3-188 どこか憎めないちょっとだけ優しいエドラド様
火山の噴火に伴いマラソン大会は中止になってしまい、本来の目的であるポロビーさんの優勝も当然うやむやになってしまったが、それはさておき俺達は被災地の復興作業を手伝う事になった。
ただアル中教師の執念がもたらした奇跡により火砕流による人的、物的被害はほとんどなかった。
文化財級のアンジョの遺構は埋まってしまったそうだが、正直こちらに関してはどうでもいいだろう。
「急ぐデシ~! ギャグマンガみたいに次の日には元通りにするデシ~!」
猫の手も借りたいとは言うが、工業民族のナーゴ族は重機を使いつつ猛スピードで復旧作業をしていた。
俺は頭に包帯を巻いていたユキチと目が合ってしまうが彼女はバツが悪そうに眼をそらしてしまう。
思う所はある様だが、命令が下されていない以上今は何もするつもりはないらしい。
「ふー……労働って素晴らしいわねー」
「給料は出ないけどなー」
「「HAHAHAッ!」」
一方何度か見かけた怪しいガスマスクの一団もボランティアに参加しており、慣れた手つきで物資を運んでいた。
モッコスの時もそうだったけどやっぱりプロの動きだ。
なんとなくブラックな職場環境っぽいけど、楽しそうだし気にしないでおこう。
「んしょ、んしょ」
「おう、サスケ」
「アニキ、お勤めご苦労様でヤンス」
サスケは今日も今日とて健気に頑張っていた。
俺はカザンマ編のMVPでもある彼を手伝う事にし、一緒に物資を黙々と積み込んだ。
「聞かないでヤンスか?」
「何を」
「ユキチと戦った時のいろいろとか」
「別に」
「そうでヤンスか」
俺は空気を読んで短く受け答えをした。サスケにも言いたくない事はあるだろうし、無理に聞くものでもないだろう。
「おーう、頑張ってるかサスケ。ホレ、余った奴だ」
「エドラドさん!」
サスケと一緒に汗水を流して働いているとエドラドが差し入れを持ってきてくれた。
彼がそんな事をしてくれたのも驚きだったが、差し入れが九州民のこよなく愛するス〇ールだったのでさらに驚いてしまう。
「すげぇ、こっちにもあったんだ。しかも瓶タイプって。ちなみに俺の分は」
「あると思うか?」
「だろうな」
やはりエドラドは俺の事がとことん嫌いらしく、何を馬鹿な事を言っているんだと鼻で笑っていた。けれどその憎たらしさが愛おしく思えてくるよ。
「お前意外といい奴だったんだな。ちゃんと部下にも差し入れしてるし」
「俺の優しさはただのビジネスだ。こうしてちまちま面倒見ていれば信頼が手に入る。信頼は一番手に入れるのが難しいがどんなビジネスでも一番売れる商品なんだよ」
君主でもあり経営者でもあるエドラドは説教をする様にビジネス論を語った。
やっぱりかなりしっかりした考えを持っているし、遊び惚けているドラ息子って言うのはただの噂だった様だ。
強かでドライな部分もあるエドラドは敵も多そうだし、評判を下げるためにそういう噂が流れたのかもしれない。
「……まあいい。一応ユキチを殺さなかった事に関しては感謝してやる。これで十分だな」
「え、マジ? っとと」
「アンジョなんぞに恩を売りたくなかっただけだ」
エドラドはかなり嫌そうだったが俺に九州民のソウルドリンクを投げ渡す。
炭酸飲料を投げるものではないが、三日で恩を忘れる猫のくせに義理堅いんだな。
「ふう、この味だよ。沁みるねぇ……」
俺は久しく飲んでいなかった微炭酸の乳酸菌飲料を飲んだ。
世の中にはいろんな乳酸系の炭酸ジュースがあるけどやっぱりこれに勝るものはない。
「おう、いいもん飲んでんな」
「あっ」
けれどそこに泥棒猫リアン・ミャオが現れ、俺が持っていたス〇ールを奪い取りゴクゴクと飲み、ぷひゃあ、とオッサンの様に息を吐いた。
「う~ん、これが神様の飲み物かぁ!」
「おい、問答無用で人の物を奪い取るな! あとしれっと間接キスするなって!」
「えー? なに、間接キスくらいで照れてるのかお前? 見事な童貞だな」
「悪いか!?」
俺はエドラドがいる事を忘れ絡んできたリアンとじゃれ合ってしまう。
当然目の前でイチャつかれエドラドはブスッとした顔になってしまった。
「じゃあな」
「あ、うん……」
ううむ、これまた上がりかけた好感度が下がったかな。
別に無理をして仲良くする必要もないものの、せめてお前の幼馴染をどうこうするつもりはないって事だけはちゃんと伝えておきたいんだけどなあ。




