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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-9 禁足地に住む者からの警告

 ニライカナイに来て早々怪奇現象未満のぞわぞわする体験をし、早くこの場所から離れるべきだと俺は結論付けた。


「じー」

「ん」


 だがふと視線を感じ、目線を下に降ろすと木の葉マジムン達が俺をガン見していた。


 彼らが怒っている様に見えるのは気のせいではないだろう。


「どろぼう! おそなえもの!」

「それウカミのおそなえもの! だめ!」

「あ、いや、これは違うんだけど。うーん」


 どうやらマジムンは供えられたM9を回収した俺を泥棒と思ったらしい。


 彼らはピュアな瞳でやんややんやと怒り出し、不届き者扱いされた俺は実にいたたまれない気持ちになってしまった。


 元々は俺の物だしむしろ泥棒された側なんだけど、正直に言ったら君達が悪いって言ってるみたいで可哀想だしなあ。とにかくちゃんと説明して理解してもらうべきだろうか。


「おそなえものだめ! クルガネザーシーにたたられる!」

「おそなえものだめ! ミミキリボンズにたたられる!」

「クルガネザーシー? ミミキリボンズ?」


 彼らは聞き馴染みのない言葉で糾弾し、少し思案して俺はその響きから沖縄の土着の神や妖怪の事だと考えた。


 確か沖縄の有名な民間伝承でそういうのがあったっけ。漢字で書くと黒金座主クルガネザーシー耳切ミミキリ坊主ボンズとなり、妖怪になった高僧の言い伝えだったはずだ。


 クルガネザーシーもミミキリボンズも同一の存在であり、民間伝承の宝庫である沖縄の中でも一番悪くて知名度のある妖怪だけど、ニライカナイでは神様ウカミとして信仰されているらしい。


「ぶきもったらだめ! クルガネザーシーにおこられる!」

「たたかったらだめ! ミミキリボンズにのろわれる!」


 しかしクルガネザーシーについて考察をしていると、彼らが叫んだ言葉で俺は我に返ってしまった。


 どうやらマジムン達はこれが武器だと認識したうえで祠にお供えをしたらしい。


 あるいはこれが災いをもたらすものだとわかっていたので、祟りが起きない様にお祓いをしようとしたのかもしれない。


「……そっか、そうだよな」


 ちゃんと意味を理解していなかったとしても、マジムン達は神様の教えという形で平和を護り続けていたのだろう。


 この地で幸せに暮らしていた彼らにとってこの武器はとても恐ろしい呪物なのだ。だけどだからといって生命線でもある武器を手放すわけにはいかなかった。


 ギ、ギギギ……。


「ッ!?」


 だがロボット兵器から歪な軋む音が聞こえたので俺はすぐに身構える。てっきりもう動かないと思っていたがまさかまだ機能しているのか。


『……け……出ていけ……』


 ロボット兵器はスピーカーから割れた音を出し、ノイズ交じりのしわがれた老人の声はまるで怨霊のうめき声の様だった。


『沖縄を穢すな……凪を乱すな……』


 恨めしい声を出すロボット兵器は攻撃をしてこない。


 しかし相手が無機物の鉄塊だというのに、俺は強い怨念が籠った呪詛の声で呪い殺されるのではないかと思ってしまった。


 バチッ!


 ロボット兵器は回線がショートしたのか、スパークを放ち機能を停止してしまう。


 俺の背中にはじっとりとした嫌な汗が流れ、呼吸が出来なかった俺は気配の消失と共に大きく息を吸って酸素を取り込んだ。


「わー! クルガネザーシーがおこってる!」

「わー! ミミキリボンズがおこってる!」


 恐れをなしたマジムン達は一目散に逃げだし結果的に事なきを得た。


 けれどそういうのを抜きにしても、出来れば話し合ってちゃんと彼らの理解を得たかった俺は落胆してしまう。


 今の現象が一体何だったのかはわからない。


 けれどどうやら俺はこの場所にいる何者かに歓迎されていないらしい。


「すみません。土足で踏み入って……用が済んだらすぐに帰りますから」


 だけどこの世界の人々の平穏を護るためにもやらなければならない事がある。


 俺はニライカナイに眠る何者かの冥福を祈り、誠心誠意非礼を詫びて心を強く持った。

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