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憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


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62話 R

話は少し遡る。


レオンが、王妃ソフィアと二人きりの密談を交わしたその夜、彼は幼い頃の夢を見た。


ティータイムを楽しんでいるテーブルに、レオン、国王アシュラム、王妃イレーヌがいて、三人で戦争について話し合っている。


「父上、ワーレンブルグとの戦争が、いつまでたっても終わりませんが、終わらせることはできないのですか?」


「終わらせようと思ったら、ワーレンブルグを一気に制圧し、戦争に勝利すれば良いだけのことだ。」


「それができないから、終わらないんでしょ。」


「まあ、アシュラムったら、もっとちゃんと教えてあげないと。レオン、敵国を一気に制圧したとしても、国民が新しい王を受け入れなかったら、戦争は終わったとは言えないのよ。新しい王の政治に不満を持てば、テロ活動やら、反逆やら、結局また、争いが起こってしまうわ。」


「それでは、戦争に勝利した後の、国民へのフォローが大切だと言うことですね。」


「ふふふ、そうね。よくわかってるじゃない。」


「だけど、ワーレンブルグとは力が互角で、このままでは終わりませんよね。」


「そうね。戦争を止めたいからと、こちらが手を引くと、一気に攻め込まれてしまうわ。結局被害が拡大するだけだから、ずっと目を光らせないといけない。」


「まあ、チャンスはあるがね。」


「父上、チャンスとはどのような?」


「王の代替わりの時。現王が戦争を望んでいても、その息子が望んでいるとは限らない。」


「それだけじゃないわ。政権交代のときもチャンスね。今の権力者が失脚して、新しい権力者に成り代わるとき。ふふふ、ワーレンブルグにそんなときが来ればいいわね。」


目が覚めたとき、レオンは王妃ソフィアと話した内容が、この夢を見させたのだと思った。


同盟後の食料支援、研究所の設立と技術援助のことは伝えている。


国王はちょうど代替わりだ。


王妃は、終戦、同盟に賛成だと言った。


しかし、サンチェス公爵とゴメス侯爵の二大権力者が、戦争を続けたがっているとも。


ならば、政権交代を待つのではなく、政権を交代させてやる。


目指すは二人の失脚だ。


だが、王妃ソフィアが言ったことで、一つとても気になることがあった。


「聖女を二ヶ月間、この国に留め置く提案をしたのはサンチェス公爵なのだ。その真意はわからないが、何か動きがあるかもしれぬ。気を付けた方が良い。」


二ヶ月の間に何かが起こる。


レオンは些細な情報でも、漏らさぬようにと、騎士たちに伝えた。




レオンは、潜入組に噂を広めるように指示を出したが、これは、グランテリアの悪い噂を消すことが目的で、誰か特定の人物を名指しするものではなかった。


誰でも自由に出入りできる酒場で、平民姿の騎士たちが、貴族の名前を出して噂を流していることがばれれば、即刻打ち首になっても文句は言えない。


だから、そのような危険を冒させるつもりはなかった。


だが、貴族が貴族を名指しで批判するとなると、話は別だ。


波に乗っている今なら、もっと国民感情を揺り動かすことが、できるかもしれない。


レオンは、ワーレンブルグの中で、大きな力を持つハワード公爵に手紙を書いた。




ハワード公爵家の当主であるグレイソン・ハワード公爵は、差出人不明の手紙を読んで、一人考えにふけっていた。


そして、ふむと頷くと、姉であるソフィア王妃に、謁見の申し込みの手紙を書いた。


翌日、指定された時間に王城に着くと、ハワード公爵は、ソフィア王妃の執務室に通された。


中に入ると、既に人払いがされていた。


日頃から、聡明な姉であるとは思っていたが、それは、今も健在だと思った。


形式的な挨拶の後、二人はすぐに本題に入った。


「姉上、最近、巷で噂されている内容をご存知ですか?」


「グランテリアの悪行の数々は、実は誰かが流した噂である、という内容か?」


「さすが姉上、よくご存じですね。」


「ふふふ、ハワード家にいた頃から、町の噂は逐一報告させているからな。ところで、今日は何用か?」


「昨日、私の元に、このような手紙が届きました。物知りで、聡明な姉上なら、この意図がお分かりかと思い、相談しに参りました。」



手紙の差出人は「 R 」とだけ書かれていた。


手紙の内容は、サンチェス公爵とゴメス侯爵が、自分たちの利益のために、グランテリアの嘘の情報を流し、戦争を長引かせていることを書いているものであったが、その根拠まで具体的に書かれていた。


