはずがないNAROの登場にどよめいていると、ヨンアが持っていた無線からノイズが生じた。


『聞こえるか。聞こえたら応答しろ』

「こちらヨンア。生きていたんですね、ダンディさん」

『ダンディは止めろ。せめてコテツって呼んでくれ』


 ヨンアがからかうとダンディボイスの応答相手は不愉快そうに怒ってしまう。


 マップで見てみるとダンディ仮面が無線で通話をしているし、やはり同一人物と考え差し支えない様だ。


 だがヒカリは何かに気付き、ヨンアが持っていた無線に顔を急接近させ大喜びで叫んだ。


「あれ? ひょっとしてその声は芦田隊長ですか!? 私達を迎えに来てくれたんですか!?」

『喧しい、大きな声を出すな。あと一応機密って言うか……まあいい』


 推測だが芦田隊長なる人物はコテツという偽名を使い、素性を隠してこちらの世界で活動していたのだろう。


 NAROに別班の様な秘匿性の高い謎に包まれた部署が存在する事は噂には聞いていたが、まさか異世界で暗躍していたとは。


 けれどヒカリからそっと距離を取ったヨンアが続けて言った言葉に、俺はまたしても驚愕してしまった。


「聖智樹とか、関係者以外にも聞こえるようにしてますけど構いませんね」

『むしろそうしてくれ。彼と話がしたい』

「っ」


 ヨンアは俺の事を名指しで呼んで指示を仰いだ。つまり幾度となく怪しい挙動をしていた彼女はやはりそちら側だったというわけである。


 アホ過ぎるが故に嘘が付けない脳筋ゴリラのヒカリは多分違うだろうけど、おそらくヨンアは最初からそのつもりで俺に接近したのだろう。


 俺を捕縛する為か、利用する為か、あるいは殺す為か。


 理由はわからないが、いずれにせよ好ましくない目的には違いない。


『聖智樹。我々は君と敵対する意志はなく無用な争いは避けたい。そのためにも君と話し合いがしたい』


 芦田は俺に交渉を持ちかけたが軍事力をチラつかせた交渉は交渉とは呼べない。それは一般的に脅迫と呼ばれる行為だろう。


「……そんなに兵隊をぞろぞろと引き連れて何のつもりだ。あんたらもニライカナイの遺産を狙っているのか」

『やはりニライカナイの遺産の事は知っていたか。だがそれもそうか』


 俺は遺物を動かせる管理者権限というチートスキルを持っていたからこそ各方面から狙われていた。


 ニライカナイの遺産については秘匿すべき事柄かとも思ったが、連中は全部知っていたからここに来たのだろう。


『確かに異世界の支配者は遺産を欲しがっているが、我々は人類の負の遺産を彼らに引き渡すつもりは毛頭ない。しかしそれにはまず君の身柄の確保が前提となる。誓って害を為すつもりはないし、君が恐れる様な展開にはならない』

「ああそうかい、イナエカロで思いっきりカチコミを仕掛けてきた気もするが。先に手を出したのはあんたらだろ」


 元々俺はNAROの事をこれっぽっちも好意的に捉えていなかったが、奴らははるばる異世界まで来て襲ってきたので明確に敵対する理由が存在する。


『それについては詫びる事しか出来ない。言い訳になるようですまないがこちらにも事情があったんだ。信じてくれとしか言えないな』

「そう言われてそうかあんたらを信じよう、と言うとでも?」

『言わないだろうな、フツー』


 芦田隊長の主張には根拠が乏しく信じる理由は何一つ存在しなかった。俺はそれ以上話し合いをするのを止めて不安げな仲間に告げた。


「つーわけだ、とっととここを出るぞ」

「キーアは別にいいけど……皆は?」


 イナエカロでの一件を知らないキーアだけは難色を示したが、それ以外の仲間からは反対意見が出るわけもなく、当事者でもあったニイノは声高に主張した。


「うちもそうしたほうがいいと思いマス! あの人たちはお母さんの気球を壊そうとしましたカラ! きっとトモキさんの管理者権限が欲しくて手の平を返しただけデス!」

「僕もご近所さんと一緒に気球を壊そうとしたからあまり他人の事を言えた義理じゃないけど……そのほうがいいと思うよ」


 アマビコは仲間の中でも博愛主義者の部類に入るが、そんな彼も当然信用するつもりはなかった。


「悪いのはお触れを破ったアタシだけどネェ。アタシだけならまだいいケドうちの子達や皆まで危険にさらすのはネェ」


 リンドウさんの夫のビンキチさんは支配者達から危険視されて消されたので、その仲間であるNAROの事も当然敵と認識している。


「旦那みたいになってほしくないシ……どっちにしてもリスクはあるから判断はトモキに任せるヨ」


 けれど彼女は思う所があったはずなのに、最愛の我が子の命を考え感情を押し殺し俺に全てを委ねた。


 リンドウさんのためにも選択を間違えるべきではないだろう。

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