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憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


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60話 情報

サラの意識が戻ってから、レオンは、甲斐甲斐しく彼女の世話をした。


もちろん、身体を拭くなど、女性にしかできないようなことは、全てアイリスに任せてはいたが。


それまで、上体を起こして支えることは、ルークの仕事だったが、全てレオンに代わった。


だが、ルークの護衛任務は王命なので、彼は毎日、医療宮に来て、ドアの外で護衛任務に当たっていた。


トビーも王命で、一人で薬草をとりに行き、患者の家に届ける仕事をしていた。


薬草の乱獲を防ぐために、場所を知る者は、初めに行った四人だけにするという配慮だった。


サラの身体は日に日に回復していった。


レオンが持って来たグランテリアが開発した栄養剤は、ワーレンブルグのそれよりも効き目が良かった。


主治医のギルバートは、ぜひ、医療宮に譲って欲しいと言いだしたので、レオンは、同盟が結ばれた後に、薬も栄養剤も、いくらでも融通すると約束した。


これで、医療宮の人々は終戦、同盟賛成派になった。




サラは、自分が意識を失っている間のことを、アイリスから聞いた。


レオンが来るまでは、薬を飲ませる度に、ルークがサラを起こして支えてくれた。


ルークはサラを支えている間、どうか上手く薬が飲めますようにと、祈りともとれる独り言を口にしていた。


アイリスは、ルークのことを、無表情で怖い人だと思っていたが、一緒にサラのお世話をするうちに、見方が変わった。


案外良い人だと思うようになった。


サラは、暗闇の中で感じた温かい何かは、ルークだったのだと悟った。

 


レオンが医療宮にいる間、ルークは、サラに近づかなかった。


会いたいと思っているのに、会えないもどかしさが、サラにはなんとも辛かった。


神殿の祈りを再開すれば、また、ルークに会える。


だから、 一日でも早く元気になりたいと、サラは思った。




セブとディックは、医療宮に入ることが許されていなかったので、いつもと変わらない毎日を過ごしていた。


変わったことと言えば、レオンが連れてきた護衛騎士が、四人増えたことぐらいだった。


今日もいつものようにマテオと鍛錬をしていたが、人数は合計七人に増えていた。


休憩時間にマテオがディックに話しかけた。


「聖女様、ゴールドスネークの解毒薬が間に合って良かったな。それにしてもすごいよ。グランテリアには他にも解毒薬があるのかい?」


「ああ、それぞれの毒性に合ったいろんな解毒薬が作られている。前王妃のイレーヌ様が医療研究所も作ったからね。そのおかげで、我々国民は安心して働けるってもんだ。」


「へ~、そのイレーヌ様ってすごい人なんだな。我が国の王妃様も研究所を作りたかったらしいけど、ないってことは、そう簡単にできることではないんだろうな。」


「そうだね。膨大な費用が掛かるらしいよ。」


「そうか。じゃっ、休憩終わり。さあ、鍛錬を始めよう。」


七人は、また鍛錬を始めた。




レオンは朝から夕食時間まで、医療従事者として医療宮で過ごしているが、宿泊は迎賓宮ですることになっていた。


セブとディックの部屋で三人は話し合っていた。


「我が国の王妃様も、研究所を作りたかったらしい、付き人は、そう言ったんだな。」


「はい。ですが、作れなかったようです。」とディック。


「それは使える情報かもしれないな。他に情報は?」


「昨日、酒場で聞いた話では、聖女様がゴールドスネークの毒に打ち勝ったことを、人々は喜んでいるようでした。聖女の薬も熱病に効果があり、徐々に聖女様の人気が国民に浸透してきているようです。」とセブ。


「さすがサラだな。民衆の心を掴み、終戦、同盟の橋渡しになろうとしている。」


レオンは、サラの存在をとても誇らしく思った。


「サラの人気が浸透してきている今が、チャンスかもしれない。噂には噂で対抗だ。セブとディックは、潜入している五人に、噂を流すように伝えてくれ。」


セブとディックは目を輝かせて頷いた。




サラが目覚めて四日目、病室に、侍女を二人引き連れた立派な身なりの婦人が入ってきた。


病室にはサラ、アイリスと レオンがいたのだが、アイリスは、初めて見るその婦人が誰だか見当がつかなかった。


だが、サラが、「王妃様!」とベッドから降りようとしたので、その婦人が王妃であることが分かった。


王妃ソフィアは、ベッドから降りようとするサラを止めた。


「聖女はまだ病み上がりだ。何もしなくても良い。ベッドで寝ていなさい。」


サラは、言われた通りにベッドに戻った。


レオンは、サラの言葉を聞くなり、すぐに跪いたので、アイリスもそれに倣って跪いた。


侍女の一人が言った。


「王妃様 のお越しです。」


それに続いてレオンとアイリスが挨拶をした。


「ワーレンブルグの太陽であられる王妃様にご挨拶申し上げます。私はグランテリアの医療従事者レン・ガドフィールと申します。」


「私は聖女様の 侍女を務めている、アイリス・ハストルップと申します。」


挨拶が終わると「立って面を上げなさい。」と王妃ソフィアが二人に声をかけた。


「聖女が助かったときいて、見舞いに来たのだ。私の息子も聖女の世話になったのでな。それにしても、助かって本当に良かった。ゴールドスネークに噛まれて助かった者など、今まで聞いたことがない。これもグランテリアの解毒薬のお陰だな。そなたが解毒薬を届けてくれたのだな。礼を言う。」


「ありがたきお言葉でございます。グランテリアには、医療研究所がございますので、このような解毒薬を作ることができるのです。」


「医療研究所か。この国にはそのような専門的な研究所がないのでな。」


「恐れながら申し上げます。同盟が結ばれれば、我が国は、王妃様が研究所を作ることを、経済、人材ともに、全面的に協力いたします。」


「何と・・・。」


ソフィアは一瞬、目を見開いたが、すぐに元の表情に戻った。


「いや、一介の医療従事者の戯言を信じる程、私は愚かではない。」


レオンはそっと顔を近づけ、侍女たちに聞こえないように、小さな声で囁いた。


「もし、一介の医療従事者でなかったら?」


ソフィアは、まじまじとレオンの顔を見て言った。


「そなたの名前は何と言ったかな?」


「レン・ガドフィールでございます。」


「レン・・・ガドフィール・・・、ガドフィールと申すのだな。」


「はい、そうでございます。よろしければ、解毒薬のお話でもいたしましょうか? 解毒薬の作り方は秘伝であるため、お人払いをしていただかないといけませんが。」


「うむ、それが良い。場所を変えて話を聞くことにしよう。ついてまいれ。」


「はっ」


「聖女よ。そなたの元気な顔を見れて良かった。此度のこと、礼を言うぞ。」


ソフィアと侍女、そしてレオンは、病室から出て行った。


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