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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-184 VS神武不殺『銭猫』ユキチ

 参加者たちはパニックになりつつも皆の誘導によって避難場所であるゴール地点へと急いで向かっていたが、その中で俺達だけは武器を構えて忍びと睨み合ってたのでさぞかし奇怪に映っていたに違いない。


 忍び装束になったユキチは印象がガラリと変わり、ウザ後輩からいくつもの修羅場をくぐった冷酷な戦闘マシーンに変貌してしまった。


 これほどまでに激しく揺れ噴煙が立ち上っているというのに彼女は一切怯えている様子はない。ユキチは自らの死を全く恐れていなかったのだ。


「なあユキチ、今はそれどころじゃないだろ。見てわからないのか!?」

「何言っているんデシ。アンジョを暗殺するにはこの上なく最高のタイミングデシ。この世界ではどんな理由があってもアンジョを殺すのは絶対にNGデシ。だから絶対にバレない様に殺さないといけないデシ」

「忍びとしては正しい判断でヤンスが、ちょっと悲しいでヤンス」


 災害の混乱に乗じて暗殺を行う。善悪はさておき理にはかなっているだろう。


 しかし親しい人間と殺し合いをするというのはやはりどうにも堪えるものがあり、サスケは小太刀を構えながら寂しげに語り掛けた。


「ユキチさん、なんでアニキを殺そうとするんでヤンスか」

「別に理由なんてないデシ。報酬が貰えるからビジネスとして殺す、それだけデシ。忍びってそういうものデシ。ユキチはお金がたくさん欲しいのでガッポガッポ稼がないといけないデシ」


 お金が欲しいから殺す、俺とは違い彼女はその一線を越える事に何ら抵抗はないのだろう。


 きっとユキチは今まで金と引き換えにいくつもの命を淡々と処理をしてきたはずだ。


「お前も仮にも元クウガ忍軍なら悲しいとか馬鹿馬鹿しい事は言わないでほしいデシ。感情を殺して雇い主のために命を捧げて目的を遂行する、それが忍びデシ」


 ユキチは傀儡としての役目を全うするため親しい人間を切り殺す決断をし、見覚えのある構えを取った。


「立身新流……こっちにも伝わってたんだな。お前は何者だ?」


 立身新流は中津藩の藩外不出の古武術であり剣道の原型にもなった剣術だ。


 俺にとっては馴染み深いが、その洗練された所作から彼女がかなりの手練れである事が窺い知れる。


「ユキチはユキチデシ。ただクウガ忍軍にいた頃は『銭猫』とか呼ばれたりしてたデシね」

「銭猫ッ!?」

「知ってるのか、サスケ」


 サスケは銭猫という通り名を聞いて顔色を変えてしまう。


 俺はクウガ忍軍という組織自体あまり知らないが、彼は青ざめた顔で説明をした。


「『銭猫』ユキチは神武不殺と呼ばれた凄腕の忍びでヤンス。金を払えばどんな困難な任務でも完遂し、それでいて標的以外は殺さなかったのでそんな異名が付けられたんでヤンスが、まさかユキチが銭猫だっただなんて……!」

「解説ありがとうデシ。でもその情報には補足情報があるデシ」


 ユキチはウザキャラを捨て、忍びの眼差しになり静かな殺意を向ける。


 幸いにして彼女は不必要な苦しみを与える事なく殺してくれるつもりの様だ。


「忍びとしてはポンコツなユキチが標的以外を殺さなかったのは矜持とかそういうのじゃないデシ。そんな余計な事をしなくても任務をパーフェクトに完遂出来るくらい、ユキチが滅茶苦茶強かったからデシ。給料が出ないサビ殺しなんて疲れるだけデシからね!」


 ヒュッ――!


 狩りをする肉食獣の目つきになったユキチは一切の感情を殺し、無我の境地で斬りかかる。


 その刃には憎悪も恐れも一切存在せず虚無だけが宿っており、それはまるで僧侶が座禅をしている人間に警策を振り下ろしているかの様だった。

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