「ふむ、そう来たか。」


「姉上、やはり何かご存じで?」


「まあ、それは良い。ところで、お前はどうするつもりなのだ?」


「憎いサンチェスに一泡吹かせるのに、ちょうど良い機会かと。」


「私も同感だ。今まで、皆、心に思っていても、口にすることができなかった。世間の関心が高まっている今なら、風に乗るのも早かろう。ただの噂でも、多少のダメージは与えられるかも知れぬ。ただし、慎重にな。」


「はい。わかりました。」


「もしものときは、私を頼ると良い。王妃の権力で、できるだけのことはしてやろう。」




ハワード公爵が帰った後、ソフィアは、レオンと密談した日のことを思い出していた。


その密談で、ソフィアは、自分が終戦、同盟に賛成であるが、サンチェス公爵とゴメス侯爵の力が強すぎて、自分の意が通らぬことを話した。


レオンが、その二人に恨みを持ち、なおかつ、力の強い貴族は誰かと聞いてきたので、自分の実家でもあるハワード公爵の名を教えた。


祖父がサンチェス公爵に騙され、優良な鉱山の所有権を安い値段で奪われてしまったのだ。


それを知った父が、取り戻そうとしたが、法的に問題のない売買契約書が存在していたために、取り戻すことはできなかった。


公爵家の皆が、それはそれは、悔しい思いをしたのだった。


「王妃イレーヌの息子よ。そなたはどうやって、終戦まで持ち込むつもりか。」


レオンがこれからどう動くのか、ソフィアは、楽しみに待つことにした。




その日を境に、噂は具体性を帯びて広まり始めた。


平民は貴族の名前を出すことはできないが、名前を隠しながらも噂はどんどん広がっていった。


「どこぞのおエライお貴族様が、自分の儲けのために、グランテリアの嘘の情報を流していたらしい。」


「戦争が長引けば儲かる貴族が、グランテリアの悪口を流しているんだって。」


「聖女様は、グランテリアの騎士も兵士も良い人たちだって言ってたわ。やっぱり貴族の誰かが悪い噂を流したのね。」


「こんなことなら、もっと早く終戦になるべきだったのよ。お貴族様の利益になるような戦争は嫌よ。聖女様の言う通り、終戦、同盟に私は賛成するわ。」


「同盟を結べたら、冷害のときにはグランテリアからの食料支援とかもあるんですって。」




貴族の間でも、まことしやかに、ひそひそと噂は広がっていった。


「グランテリアの悪い噂を流していたのは、あの人でしょう。」


「自分の利益の為なら何でもするお方ですから・・・」


「終戦になると、もっとも損をするあの人なら、やりかねませんな。」


「あの人の利益のための戦争なんてばからしい。早く終戦になれば良いのに。」


日頃から、サンチェス公爵に対して溜まっていた鬱憤を晴らすには、ちょうど良かったようで、貴族の間でも、この話題があちこちで囁かれていた。




サンチェス公爵の屋敷内にある書斎で、サンチェス公爵とゴメス侯爵が密談をしていた。


「まったく困ったもんですな。公爵様の変な噂が飛び交っております。」


「まったくだ。今まで、こんなことはなかったというのに。これも、全て、聖女が来てからだ。聖女の口から、グランテリアの騎士と兵士を守る発言があったと聞いている。もしかして、噂を流しているのは、聖女自身なのか?」


「その可能性もございます。」


「もう、待ってはおられぬ。準備はできておるのか?」


「はい。ほぼできております。決行の日を指定していただければ、それに合わせて動くことができましょう。」


「そうだな。では、三日後はどうだ?」


「かしこまりましてございます。では、打ち合わせ通りに動きますので、公爵様もよろしくお願いいたします。」


ゴメス侯爵は、三日後の決行に向けて動き出した。


前もって準備をしていたので、後は駒を動かすだけ。


ゴメス侯爵は、酒場にいる男に決行を伝えに行った。


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