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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-22 ニライカナイの集落へ

 密林地帯を進むと不自然に木々が少なくなり、集落となっている廃墟のショッピングモールに辿り着いた。


 一応銃を持った警備の兵士はいるがすっかり油断しきってあくびをしており、建物の中への侵入を試みた子供のシーサーを掴んで外に出していた。


 なんだろう、こういう警備員の人と猫がほのぼのとしたバトルをする動画を見た事があるよ。


「戻ってきましたー。お疲れ様ですー」

「ありゃヒカリちゃん、ようやく人間に戻れたんだねー。アイスを用意してるから後で食べるさー」

「ガウ!」

「わあ、ありがとうございます!」


 ヒカリを快く迎える警備員には心のゆとりがありまた物資にも余裕がある事が伺える。慢性的な物資不足の今のご時世で、戦地でアイスを食べるなんて夢のまた夢だっていうのに。


 ショッピングモール内は観葉植物代わりに野生の草木が自生しており、子供たちが琉球時代の民族衣装を着たナジム族と遊んでいた。


 真っ黒に日焼けをしたおじいは昼間から刺身を肴に酒盛りを楽しみ、木の葉マジムンは楽しそうにカンカラ三線を奏でておひねり代わりのつまみを貰っていた。


「すんげぇまったりしてるな。これどういう状況よ」

「見ての通りだよ。私達は異世界転移をした沖縄の人たちと一緒に、こんな感じでゆるーくまったりサバイバルをしているんだ」


 その平和過ぎるにも程がある光景に俺は愕然としてしまった。


 ヒカリはサバイバルをしていると言っていたが、それは俺が知っているサバイバルの概念とは大きくかけ離れていたからだ。


「食料はいくらでもあって危険な魔物もほとんどいないからね。自然災害とか医療の問題とか気になる事はあるけど、戦争から解放されたから皆のびのびとやってるんだ」

「確かにそれはデカいだろうな。いつかは詰むかもしれないけど終末ライフを満喫しているってわけか」


 楽しくても結局はサバイバルだ。


 もし何かがあっても彼らに助けの手を差し伸べる人はおらず、自分達で何とかしなければならないけれどそれにも限界がある。


 この世界の人間がそうなった様に、そう遠くないうちにやがて沖縄のコミュニティも滅んでしまうのだろう。


 けれど俺は彼らが不幸だとはとても思えなかった。


「きっとこれは沖縄の人がずっと希ってきた幸せそのものなんだろうな」

「うん、きっとこれが本当の沖縄なんだろうね。この景色を見られただけでも異世界に来たかいがあったよ」


 ヒカリは平和を取り戻した沖縄をしみじみと眺める。沖縄に縁がある彼女にとってもまたこの景色はずっと見たかったものに違いない。


 たとえ滅びが待ち受けているとしても、その運命を彼らが喜んで受け入れているのならば余所者の俺が何かを言う必要もないだろう。


「禁足地って聞いてましたから怖かったデスケド、これならのんびり出来そうデスネ!」


 ニイノは幸福しかない光景にようやく警戒を解いた。これならばこちらが余程やらかさない限り何も問題はなさそうだ。


「わーい、ぼくもおどっていい?」

「いいさー」


 楽しげな雰囲気に触発され、ずっとうずうずとしていたマタベエもおじいの宴に混ざり木の葉マジムンとカチャーシーを踊り始めた。


 相変わらず落ち着きがないが揉め事に巻き込まれる事もないだろうし、探索している間はお留守番をさせてもいいかもしれない。


「……いろいろ妙な奴らもいるみたいだけど」


 皆で仲良く日々を謳歌する光景は美しい景色に違いないが、見覚えのある軍服の様な制服がどうしても目に入ってしまう。


「お手」

「ハッハッハ」

「お手っ」

「ハッハッハ」


 NAROのモブ隊員らしき少女は子供のシーサーに芸を仕込もうとしていたが、舌を出すだけで全く反応していなかった。


「下に見られてるんじゃない? お手!」

「ハッハッハ!」

「むう」


 しかし様子を見ていた子供が手を出すとシーサーはすぐに反応、動物に舐められたモブ隊員は悔しがってしまう。


「まあいっか」


 この様子を見る限り彼らもうちなーらいふを満喫している様だ。何か騒ぎを起こしているのならともかく平和的に共存しているのなら放置しておこう。


「わあ、ヒカリ! 野生から戻ってきたんだ!」

「やっほー、エマ。迷惑かけてごめんね」


 芸を仕込んでいたモブ隊員は俺の視線に気付き、正気に戻ったヒカリに話しかけた。どうやらヒカリと彼女は知り合いっぽいけど……?


「なんだ、お前いつの間にNAROと仲良くなったんだ。元々社交スキルは高いと思っていたけど」

「え? いや、うーん……」


 秘密警察と親しくなったヒカリを若干呆れながら称賛すると彼女はあからさまに眼をそらしてしまう。


 はて、何か後ろめたい事でもあるのだろうか。けれど彼女は言いにくそうに、


「というか、そのぉ……実は今私NAROで隊長やってるんだよね」

「は?」


 と、訳の分からない冗談を言ったので俺はポカンとしてしまったんだ。

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