45話 会議
首脳会議は、終戦、同盟について話し合われたが、賛成と反対の二つに割れた。
出席者は、国王レオンの他に、宰相、財務大臣、法務大臣、軍務大臣、今回は戦争に関係する議案なので、近衛騎士団長、第一騎士団長、第二騎士団長も加わり、合計八名だ。
宰相マシューの計らいで、宰相補佐のロドも加わったが、これは、学習が目的であるので数には入らない。
軍務大臣、騎士団長の四名は、反対派だ。
軍務大臣の発言
「そもそも、好戦的なワーレンブルグ国が、終戦に応じるとは思えませんな。交渉しても無駄に終わるなら、聖女を危険な目に合わせる必要がないのでは? 万が一、聖女を失うことがあれば、国の損失が大きいではないか。」
第一騎士団長が援護射撃をした。
「だいたい、二百五十年まえに、不戦協定を破って攻め込んできたのは、あちらなんですよ。争いが好きなのは国民性みたいなもんです。こちらが終戦を望んでも、あちらにその気がなければ、交渉なんて成り立たないでしょう。聖女を使者に立てれば、これ見よがしに殺されることも視野に入れなければなりませんな。」
宰相、財務大臣、法務大臣は賛成派だ。
特に、財務大臣は強く賛成している。
「これまでの戦争で出た損失は計り知れない。終戦、同盟ができるのならば、どれほどの国益になることか。聖女を失えば国の損失が大きいと言うが、聖女がこの国に来てまだ一年しかたっていない。失っても、一年前に戻るだけではないか。終戦における国益を考えれば、交渉するべきである。特に、聖女が望んでいるのだから、使者として行かせるのに、不都合はあるまい。」
この意見に法務大臣が後押しをした。
「確かに、リキエル公と結んだ不戦協定を、最初に破ったのはったのはワーレンブルグだが、二百五十年前のことですぞ。それを、国民性だと位置づけるのは早計ではないか? それに、リキエル公に不戦協定結ぶように進言したのは聖女です。今回も聖女が終戦を進言している。聖女に万が一のことが起ころうとも、進言を受け入れるべきではないか。」
レオンは、鍛え上げた表情筋を使って、ポーカーフェイスで両者の意見を聞いていたが、実のところ、はらわたが煮えくり返っていた。
さっきから、聖女を失うとか万が一とか、サラが殺されることを前提で話してないか?
それに、失っても一年前に戻るだけとか、なんと勝手なことを言う。
少なくとも、皆、サラが危険な目に合うことは予想している。
やはり、サラの希望とはいえ、行かせるべきではない。
未来の王妃を、危険にさらすことはできない。
俺が反対をすれば、五対三。
終戦交渉の会議は、これで終わりだ。
ロドは、レオンのポーカーフェイスに混じる微妙な動きを見ていた。
「恐れながら、申し上げます。陛下に一言、申し上げてもよろしいでしょうか。」
本来ならば、今後の学習のために参加していたロドなので、意見を述べることは許されないのだが、レオンは許した。
「ああ、言いたいことがあったら、言ってみろ。私が許可する。」
「恐れながら陛下に申し上げます。リキエル公を尊敬している陛下のご意見を、お聞かせいただきたいと存じます。」
痛いところを突かれたと、レオンは思った。
この言葉は、幼馴染のロドだから、言える言葉だった。
子どもの頃、建国神話を聞く度に、ロドに話していたことがある。
聖女の知恵とリキエル公の勇気が交じり合うと、奇跡が起こったと伝説はいうが、勇気だけで国を興せるものではない。
リキエル公が持つ先見の明と、聖女の進言を受け入れる度量の深さと実行力、これこそが国の礎を築くもとになったのだと思う。
俺は、そんなリキエル公を尊敬している。
もし、俺の前に聖女が現れたのなら、リキエル公のように、先見の明と度量の深さと実行力で、聖女を受け入れ、国を発展させたいものだ。
つまり、ロドはこう言いたいのだ。
私情を挟まずに意見を述べよと。
ワーレンブルグの国王が崩御して、ワーレンブルグから二年の休戦の申し出があった。
ワーレンブルグも戦争で疲弊している証拠だった。
あと一年もすれば、休戦期間は終わり、また戦争が始まる。
確かに今がチャンスなのだ。
可能性があるのなら、それに懸けるべきではないか。
聖女であるサラが進言したのだ。
俺はそれを受け入れるべきではないか。
レオンはポーカーフェイスを崩さず、重々しく皆に言った。
「私は、聖女を使者として、ワーレンブルグに送ろうと思う。そして終戦、同盟の交渉をしよう。」
苦渋の決断だった。
賛成と反対が同数の場合、王の意見が優先される。
サラが和平の使者として、ワーレンブルグに行くことが決定した。
和平交渉をすることが決定したが、その前に、ワーレンブルグにその旨を打診しなければならない。
ワーレンブルグに、受け入れる意思がなければ、サラを使者として送ることも、和平交渉することもできない。
レオンは、ワーレンブルグ国王宛てに、親書を送った。




