表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/99

41話 メイソン・ベイツ

注)今回は残酷な描写が含まれています。内容も非常に重いです。苦手な方、嗜好に合わない方は、ご注意ください。

メイソン・ベイツ少年は、ベイツ伯爵城で両親と一緒に暮らす元気な男の子だ。


もうすぐ六歳の誕生日を迎える彼は、少し気難しい父親と、優しい母親からもらう誕生日プレゼントを、とても楽しみにしていた。


ある日のこと、いつもより早く目覚めたメイソンは、二階にある子ども部屋のバルコニーに出て、空を見上げた。


雲一つない晴天で、澄み切った青空がどこまでも続いていた。


ああ、きれいだなぁと思った。


お父様は、昨日から王都にお出かけだ。

晴れて良かったな。

誕生日までには戻ってくるって言ってた。

きっと、僕のプレゼントも買って来てくれるんだろうな。


ふと下を見ると、母親が侍女もつけずに一人で庭を歩いていた。


あれ、お母様、一人でどこに行くんだろ。

散歩かな? それとも花を植えるのかな?


母親は、花の世話が好きで、よく庭師のキースに教えてもらいながら、花苗を植えたり、水やりを手伝ったりしていた。


メイソンも、一緒に植えたことがある。


キースの教え方が上手かったので、上手に植えることができた。


そんなメイソンを、母親は「偉いわね。」と頭をなでてくれたので、メイソンは上機嫌だった。


花苗を植えている母親は、とても楽しそうで幸せそうで、そんな母親を見るのも好きだった。


今、庭を一人で歩いている母親は、美しい濃い青のドレスを着ていた。


ああ、お母様のお気に入りのドレスだ。

あのドレスを着ると、城のみんながよくお似合いですって褒めるんだ。

僕もそう思う。

あのドレスを着たお母様は、きっと世界で一番の美人だよ。えへへ。

そうだ。お母様と一緒に花を植えよう。


メイソンは、母親のもとに向かった。


だが、花壇にはいなかった。


じゃあ、キースの家かも。


メイソンは、何度か訪れたことがあるキースの家に足を向けた。


庭師専用に作られた小さな家は、園芸資材や用具を入れる倉庫と、庭師の居住空間が隣合わせで作られていた。


キースの家が見えたとき、バタンと大きな音がして、ドアが乱暴に開かれた。


その音に驚いたメイソンは、思わす木の影に隠れてしまった。


出てきたのは、父親だった。


怒りを顕にした形相が恐ろしくて、メイソンは声をかけることができなかった。


父親は、小走りで、逃げるように去っていった。


お父様がなぜ?

お父様は王都にお出かけしたんじゃなかったの?

どうしてあんなに怒っているの?


幼心にも、ただならぬ予感を抱きながら、メイソンは、開け放たれたドアから家の中に入った。


しかし、中には誰もいなかった。


物音一つしない。


この部屋には、キースの寝室に続くドアがある。


メイソンは、恐る恐るドアを開けた。


メイソンは見てしまった。


血まみれのベッドの上に横たわる、二つの死体を。


ヒッ!


メイソンは、あまりの恐ろしさに声を上げることもできず、尻餅をついた。


血の海の中、男は服の上から背中がぱっくり割れていた。


その隣の女は、胸からあふれ出た血の海の中に横たわり、ドレスは真っ赤に染まっていた。


目をカッと見開いたその顔は、恐怖の絶頂で息絶えたことを物語っていた。


そして、無造作に転がされた斧が、女の体に重なっていた。


この人は誰? 

お母様?

違う、違う、この人はお母様じゃない。

お母様は青いドレスを着てた。

絶対にお母様じゃない。


メイソンは逃げるように自分の部屋に戻った。


その日から、メイソンは悪夢にうなされるようになった。


赤いドレスの女が、自分に向かって歩いてくる。


メイソン、メイソン


ずるずると斧を引きずりながら。


メイソン、メイソン


女は名前を呼びながら、一歩一歩と近づいて来る。


ギヤーーッ!


メイソンは叫び声と共に目を覚ます。


違う違う、お母様じゃない。


その度に、メイソンは、バルコニーに出て空を見上げた。


お母様は、きれいな青空の日に、必ず戻ってくる。

あのお気に入りの青いドレスを着て、必ず戻ってくる。


メイソンは、毎日母親を待った。


待った。


待った。


しかし、母親が戻ってくることはなかった。


いつしか、晴れた日の空の色と、濃く美しい青いドレスの色、この二つの色を追い求めることが、メイソンの生きる証であり、人生の目標であり、彼の全てになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