3-196 交錯する二つの世界
意識を失っていたあたしが最初に感じたのは眩い光だった。
暗闇の六天街に光が存在するわけがない。
ここはきっとあの世なのだろう。
「つんつん」
「フガ?」
だからこの木の枝でつんつんしているキノコやフガフガ言っている何かはあの世の住人のはずだ。
子供向けアニメの魔物っぽい見た目なので、もしかしたらギリここは天国なのかもしれない。
「おなかすいてるのかな?」
「フガ!」
大きな口の何かはオレンジ色の何かを手に取り、倒れたあたしの口にあてがう。
はむはむと齧るとほのかに酸味がある優しい甘さを感じたので、これはきっとビワなのだろう。
(美味しい……)
ビワなんてそんなに好きじゃないけれど、瑞々しい果実はまるで天界の果物の様だ。
一口食べるごとに満たされた気持ちになり、たとえ神様にリンゴを差し出されてもあたしはこちらを選ぶだろう。
でもこの楽園に不釣り合いな庶民的なニオイは何だろう。
海鮮系の豚骨……? ちゃんぽん?
「ずぞぞぞぞー!」
「ねえ、オトハ。希典さんからちょっと手を貸しておくれって救援要請出てるんだよね。なんで私達はのんきにちゃんぽんを食べてるの?」
「腹が減っては戦が出来ぬって言いますからね! とにかくまずは食べましょう!」
「ロボットにも適用されるの、それ」
顔を持ち上げると目の前にはオープンテラスのちゃんぽんチェーン店があり、そこでバスガイドと鉄道の制服を着た女性が猛烈な勢いでちゃんぽんをすすっていた。
その訳の分からない光景にあたしはこれが夢だと判断する。
死の間際の世界だとしても出来ればもうちょっと綺麗なものが良かったのに。
「あ」
「あ」
そのまま見つめているとあたしは二人の女性と目が合ってしまい、女性達はしばらく目をぱちくりとさせた後ひそひそと話し合った。
「どうします!? タカオさん!? これお客様ですか!?」
「だ、だよなあ……マジ?」
「よし、あれやっちゃいましょう! 一緒にやっちゃいましょう!」
「ええ? 本当に?」
あたしは二人がなんでこんなに騒いでいるのかわからなかったけれど、彼女達は何かを決めてから目の前に立ち、
「「夢の異世界、崎陽ムゲンパレスにようこそ!」」
素敵な笑顔でそんなわけのわからない事を言ったので、
「は?」
と、あたしはそんなリアクションしか出来なかったんだ。
「ううん……一体何が……」
「太陽の光……? 温かい……」
しばらくして意識を取り戻したクスノキや六天街の住民たちが続々と現れ、あたしはこれが現実であると理解した。
「そっか、辿り着いたんだネ」
だけどゼンだけは驚いた様子はなく、どこか感慨深そうにこの不可思議な光景を受け入れていた。
彼女は前にこの場所に来た事でもあるのだろうか。
まあどうでもいいかな、ポカポカして気持ちいいし。
幸せな夢っぽいし、覚める前にもう少し眠っていよう。




