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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-15 そんなバナナなトラップ

 人類滅亡後にジャングル化した沖縄の市街地はかなり見通しが悪く、移動するだけでも一苦労だ。


 しばしば複雑な駅の周辺はダンジョンと形容されるが、まさか沖縄の市街地で遭難気分を味わうとは思わなかった。


「おっとっと、歩きにくいなー」

「大丈夫か?」


 リアンは草を掻き分けながら前に進み、木の根っこに躓いてこけそうになってしまう。ニライカナイ編の最大の敵は魔物とかじゃなくてこの複雑な地形かもしれない。


「ずんたかたったー」

「ずんたかたったー」


 しかし森の住人であるマタベエとサスケにとっては楽しい場所でしかなく、生き生きと先へ先へと進んでいく。合流地点というゴールが設定された事で不安が消え去った事もあるはずだ。


「よいしょ、待ってヨー」


 ニイノはヨタヨタと一生懸命追いつこうとしていたが、ちゃんとついていける辺りやはり身体能力の高い半魚人ディーパというわけか。


「楽しそうだな、ニイノも」

「はい! なんだか今は元気いっぱいデス! 金平糖を食べたからでしょうカ?」


 心なしかニイノはいつも以上に張り切っている気がしたのでそう声をかけると、彼女はその理由が先ほどの金平糖にあると言った。


「はは、流石にそれはないって。あれ俺達の世界でも普通に売っている奴だから」

「そうなんデスカ?」


 確かに金平糖は見た目が綺麗なので魔法のアイテムっぽいが、地元の有名な店が作っている贈答用の高級なお菓子なのでそんな効果は流石にない。


 御利益があったとしても、せいぜいSNSに上げたらいいねが増えるくらいだ。


 ただ楽しくても浮かれてはいけない。俺はマップで入念に周囲を確認して危険な物がないか確認したが、何かを言う前にリアンがどこか真面目そうに告げる。


「あまり進み過ぎるなよ。化学兵器系の奴とか不発弾とか、アンジョが遺していったヤバいものもあるかもだし」

「わわ、そっか」」


 ニイノは忠告を素直に受け入れ慎重に歩く。ここはどれだけ美しくても古戦場跡、危険なものはいくらでもあるだろう。


 元々第二次世界大戦で激戦地だった沖縄は、俺達の時代でも普通に不発弾が見つかっていた。


 その辺で兵器の残骸を見かけるこの世界でも大規模な終末戦争があったと考えられるし、そうした忘れ去られた兵器の脅威は至るとこで存在しているのだろう。


「トモキ、ちゃんと確認してくれよ。躓いた石が実は不発弾で足がポーン、ってのはよくある事だからな」

「あ、ああ……」


 リアンはいつになく真剣な様子で俺に忠告する。もしかしたら彼女もかつてそうした事で恐ろしい目に遭ったのかもしれない。


(ひょっとして……)


 彼女は愛理と同じく左腕が存在しないが、もしかしたらリアンはそうした事が理由で腕を失ってしまったのだろうか。


(いや、違うか)


 だけど俺はすぐにその考えを否定する。


 彼女は記憶喪失で自分の左腕がない理由について知らなかったはずだ。なので不発弾で、というのは考えにくいだろう。


 けれどそうした危険は日常として存在していたはずだ。ベトナム戦争でも枯葉剤による奇形児が生まれたし、彼女も実体験として知っているのかもしれない。


 サスケは俺とリアンのやり取りを寂しげに眺めた後、視線を前に戻しそこにあったものをギョッとして二度見してしまった。


「そのぉ……あれも神代の戦争の罠なんでヤンスか」

「どうした」


 まさか彼は今話題に出た危険な兵器の残骸を発見してしまったのだろうか。楽しげな雰囲気が一変、途端に緊張が走る。


「あれは島バナナだな。小笠原諸島から輸入して根付いた沖縄の特産品だ」


 だがそこにあったのはとても美味しそうな島バナナだった。俺はそれ以外に説明しようがなかったので仕方なく小ネタを挟んでおく。


 島バナナは等間隔で並んでおり、終点には糸でくくり付けられた棒が一点で支える大きなカゴがあった。よくある鳥を捕まえる時の罠である。


「サルでも捕まえようとしてるのか?」

「サルでもかからんわ」


 リアンは古典的にも程がある目の前の罠を呆れながら眺め、俺も一安心して警戒を解く。


 昔話でしか見た事がない、現実で用いても普通に失敗する上に法律的な問題があるので使えない罠の代表的な奴だが、どう考えてもこれは人類の負の遺産ではないだろう。


 バナナも籠も最近設置された物っぽいし住民の魔物が仕掛けたのかもしれない。文明水準が前時代のまま止まっているこの場所では古典的なトラップも現役で運用されている様だ。


「おいしそー」

「アラ」


 けれどマタベエはどう考えても引っかからないはずの罠に向かう。


 彼は美味しそうなバナナを拾いながら籠に向かっていったが、ニイノは特に何を言うでもなく友達を眺めていた。


「何も言わないのか?」

「なんか可愛いデスカラ!」

「そうか」


 俺が問いかけるとニイノは小悪魔スマイルを浮かべた。オチはわかっているけど可愛いから俺も黙っておこう。


「わー!」


 だが俺達の予想に反し――マタベエは籠に辿り着く前に宙に浮いてしまう。どうやら籠の周辺に網があった様だ。


「アララ?」

「あらまあ」


 こういう方向で来るとは思わなかったがこれもこれで可愛らしい。


 マタベエは網で引き揚げられた魚の様に空中をブランブランと揺れていたが、困り顔の彼は取りあえず手に持ったバナナを剥いてパクンと食べた。


「おたすけー」

「まったく。サスケ、助けてやれ」

「あ、はい。風魔の刃、ヒューザ!」


 リアンは間抜けなマタベエを助ける様に舎弟に指示を出し、彼女は風魔法の手裏剣を投げて網を切ろうとした。


「やーん」


 網は結構頑丈だったので一撃では切れずマタンゴさんはぐるんぐるんと揺れてしまうも、そんな状況でも彼はバナナを食べ続けていたのでその光景はコミカルというよりほかなかった。


 うーん、結構頑丈だな。どうやって助けるべきか。

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