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憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


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72話 仲間

サラが、兵舎に行くよりも少し前のこと。


レオンたちが宿泊しているの宿屋の一室で、彼らは、作戦会議をしていた。


「兵士たちは全員落ちました。」


「ふむ、それは良かった。」


「金銭だけで雇われていた兵士には、さほどの忠誠心はなかったようです。」


報告に来た騎士が、その様子を語った。


レオンの指示により、赤茶色の髪の兵士の制服を取り上げたが、下着姿では可哀そうに思った騎士が、自分のために用意していた毛布を掛けてやった。


食事は、農家の主婦に頼んで作ってもらった温かい食事を食べさせた。


兵士たちはロープで縛られたままなので、騎士たちが自らの手で食べさせた。


舌を切って自害しないか、それが唯一の心配ごとであったが、幸いなことに、彼らにはその意思がなかったようで、出された食事は残さず平らげた。


翌朝の朝食も同じで、兵士たちは空腹に悩まされることがなかった。


レオンが来て、赤茶色の髪の兵士はレオンから服を返してもらったが、きれいに畳まれて返された自分の服を見て驚いた。


この男は、自分を殺そうとしていた敵に、温かい食事を与えるだけでなく、ここまで温情をかけるのかと。


レオンたちが去った後、昨日、服を取り上げた騎士が、兵士たちに言った。


「お前たちは、捕まってしまったが、まだ誰も殺していない。たぶん、罪もそんなに重くはないだろう。だが、国王に剣を向けたとしたら、話は別だ。この国でも、王族に刃を向けたものは死罪と決められているからな。お前たちはグランテリアの国王だと聞いたにも関わらず、陛下を殺そうとした。」


「いや、待ってくれ、あれは護衛騎士だと思っていたからだ。」


「陛下はお前たちに、グランテリアの王だと名乗ったよな。聞いてなかったとは言わせない。」


「ううっ・・」


「休戦中で、しかも和平交渉の最中にも関わらず、国王を殺害しようとした罪は、国家反逆罪に値する。死罪は免れないだろう。」


「国家反逆罪?」


「死罪?」


兵士たちの間に動揺が走った。


「だがな、俺たちの国王は、非常に懐が広くお優しいお方なのだ。お前たちが全てを包み隠さず白状すれば、国王への不敬は不問にすると言っておられる。今から一人ずつ尋問するから、どうするべきか自分で考えろ。」


