4-36 ほしのうみをめざしたわるいリンドウの言い伝え
サーターアンダギーを食べて一休みしていると、楽し気な空気を察して二人組の木の葉マジムンも熱い視線を向けてきた。
「じー」
「君達も食べたいノ? はい」
「いいのー?」
「ありがとー。これおれい!」
ニイノはもちろん快諾して二人組の木の葉マジムンにサーターアンダギーを渡すと、彼らは玩具箱の羽釜からカードの様なものを取り出した。
「わあ、ありがとう? でもこれは何なのカナ」
それは何かのICカードっぽかったが彼女には価値がわからなかったらしい。だけどこうして優しさは循環していくのだろう。
「これはりゅうのうろこ」
「でもなんなのかぼくたちもわかんない」
「そっかー」
彼等はカードを龍の鱗と独特な形容をした。確かに見ようによってはキラキラしているし、価値のあるものに見えなくもない。
「ねえ、その龍って、ひょっとして天龍リンドヴルムの事?」
しかしニイノはそれが天龍リンドヴルムを指しているのではないかと考え情報を引き出そうとした。些細な情報でもいいし何かわかればいいんだけど。
すると彼等はよくぞ聞いてくれたとばかりに身振り手振りで昔話を伝えてくれた。
「そうだよ。ニライカナイにはリンドウってアンジョがいたの」
「かみさまのふねをつくっていたリンドウはじぶんもそらをとびたくなったの」
「リンドウ……?」
「ん?」
ニイノはおそらく彼女にとってもっと聞き馴染みのある単語に反応し、汚れた手でお茶を飲んでいたリンドウさんも不思議そうな顔になってしまった。
「リンドウはきらわれものだったの」
「リンドウはふねをつくるのにむちゅうでともだちをすてたの」
「リンドウはふねをつくるのにむちゅうでかぞくをすてたの」
その昔話に出てくるリンドウは、もしかしたら沖縄に縁がある宇宙飛行士の鍋島竜胆の事かもしれない。
鍋島竜胆は宇宙飛行士としてのイメージが強いけど、彼女は元々宇宙関係の技術者だったからだ。
「リンドウはふねをつくるのにむちゅうでへいわなせかいをこわしたの」
「リンドウはわるいまじょだったの」
「リンドウはわるいりゅうをうみだしたの」
「きらわれもののリンドウはひとりぼっちになったの」
だけど彼女の想いに反してその技術は悪用され、宇宙空間は戦争に利用される様になってしまった。
現代の戦争に用いられている多くの技術は彼女によって生み出された物であり、機神兵もその一つであろう。
「リンドウはほしのうみをめざしたの」
「リンドウはゆめのおちかたをめざしたの」
「でもしんじゃったの」
「でもおそらにいきたかったの」
そして彼女はいつしか『戦争の母』と呼ばれる様になってしまった。優秀だった彼女は世界の秩序を変えてしまう程の技術者だったのだ。
「リンドウはリンドヴルムになってそらをとびつづけているの」
「リンドウはつみをつぐなうためニライカナイのまもりがみになったの」
ニライカナイの伝説を語り終え、ずっと話を聞いていたニイノとリンドウさんは切なそうな顔になってしまった。
「リンドウ、デスか……トモキさんはこの伝説をどう思いマス?」
「どうだろうな。もしかしたらただの伝説じゃないのかもしれないけど」
「アタシと同じ名前のリンドウって奴は随分と自由だったんダネェ。ただ気持ちはわかるよ」
リンドウさんは自分と同じ様な運命を辿ったリンドウに感情移入をしてしまう。
リンドウさんもご近所さん総出で反対されていたし、一歩間違えれば鍋島竜胆の様になっていた可能性もあったはずだ。
「……天龍リンドヴルムか」
情報が集まった事で、少しずつ過去にニライカナイで何が起こったのか輪郭が見えてきた。
まだ断言は出来ないけど、やはり宇宙飛行士の鍋島竜胆と天龍リンドヴルムは何かしらの関係があるのかもしれない。
もっと言えばリンドウさんはひょっとすると……。




