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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-193 フロンティアスピリットウーマンとの邂逅

 遊覧船は白波を立てながら紺碧の海を疾走し、海の彼方に浮かぶ失われた楽園に向かう。


「おほー! 凄いゾ~!」

「だからなんでこんなに揺れるんだ、おえっぷ……」


 内陸部に住むキーアは船に乗るという貴重な体験に大はしゃぎをしていたが、ザキラはやはり船酔いをしていた。ガサツに見えても一応お嬢様だからかな。


「ニライカナイってどんな場所カナ~」

「たのしいばしょだといいねー」


 ニイノとマタベエもすっかり観光気分でまだ見ぬ場所への旅を楽しみにしていた。


 実際かつては日本でも屈指の観光地だったので、その気持ちはわからなくもない。


 ニライカナイは現実世界では沖縄に相当する場所であり、希典先生いわく第一部のクライマックスになるとかそんな事を言っていた。


 彼の地に眠る魔龍はかつて世界を呪いの炎で焼き尽くしたという。


 けれどその正体が何であるのか、俺は既になんとなくわかっていた。


 危険な事には出来るだけ首を突っ込みたくないが今回ばかりは事情が違う。


 今の時代に生きる人のため、人類の負の遺産を人知れず消し去るために多少は無茶をしなければならないだろう。


 黙り込んだ俺が気になったのか、海を眺めていたリアンはそれとなく俺に声をかけた。


「トモキ、怖いのか」

「……まあな」


 隠していても仕方がないので俺は正直に伝えると彼女はそっか、とだけ呟いて、しばらく沈黙する。


「ま、気楽に行こうぜ。案外杞憂に終わる事もあるかもだし。余裕があれば宝探しを手伝ってくれ」

「ああ」


 リアンはニカッと笑い俺を気遣った。実際負の遺産が経年劣化で既に使えなくなっている可能性も十分にあるし、回収するだけで事足りるかもしれない。


 アンジョの子孫がずっと使わなかったという事は、何らかの理由でずっと使えなかったとも言い換える事が出来る。


 精密機械の塊でもある近代兵器はメンテナンスをしなければすぐに駄目になる。


 管理者権限を持つ俺がいるから騒ぎになっているが、本来はもう脅威と呼べるものではないのかもしれない。


 ザ、ザザッ。


『……っ! だっ……』

「ん?」


 心を静めていると波音に混ざって雑音が聞こえてくる。


 どうやらそれは操舵室からだったが、ヒョウスベさんは無線を操作しスピーカーの音に耳を澄ました。


「お前さん誰ダ? どうしたンダ?」

『……げろ! 逃げろッ! 危険だッ!』

「おい? 何があっタ!」

「どうしました?」


 だが無線から聞こえる声は切羽詰まっており、ただならぬ様子である事が窺い知れる。もしかして周辺の船で何かトラブルがあり救援要請をしているのだろうか。


『逃げろッ! フロンティアスピリットウーマンがッ!』


 けれど無線から聞こえたダンディな声は初めて聴く不可思議な単語を叫んだ。


 その残念なイケオジっぽいダンディな声はどこかで聞いた気がしたけれど、一体何が起こったのかさっぱりわからなかった。


「フロンティアスピリットウーマン?」

「フロンティアスピリットウーマン? ってなんダ?」


 俺とヒョウスベさんは顔を見比べたが、彼もフロンティアスピリットウーマンという単語の意味を明確に理解する事は出来なかったらしい。


 てっきり俺達の世界には存在しない概念かと思いきや、こっちの世界の住民である彼も知らない様だ。


 そういえばモッコスでボランティアをしていたガスマスクの女性がフロンティアスピリットウーマンのせいでどうのこうのって言っていた気がする。もしかしてあれと関係があるのだろうか。


「ウホウホーッ!」

「ちょおい、ストップッ! 野生化するな! 誰か止めてー!?」

「ん? なんかゴリラの唸り声とそれをどうにかしようとする背後霊の声が聞こえるな」


 しばらく思案しているとどこからともなくゴリラの唸り声が聞こえてきた。


 だけど何故海の上にいるのにゴリラの声が聞こえるのだろう。この世界にはそういうゴリラがいるのだろうか。


「あちゃー、こういう展開か。まあ誤差みたいなものかな」

「こういう展開? ってなんですポ?」


 ただ希典先生だけは何が起こるのか予想出来ていたらしい。


 のんびり寛いでいたモリンさんは不思議そうに尋ねると、彼は水平線の向こう側を指差した。


「アレ」

「アレ?」


 指を指した先には豆粒の様な何かがあった。


 それは次第に大きくなりイカダであると理解したけれど、その後俺の思考はフリーズしてしまう。


 何故ならばそのイカダは本来イカダが進むはずではない速度で動いていたからだ。もしもあれが水中版UFOのUSOだとしても驚かない。


「ウッホー!」


 そのイカダの上には原始人が乗っていて山ほどカニや魚をイカダの上に乗せていた。きっとあれは漁で得た戦利品に違いない。


「フロンティアスピリットウーマンだッ!?」


 俺はその原始人を見て思わずそう叫んでしまった。


 フロンティアスピリットウーマンが何なのかわからないが、これほどまでに野性的な女性は見た事がないのでこれはそう形容するしかない。


 彼女は既存の概念では説明出来ない存在だ。


 目の前の物体はあらゆる常識を破壊し、フロンティアスピリットウーマンという新たな概念を生み出したのだ!


「って、こっちに来る!?」

「ぎゃあーすッ!?」

「のわああ!?」


 爆走するフロンティアスピリットウーマンは目の前の障害物を一切気にせず突き進む。


 イカの遊覧船はそれなりに大きいはずだったが、くるくると回転しながら空中に弾き飛ばされてしまった。


 王子が転がすカタマリに吹っ飛ばされる人達はこんな気持ちなのだろうか。


 ちょっとマニアックだからわからないかな、このネタ。ちなみにとあるなろう作家はこの前出た最新作をトロコンしたとかなんとか。


 空中浮遊を楽しんだ後はそのまま海に真っ逆さまに落ちてしまい、強い衝撃を受けた俺はそのまま意識を失ってしまった。

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