4-4 春風が見せた幻と、火傷を負った老紳士とマタンゴさんの夢
――聖智樹の視点から――
そこは死後の世界の様に白一色だった。
どうしてここにいるのかもわからないまま、俺は何もない白い世界を歩き続ける。
「……………」
しばらく進むとマタンゴさんがトコトコと歩いて俺を追い抜いた。
全身傷だらけのマタンゴさんはどこかを目指していた。
俺は迷わず彼女の後を追う。
理由はわからない。
なぜ『彼』ではなく『彼女』と思ったのかも。
けれど俺はそうしなければならない。
彼女が向かう先には一本の桜の樹があり、音のない世界で花弁が静かにはらりはらりと舞い落ちた。
桜の樹の下には小さなキノコが群生しており、それは人の形をしているようにも見えた。
そこでは火傷を負った白髪の老紳士が寂しげに佇んでおり、マタンゴさんは駆け出して迷子の子供がようやく親を見つけた時の様に抱き着いた。
老紳士は我が子を慈しむ様に優しく傷だらけのマタンゴさんを撫で、マタンゴさんは幸せそうに眼を細めて涙を流す。
蒼鬼の様に慈悲深い眼差しをした人は誰だろう。
マタンゴさんはどうしてこんなに悲しそうなのだろう。
だけど思い出す必要はない。
何故ならばこの世界は所詮春風が見せた泡沫の夢なのだから。
桜の樹は燃え上がり、花弁がはらりはらりと舞い散る。
俺にはそれが、桜が泣いている様に見えたんだ。
世界は光に包まれ、場面が転換する。




