↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/99

42話 名前

ベイツ伯爵の一件で、領地巡りは一時中断していたが、一ヶ月後に再開した。


出発の朝、レオンは、また、神殿に見送りに来た。


「行ってらっしゃい。気をつけて行くんだよ。何かあったら、すぐに連絡するんだよ。すぐに駆けつけるから。」


名残惜しげに、レオンは別れの言葉を告げた。


「はい。行ってまいります。」


サラはアイリスと一緒に馬車に乗り、御者のカイゼルは慣れた手付きで手綱をとった。


セブとディックは、いつものように馬で並走して、五人は旅立った。


レオンは、馬車が見えなくなるまで見送っていたが、その心は、サラが全ての行程を終えて帰ってきたときのことを考えていた。


考えていると、レオンの胸がポッと熱くなった。


だが、熱くなる理由は、まだ誰にも話していなかった。


サラたち一行は、その日の宿泊は、目的地の途中にある町の宿屋を予約していた。


食事中は、客の誰もサラたちに話しかけないので、みんなゆっくりと食事を楽しむことができた。


今では、国中に知れわたったマナーである。


食事が終われば、必ずサラは皆と祈りを捧げる。


だから、皆安心して待っていられた。


食事中、セブがアイリスに話しかけた。


「アイリス、もっと長く両親と過ごしたかったのではないか?」


「いえ、そんなことはございませんわ。私は聖女様と早く旅をしたいと思っておりました。」


するとサラが会話に加わった。


「 そういうセブはどうでしたか? ご家族ともう少し、一緒にいたかったのではありませんか。」


「いえ、聖女様、ご心配は無用です。」


「そうですか。セブ、ディック、アイリス、カイゼル、これからまたお世話になります。私のためにいつもありがとう。心から感謝しています。」


サラは、セブとディックを敬称なしの名前で呼んでいる。


今から四ヶ月前、旅が始まってすぐのこと。


サラたち三人は、セブとディックを護衛騎士様と呼んでいた。


しばらくして、サラがそう呼ぶと、二人とも同時に返事をした。


護衛騎士様では、どちらに声をかけているのかわからない。


「あの、セブ様に聞きたいことがあったのですが。」


「私は平民なので、セブと呼び捨てで呼んでください。」


「あの、でも、護衛をしていただいている身なので。」


すると、ディックが、二人の会話に割って入った。


「私たちは、身分に関係なくお互いを名前で呼んでいます。その方が、親近感がより強くなりますし、話しやすいのですよ。ですから聖女様も、私たちだけで話す時は、名前で呼んでください。」


「いいのですか?」


「もちろんです。アイリス様も私たちが年上だからと、気をつかいませんように。」


アイリスは、年下ではあるが、この五人の中では、公爵令嬢なので、一番身分が高い。


サラとカイゼルは、始めに名前で呼ぶことを決めていたが、セブとディックにとっては、呼び捨てなどできない高位貴族の令嬢である。


しかし、アイリスは、セブとディックにこう言った。


「お二人とも、私のこともアイリスとお呼びくださいませ。その方が、お互いに親近感がより強くなって、話しやすいですわ。ねっ!」


このとき、カイゼルは、自分には関係ない話しだなと思って聞いていたのだが、ディックがそんなカイゼルに気がついた。


「カイゼル、お前も、俺たちのことを敬称つけずに、名前で呼んでいいぞ。兄貴みたいでいいだろ?」


その言葉に、カイゼルは嬉しくなってウンウンと頷いた。


「それでは、皆さん、私のことも、サラと呼んでください。」


とサラが言うと、四人は慌ててブンブンと首を横に振った。


「大神官ジェネロ様が聖女様と呼んでいるのに、 私ごときが名前呼びなんてできるはずがありません!」


「聖女様は聖女様であって、聖女様以外の何者でもありません!」


カイゼルとアイリスが激しく拒否した。


陛下の大切な人を、名前で呼ぶなど、できるはずがなかろう。


セブは心に思ったが、口には出さなかった。


俺と聖女様が、お互いを名前で呼び合う? そんなことしたら、陛下に嫉妬の炎で焼き殺される! 


ディックも口には出さなかったが、顔面で拒否を表した。


というわけで、サラ以外は、名前で呼ぶことになったのである。


ちなみに、ずいぶん前のことだが、お忍びで合流したレオンが、おや?と気が付いた。


サラがディックを名前で呼んでいるではないか。


「俺もレオンと呼んでほしい。」と懇願した。


しかし「陛下にそのような不敬はできません。」と、あっさりと拒否されてしまった。




そして現在。


夕食を食べ終わったサラは、いつものように、食堂に集まった皆と一緒に祈りを捧げた。


皆は満足して帰っていった。





食堂の客が帰った頃、とある町の酒場で、二人の若者が酒を飲んでいた。


「なあ、お前、聖女の噂、知ってるか?」


「ああ、一緒に祈ると願いが叶うとか何とか言われてる聖女のことだろ。」


「そうそう、しかも絶世の美女らしいぜ。」


「はっ、どうせ神の手下みたいなもんだろ。俺は興味ないね。」


「神様嫌いがここまで来ると、呆れてものも言えないな。俺は、一度、会ってみたいなあ」


「ったく、俺たちが会えるわけないだろ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。