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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-37 クルガネザーシーとミミキリボンズの言い伝え

「じー」

「ん?」


 天龍リンドヴルムについて考察していると、二人組のマジムンは何故か俺を凝視した。はて、警戒心を抱かせるような行動はまだしてないけど。


「あー! クルガネザーシーのおそなえものぬすんだやつ!」

「あー! ミミキリボンズのおそなえものぬすんだやつ!」

「ああ、あの時の」


 けれど二人組のマジムンがニライカナイに伝わるもう一つの伝説に出てくる神の名前を叫んだ事で、俺はようやくあの時の木の葉マジムンだと気付いてしまう。


 どいつもこいつも似た様な見た目をしているからすぐにはわからなかった。でもこれはちょっとマズいぞ。


「にげろー! クルガネザーシーにたたられる!」

「にげろー! ミミキリボンズにのろわれる!」

「あっ」


 怯えた二人組のマジムンは残ったサーターアンダギーを急いで頬張り逃げてしまう。もう少し話を聞きたかったんだけどなあ。


「どうしたんデショウ?」

「あらら、行っちゃったネェ」

「トモキ、なにしたんだゾ?」

「いや、うん、いろいろと」


 彼等と何があったのか知らない皆はサーターアンダギーを食べながら不思議そうな顔をしてしまったが、答えに窮しているとマタベエは忘れ物のオモチャを手に取った。


「これとどけてくるー」

「ああ、よろしくネ」


 考えるよりも先に思いやりの心で動くマタベエらしい行動だが、そのせいで俺は謝罪のチャンスを逃してしまう。こんなんだから俺はヘタレなんだろうなあ。


「いやー、探したよー。この子達を追いかけてたの?」

「やー!」

「やー!」

「ヒカリ?」


 が、すぐに木の葉マジムンを抱えたヒカリが現れ俺達のもとに届けてくれる。しかし彼らにとっては巨人に捕まっている様なものなので余計に怖がらせてしまった。


「ごめんごめん、なんかクルガネザーシーとかミミキリボンズって聞こえたから。マジムンから沖縄の昔話でも聞いてたの?」


 どうやら彼女は前後の事を知らなかったせいでこんな事をしてしまった様だが、怪物に捕まった木の葉マジムンからすれば災難に違いない。


「やー! たべないでー!」

「やー! これあげるからー!」

「うん? ありがとー。もぐもぐ」

「お前ちったあ空気読めよ……」


 彼らは食べられると思ったのか、涙目で持っていたサーターアンダギーを彼女に差し出した。


 人として普通はなんとなくわかるはずだが、ヒカリは美味しそうにサーターアンダギーを頬張る。


「ヒカリちゃん、こわがってるからはなしてあげてー?」

「うん? わかった」


 だがマタベエは困った様に見上げ彼女に懇願し、ヒカリはもしゃもしゃと食べながら二人組のマジムンを地面に降ろした。


「ぐすん」

「ぐすん」

「はい、わすれもの。ぼくのサーターアンダギーもあげるー」

「ありがとー」

「ありがとー」


 マタベエの助けで二人組のマジムンは無事に解放され、ロボットのオモチャのついでにサーターアンダギーも取り返す。


 安心した彼らは泣きながら優しさの詰まったサーターアンダギーを食べ多少は恐怖が和らいだようだ。フォローをしてくれたマタベエには感謝しかない。


「もぐもぐ。それでクルガネザーシーとかミミキリボンズって?」

「お前二番目に仲間になる王子並みに凄いな!?」


 けれどヒカリはこの状況でもなお情報を聞き出そうとした。この空気が読めず異次元のメンタルの強さこそが彼女の力の源なのだろうか。


「クルガネザーシーはニライカナイのおうさまだったの」

「ミミキリボンズはナジムのおうさまだったの」

「あ、教えてくれるんだ。君達いい子だね」


 しかし素直な二人組のマジムンは半泣きで恨めしそうだったがちゃんと答えてくれる。弱い者いじめをしているみたいでなんだか心苦しいけど……。


「クルガネザーシーはぜんぶわすれてミミキリボンズになったの」

「ミミキリボンズはぜんぶわすれてクルガネザーシーになったの」

「ずっとくりかえしている。つみをおかしつづけた」

「ずっとくりかえしている。えいえんにゆめのなか」

「ふむ……?」


 言い伝えによるとどうやらクルガネザーシーとミミキリボンズは同一の存在らしい。


 実在した人物なら異世界転移、あるいは転生者となり同じ過ちを繰り返したとか、そういう事を意味しているのだろうか。


「はなしたからもうかえっていい? ぐすん」

「かみさまをおこらせたらだめ。ぐすん」

「ともきくん、ヒカリちゃん。こわがってるみたいだし……」

「ああ、怖がらせてごめん、帰っていいよ」


 だけどこれ以上引き留めるのは酷だし何よりもマタベエに嫌われてしまう。俺は二人組のマジムンに帰る許可を出すと彼らは小走りで去っていった。


 ともあれもう一つのキーワードとなるクルガネザーシーとミミキリボンズの事はわかったので、ニイノは早速腕を組んで考え込む。


「有益な情報を聞き出せましたケド、どういう意味なんデショウ?」

「ナジムはやっぱりナジム族の事か? さっきも言ったけどナジム族のご先祖様はニライカナイと関係があるそうだゾ。キーアもよく知らないけど」


 キーアいわくナジム族のルーツはニライカナイにあるらしい。


 けれどそれ以上の事は何もわからなかった。俺は早速謎解きを始め、クルガネザーシーとミミキリボンズの正体を探った。


 しかしヒカリはうーんと悩み、あっ、と妙な事を閃いてしまった。


「そうだ! これきっと自称ヒラデルヒア出身のクレイジーモンキー、葛〇純と蛍光灯デスマッチをして耳が切れちゃったって意味だよ! きっとミミキリボンズはプロレスラーだったんだね!」

「んなわけあるか」


 プロレスマニアな彼女は独特な解釈をしてしまったが流石にそんなわけはない。こいつの意見はひとまず無視しておこう。


「うーん、でも色んな解釈が出来るからなあ。もうちょっと粘ってみるか」

「そうデスネー、うちも観光……いえいえ、そのほうがいいと思いマス!」


 この伝承を解読するにはまだ情報が足りないと判断したのでそう提案すると、ニイノはうっかり本音を漏らしてしまった。


「ぼくもいっしょにいくー」

「ああ、いいぞ」


 別に楽しいイベントではないが甘えん坊なマタベエは俺の頭の上によじ登り寄生する。今度はあまり揉めない様程々に注意しながら行動しよう。

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