4-23 異世界チームと現代チームの合流
「あ、トモキさん! 探しましたよー、ってどうしたんです?」
全員が集落に辿り着いたところでフードコート跡地で会議を開く運びとなり、カムナはようやく再会出来た喜びを満面の笑みで表現したが、
「別にー?」
ブスッとしながらソーキそばをすすっていた俺はつれない返事をしてしまう。ここは愛想笑いでもしていた方がいいのかもしれないけど自分の心に嘘はつけない。
「お、ほおお……なんたるぱふぱふ!」
「はい?」
そのストレスの原因となっているヒカリはカムナのぱふぱふに一瞬にして目を奪われてしまった。仮にもこういうのを取り締まるNAROならば自重したほうがいい気もするけど。
しばらく待っていると他のメンツも続々と現れ、キーアは初めて見る料理に思わずよだれを垂らしてしまう。
「なんだそれ、美味しそうだゾ! それもうどんか?」
「ソーキそばはラーメンでござるよ。あれ、どっちだっけ」
ニアは答えの出ない問題にうんうんと唸ってしまう。ちなみに麵としてはうどんに近いが、定義ではラーメンでもうどんでもそばでもなく沖縄独自のソーキそばというのが正解だ。
「うう、私も食べたいなぁ……じゃない! ねえ智樹、まずは話を聞いて欲しいかな、なんて」
ヒカリも一瞬沖縄のソウルフードであるソーキそばに心を奪われそうになったが、すぐに我に返って泣きそうな目で懇願し、彼女のツレらしき褐色肌の女性も口を挟んだ。
「どうかヒカリさんの話を聞いていただけませんか。悪いようにしませんので」
「……ひょっとしてナジム族か?」
その女性もまたNAROの制服を着ていたが、尖った耳と褐色の肌はどこからどうみてもナジム族だった。
NAROにはいろんな人種がいるけど、まさか連中は異世界の住人も採用しているというのだろうか。
「だろ? キーアも驚いたゾ。しかもこの人はイスキエルダって名前なんだけど、ノーザンホークにいた伝説の騎士と同じ名前だったからもっと驚いたゾ。それに手合わせしたらまあまあ強かったゾ!」
「ええ、私も英雄ヤチレーカの子孫と手合わせが出来楽しかったです」
「ふーん」
どうやらキーアは同じナジム族という事もありイスキエルダさんと既に仲良くなっていたらしい。全体的に気品もあるしヒカリチームでは一番理知的っぽい。
「じー」
「ヒカリさん? 何を……?」
だけどヒカリは何故かイスキエルダさんを凝視して怪訝そうな顔をしてしまう。彼女はクンクンとニオイを嗅ぎ、特に胸の辺りをクンカクンカと嗅いでいた。
「ぱふぱふがなんか違う様な? ちゃんとごはん食べてますか?」
「気遣っていただきありがとうございます、ヒカリさん」
まごう事なき変態的行為にイスキエルダさんは引きつった笑みを浮かべていたが大人の対応で受け流した。さっきの破廉恥行為といい仮にもNAROならこういうのは完全にアウトな気もするけど。
「ええと、そのぉ、あうあう。話聞いて欲しいかなあ……」
「で、この小動物は?」
「デンジャー先輩だとよ。あんまりこいつを虐めるな」
またもう一人、ギターケースを背負ったデンジャー先輩なる小動物っぽい少女は何故かザキラと一緒に現れた。
「ほれ、さっき見つけたとっておきのカセットテープをやるから泣くんじゃない」
「わあ、ありがとう! 沖縄っていいよね、アーティストがたくさんいるから!」
「おう、わかってんな」
けれど彼女達は俺なんてそっちのけで姦しくはしゃぎ始める。
ギターケースを背負っているという事は楽器を嗜んでいるのだろうか。同じ音楽好きのザキラとはそうした理由で仲良くなったのかもしれない。
これでもかと不機嫌アピールをしていると、モブ隊員のエマはおどおどしながら話しかけてくる。
「あのぉ……ひょっとしなくても智樹君だよね」
「んあ」
ヒカリとは違いNAROのエマとは特に絡みがなかったが、彼女の特徴のないモブ顔を見た俺は何かを思い出しそうになってしまう。
誰だっけ、このモブ顔の少女とどこかで会った様な……?
「ほ、ほらこれ! ヒラメちゃん!」
そして不人気からリストラされたキャラクターのキーホルダーを見せつけられ、俺は少しずつ昔の事を思い出し始めた。まさか彼女は!?
「もしかしてエマか。小児科病棟四天王の!」
「やっぱり! 智樹君だったんだ!」
俺が答えを導き出すとエマは手を叩いて喜んだ。核ミサイル攻撃の後、苦楽を共にした親友にして戦友の名前を忘れるはずがない。
いや、うん。実はありふれた名前とモブ顔のせいで一瞬忘れかけてたけどさ。
「あれ、二人って知り合いだったの?」
「ああ、昔ちょっとな」
ヒカリがどこまで知っているのかはわからないが、過去を伝える事は彼女も核ミサイル攻撃の生き残りだと暴露する事でもある。
戦後の広島と長崎の人々がそうだった様に被爆者だって隠している人は大勢いるし、俺の口から言う事ではないだろう。仲が良さそうだからもう知っているかもしれないけど。
「でもなんでエマまでNAROに……」
だけど俺の知っているエマはヒナの書いていた小説やラノベをこよなく愛し、割とこちら側の人間だった。
そんな彼女が表現の規制を行うNAROに属しているという事実は正直理解に苦しんでしまう。
「うん、まあ、いろいろとね?」
「そっか」
けれど俺はおおよその事情を察し追求しない事にした。
NAROは常に死の危険と隣り合わせだが、学歴やコネがなくとも高給取りになれる数少ない職業だ。
俺が生きるために軍事系の進路を選んだように、彼女もまた秘密警察になる事を選んだ、ただそれだけなのだろう。
「ええと、いろいろ積もる話もあるけど、ひとまずここは昔の友達に免じて一時休戦、って事でどうかな」
「仕方ないな、エマの頼みなら」
俺はエマにお願いされようやく議論のテーブルに着く。
この状況ではNAROも悪さをしようがないし今は親友の顔を立てるとしよう。向こうにも事情があるのならば聞く耳持たずっていうのは無いだろうし。




