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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-25 神格化されたテロリスト、荒木希典の憂鬱

 デミウルゴスの箱の中にあった『星のかけら』、もといただの消費期限切れの金平糖を食べ終えた俺はさんぴん茶を飲みながら適当に呟いた。


「きっと今頃連合軍は大騒ぎだろうなあ。正直どうでもいいけど」


 もしかしたら我那覇総督の離反と旧希典派の襲撃をきっかけに連合軍が瓦解するかもしれないが、現実世界に戻るつもりがない俺にとっては最早どうでもよかった。


「私には事情がよくわかりませんが……旧希典派と新希典派はどう違うんですか?」


 カムナは恐る恐る旧希典派のリーダーでもある希典先生に視線を向け、彼は缶ビールを飲みながら面倒くさそうに言った。


「旧希典派は自分を英雄と勘違いした痛い奴の集まりで、新希典派は理念もなくただ暴れているだけなのに、勝手に後継者だと自称して自分達が英雄だと思い込んでいる痛い奴だよ」


 荒木希典は英雄である、という陰謀論から生まれた反政府勢力でもある新希典派は国家の敵でもあるが、どうやら当人もまた自称後継者の新希典派を嫌悪しているらしい。


「どれだけ崇高な理想があっても変革に暴力を用いる以上テロリストなのさ。その事をわかっていない新希典派は金と権力を奪い取りたい奴らに利用されてるだけだ。仮に変革に成功しても用済みになった後はすぐに見捨てられるだろうねぇ」


 彼はあまりこの件について語りたくないらしく憂鬱な表情をしていた。希典先生は確かにテロリストだけど、テロリストなりに矜持の様なものがある様だ。


 本当にテロリストか冤罪なのかどうかはまだわからないけど。結局希典先生ってどっちなんだろう。


「あなたも人間っぽい見た目だけどひょっとして異世界転移してきたの? なんかお魚落下事件で見かけた気がするんだけど……」

「俺っちはそういうのじゃないねぇ」


 ヒカリはそう問いかけたけれどもちろん希典先生は正体を明かさなかった。それもそのはず、相手は一応秘密警察なので正体を明かすわけにはいかないからだ。


 しかしお魚落下事件とはいったい何だろう。NAROはファフロツキーズ現象の調査でもしていたのだろうか。どう考えても思想警察の仕事じゃない気もするけど。


「まあまれっちでもまれりんでも寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポのパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助でも好きに呼びな」

「わかった、それじゃああなたの事は寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポのパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助って呼ぶね!」


 希典先生は最初に出会った時と同じやり取りをし、ヒカリは乗っかって有名な落語に出てくるクソ長い名前で呼ぶ事にした様だ。しかしよく噛まずに言えるなあ。


(でもそうか、こいつって荒木希典なんだよな。一応身バレには気を付けないと)


 馬鹿馬鹿しいやり取りはともかく、知り合いとはいえNAROに彼の正体が荒木希典だと知られてしまえば面倒な事になる。


 今まではさほど気にしなくてもよかったけど、今後は呼称も含めて気を付けたほうがいいだろう。


「はい」


 むしゃむしゃとサーターアンダギーを食べていたマタベエは悲しい気配を察知し、大きめの物を一つ手に取って寂しげな希典先生に渡した。


「かなしいときはあまいものをたべるといいよ」

「ん? ありがとうねぇ」


 希典先生は言われるがままサーターアンダギーをかじる。酒とは合わないが、それはきっと極上の酔いをもたらすものだったに違いない。

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