兵士たちは皆、きちんと畳まれた兵士の服を、レオンが返すところを見ていた。


そして、レオンを殺そうとした自分たちに、昨夜も今朝も温かい食事を与えた。


グランテリア国王の、懐の深さを見た気がした。


それから、五人の騎士が、兵士をそれぞれ一人ずつ、各々別の場所で尋問した。


皆、尋問される場所が違うので、仲間が何をどう答えているのかわからない。


自分一人が正直に話さなかったら、結局損をするは自分だけではないかと思うと、兵士たちは、尋問に包み隠さず答えた。


サンチェス公爵の私兵であること。


鷲城にいる全員を殺して死体を持って帰るように命令されていたこと。


ルークに濡れ衣を着せる予定だったことなど、聞かれるままに答えた。





「サンチェスに関しては、証人がそろったが、ゴメスについては何かないだろうか。」


「聖女様の証言の中に、ジェイコブという男がいます。その男に助けられたとか。その男は、右目にホクロのある男に雇われたと言っていたそうです。」


「その男なら、ゴメスと繋がっている。酒場で聖女様の話をして、鷲城の地図を渡されていた。」


「そこを突くか。」


レオンと騎士たちが話し合っていると、ドアをノックする音が聞こえた。


皆は話を止めて耳を澄ませた。


「こんばんは。カイゼルです。お話があって参りました。」


レオンも、セブもディックも、よく知っている声だった。


だが、用心しながらドアを開けた。


そこにはカイゼルがいて、後ろには大柄の男が立っていた。


皆に緊張が走った。


「あの、お話があるのは私ではなくて、後ろにいるルークなんです。」


ルークが皆によく見えるように前に出た。


「ルーク? お前、生きていたのか?」


真っ先に声を上げたのはレオンだった。


「はい。生きていました。実は、お力をお借りしたくて、カイゼルに案内してもらいました。」


「力とは?」


「セブの力を貸して欲しいのです。」


「まずは、セブの力が何故必要なのか、話を聞こう。結論はそれからだ。」


ルークは、ゴメス侯爵邸の地下牢に、無実の罪で閉じ込められているトビーの妹を救い出したいことを話した。


「牢屋には、大きな錠前がかかっているんだ。俺一人では無理だと思った。だから、カイゼルに頼んで、ここまで連れてきてもらった。」


「なるほど、錠前をはずすには、セブの力が必要だと思ったのだな。」


「そうです。」


「セブ、できそうか?」


「はい。大きな錠前の方が、意外と簡単です。」


「では、早速行こう。セブだけでなく俺たち全員で。」


「えっ、あなたも行くんですか?」


国王陛下が、平民一人を救うために、危険に身を晒すなんてあり得ない、とルークは思ったのだが、レオンは、ルークが思っていることなど、これっぽっちも考えていなかった。


「もちろんだ。これは俺たちにも渡りに舟だからな。それに、妹を守りながら移動するには、人数が必要だ。俺たちがいれば、切り抜けられる。今から俺たちは仲間だ。」


「ありがたい。では、お言葉に甘えることにします。皆の強力に感謝します。」


ルークとレオン、騎士5人の合計7人は、ゴメス侯爵邸に向かった。


塀にロープをかけてよじ登り、反対側もロープを伝い降りた。


地下室に向かって身を屈めて歩いた。


屋敷の入り口には、警備員がいる。


先ほどルークが来たときは、小石を投げて、気を反らせている間に入ったのだが、今は7人、多すぎた。


「ここは私が。」


騎士の一人が警備員を背後から襲い、当て身を食らわせて気絶させた。


ルークは、グランテリアの騎士と一緒に救出に来れて、本当に良かったと、心から思った。




何事にも疑り深いゴメス侯爵は、用心棒を雇っていた。


私兵をもつことは、特別なことがない限り、認められていない。


サンチェス公爵は、なんだかんだと理由をつけて、ほぼごり押しに近い状態で私兵を持つことを許されたが、ゴメス侯爵はサンチェスほど強く出れず、私兵を持てなかった。


その代わりとして、用心棒を雇っていた。


彼らは、用がないときは部屋で飲み食いして過ごしていたので、レオンたちが侵入してきたことに気が付かない今も、部屋の中にいた。


夜遅い時間になると、侯爵邸で働く人々も各自の部屋で過ごしていることが多く、廊下は警備員がうろついている程度だった。


ルークたちは、警備員を制圧しながら前に進み、警備員が手にしていたランプを手に取り、地下牢へと進んだ。


地下牢の中を見ると、トビーの妹ジャスミンが、壁にもたれて座り、力なく項垂れていた。


「ジャスミン、助けに来たよ。」


ルークが囁くように声をかけた。」


「えっ? ルーク?」


「もう大丈夫だ。ここから出るよ。今、仲間が鍵を開けるから。」


セブは、ヘアピンを取り出して、鍵穴に突っ込み、ガチャガチャと回した。


ガチャリと音をたたて、錠前が外れた。


「さあ、おいで。出よう。」


「ありがとう。」


ジャスミンが牢屋から出るところを、皆が幌笑みながら見守っていると、用心棒たちの大声が聞こえた。


「いたぞ、こっちだ。捕まえろ!」


ルークもレオンも、彼の騎士たちも、毎日の鍛錬で鍛え上げた力と技を持っている。


闘いに負けるような男たちではない。


次から次へと現れるゴメス侯爵が雇った用心棒たちを、戦闘不能にしながら前に進んだ。


結局、用心棒たちは、、騎士たちに守られたジャスミンに、指一本さえも触れることができなかった。


レオンたちは、誰一人傷を負うことなく庭に出た。


用心棒たちの襲撃がなくなり、これで終わりかと思ったが、まだ戦っていない用心棒は、二階のバルコニーから、弓矢でルークたちを狙っていた。


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