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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-35 ガジュマルの樹の下、目覚める尊いぽふぽふ

 絶世の美魚ニイノの人たらしスキルもあり、彼女は話しかけた人から本編とは全く関係ないおやつを大量に手に入れホクホクとした笑顔になってしまう。


「えへへー、大収穫デス!」

「それはいいんだが、本来の目的を忘れちゃいないか?」

「は、そうデシタ!」


 情報収集という目的を思い出したニイノはようやく我に返る。ただ集落の人が友好的って事がわかったのは最大の収穫だろう。


「むう、でも早く食べたいデスし……あっ、マタベエデス」

「むにー」


 美味しそうな沖縄のおやつを前に食欲と葛藤していたニイノは、樹木にもたれかかってお昼寝をしていたマタベエを発見した。


「んゾー」

「キーア? とリンドウさんも」


 自由気ままなマタベエはいつもの事だけど何故かキーアまでもが寛いでいた。この木にはリラックス作用でもあるのだろうか。


「トモキもお茶を飲んでいくカイ? 今はこの子達の頼みごとを聞いてるからちょっと手が離せなくてネ」


 ガジュマルの木の周辺は市民の憩いの場となっており、リンドウさんもさんぴん茶を飲みながらいつも通り機械いじりをしている。


 玩具箱代わりのボロボロの羽釜の中には壊れたガラクタが突っ込まれており、木の葉マジムン達はワクワクしながら作業を興味深そうに眺めていた。


 リンドウさんは黎明期のロボットっぽい壊れたオモチャを慣れた手つきで修理し、ロボットのオモチャはギィコギィコ、と動き始めた。


「わあ、うごいた!」

「おばちゃんまほうつかい?」

「ふふ、かもしれないネェ」


 二人組の木の葉マジムンは再び命が吹き込まれたオモチャに感動する。


 現代と比べても遜色ない技術者であるリンドウさんの職人技は、彼らからすれば魔法にしか見えなかった事だろう。


 ニイノはその光景をふふ、と幸せそうに眺めた後、マタタビを嗅いだ猫の様にぐうたらしているキーアに話しかけた。


「キーアさんもお昼寝デスカ?」

「んゾ。なんだか落ち着くゾー」

「ああ、ガジュマルの木だからか」


 俺は彼女がのんびりしていた樹木がガジュマルの木だとわかり、すぐにその理由を察してしまう。


「ガジュマルの木、ってなんデス?」

「沖縄とかでその辺に生えている木だよ。キジムナーっていう妖怪の棲み処とも言い伝えられているんだ。キーアはナジム族であってキジムナーじゃないけど」

「似た様なものだゾ。ナジム族のルーツはニライカナイにあるそうだゾ。もしかしたらご先祖様もこうしてのんびりしてたのかもしれないゾ」


 すっかりリラックスしたキーアはナジム族の小ネタを教えてくれた。キジムナー系の妖怪は九州南部にも伝承が残っているがやはり本場は沖縄だろう。


「ここはのんびりしてて幸せな気持ちになるゾ。でもなんだかこの景色をどこかで見た事がある気がするゾ」

「そっか」


 ただキーアが何の気なしに言った言葉に、一瞬俺は余計な事を考えてしまう。


 ナジム自治区の騒乱のラストで判明したキーアの素顔は、沖縄にルーツがあった同級生の謝花に酷似していた。


 あいつはまだ生きているので転生者というわけではないとは思うが、もしかしたら関係があるのだろうか。


「むにー。とろけるー。マタンゴー、ゴンタマー、マタンゴー、ゴンタマー」

「ふふっ」


 だがセンチメンタルな想いはヘンテコな動きをしたマタベエによって吹き飛んでしまう。


 マタベエは逆さまになって訳の分からない事を言い、そのコミカルな動きにニイノは思わずクスッと笑ってしまった。


「とってもふわふわー」

「だろ? キーアにもわかるゾ。なんだか悟りが開けそうだゾ」

「実際ガジュマルの木はブッダの樹とも呼ばれているしあながち間違いじゃないかもな。ややこしい理由でそういう事になったってパターンだから実際のブッダとは関係ないけど」


 俺はにわか齧りの知識を思い出し説明したけど、こんな事を知らなくてもガジュマルの木は直感でわかる程度に神秘的で、自然の造形美が美しい複雑な根っこは自然と拝みたくなってしまう。


「てんじょーてんげゆいがどくそーん! ぼくはせかいいちぽふぽふなキノコ!」

「ショッピングモールの駐車場に生えたガジュマルの木で目覚めるな。せめて菩提樹か食われて沙羅双樹送りにしとけよ」


 今では暴走族のキャッチコピーとなってしまった現人神の名言をおもむろに呟いたマタベエを見て、俺はおそらく人類史上初となるツッコミをしてしまう。


 ゴンタマと言ったせいで何かに目覚めてしまったのだろうか?


「食われて、ってなんだゾ?」

「昔の偉い人がキノコに当たって死んだんだ。だから仏教……日本で主流な宗教とキノコは縁が深いんだよ」

「ほへー、キーアもキノコを食べてお腹を壊した事あるゾ。アンジョもキノコで死ぬんだナ」


 俺は現人神の最期を伝えるとキーアは妙に納得してしまった。


 聖人が死ぬ時は奇跡を起こしたりするものだけど、包み隠さず食あたりで死んでしまうと後世に伝えるだなんて実に正直な御開祖様である。


 だけど魔王マーラも仏教にちなんだ名前だし、マタンゴさんは仏教や釈迦シャカ牟尼ムニと関係があったりするのだろうか。そもそもを言えば魔王自体が仏教用語だけど。


「むにー」

「マタベエ、さっきおばあからサーターアンダギーを貰ったんだけど食うか?」

「わーい」


 うん、ないな。


 ムニムニはしているけどありがたみも釈迦牟尼の要素も一切感じられない。


 取りあえずサーターアンダギーでも食わせてみよう。


 サーターアンダギーはボリュームがあり、マタベエは一生懸命大きな口を頬張ってリスの様にほっぺを膨らませた。ああもうこの愛玩動物はたまらんよ。

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