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憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


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39話 拘束

思いもしなかったレオンの出現に、ベイツ伯爵は、一瞬混乱したが、我に返るとすぐに、疑問を口に出した。


「なぜ、陛下がここに?」


護衛騎士たちは王都に帰ったはずなのに。


「この者が案内してくれた。」


後ろに控えていたブラッドが前に出て跪いた。


「なんだと? ブラッド、お前、裏切ったのか?」


驚きと怒りの目が、ブラッドに向けられた。


「恩を仇で返しおって!」


ブラッドは、跪き、うつむいたまま、言葉を返した。


「伯爵様には、命を助けて頂いたこと、今でも感謝しております。ですが・・・ですが、私にだって」


ブラッドは顔を上げて、ベイツ伯爵の目をしっかりと見た。


そして、はっきりとベイツ伯爵に言った。


「私にだって、兵士の誇りが、人としての誇りがございます。」


魂の叫びだった。


「ぬうう・・・、ブラッド、貴様、よくも・・・」


レオンは、冷静な声で宣言した。


「ベイツ伯爵、あなたを聖女誘拐の現行犯で逮捕する。」


そして後ろに控えていた近衛騎士に命令した。


「ベイツ伯爵を拘束しろ。」


「はっ!」


近衛騎士が、返事と共に動こうとしたそのとき


「聖女は誰にもやらん!」


近衛騎士が、動くよりも早く、ベイツ伯爵が、動いた。


懐に隠し持っていた短剣を取り出し、鞘から抜くと、聖女に向き直り、短剣を持った右手を大きく振り上げた。


「聖女は、俺のものだ!」


短剣が、板の隙間から差し込む光に反射してキラリと光った。


「サラ!」


「聖女様!」


レオンが飛び出し、一瞬でベイツ伯爵の短剣を持つ手を掴み、横に引き倒した。


ドーン !


ベイツ伯爵とレオンが、同時に床に倒れ込んだ。


レオンと同時に飛び出したセブとディックは、倒れ込んだベイツ伯爵を押さえ込み、短剣を取り上げた。


本当に一瞬の出来事だった。


何事もなかったように立ち上がったレオンは、再度近衛騎士に命令し、近衛騎士は、用意していた縄でベイツ伯爵を縛った。


「伯爵を城に連れていけ。」


五人の近衛騎士は、縛られてもまだ、ブラッドに恨みの言葉をぶつけるベイツ伯爵を連れて出ていった。


ブラッドは、部屋を出る前にレオンに一礼すると、近衛騎士を案内するために部屋を出た。


部屋には、サラ、レオン、セブ、ディックが、残された。


「サラ、怪我はないか?」


レオンはサラに近づいて少し震える声で言った。


「はい。陛下のお陰で命を救われました。本当にありがとうございました。」


セブとディックは、そっと部屋を出た。


「どこか痛いところはないか?」


「はい。大丈夫です。どこも痛いところは・・・」


レオンが、こらえきれなくなったように、サラを抱き締めた。


「良かった!本当に良かった!」


その声は、泣いてるようだった。


「サラ、本当にごめん。すぐに助けにこれなくてごめん。あなたに、もしものことがあったらと思うと、生きた心地がしなかった。」


サラを抱きしめるレオンの力が強くなった。


「陛下・・・私は、もう大丈・・・」


「サラ、顔を見せて。」


レオンは両手で優しくサラの顔を挟むと、サラと目を合わせた。


レオンの輝くサファイアの目に、涙が浮かんでいた。


ああ、心優しきこの王は、私のことをこんなにも心配してくれていたのか。


サラの心に温かい感情が流れたが、同時に胸が苦しくもあった。


何人もの恋する人間を観察してきたサラには、レオンの目が、何を思い、何を語っているのか、わかってしまう。


このままではいけない。


サラは、そっとレオンの胸を押した。


しかし、レオンの両手は緩まず、サラを見つめたままだ。


「陛下・・・ご心配くださいましてありがとうございます。ですが、どうかお離しください。」


「あっ、ああ、すまない。」


レオンは名残惜しげに手を離した。


「サラ、あなたに聞きたいことが山ほどあるんだ。でも、とりあえずは、ここを出よう。城に戻って、ゆっくり体を休めてから、話を聞かせてくれないか。」


「はい。わかりました。」


レオンに促されて地下室を出ると、ドアの外にセブとディックが待っていた。


「陛下、森を通って行きますか? それとも地下通路で行きますか?」


森に出ると明るいが、すぐそばに馬がいるわけではなく、足場が悪い道をサラに歩かせねばならない。


暗くても、ランプがあるのだからと、レオンは地下通路を選んだ。


地下通路は幅が狭く、横に並んで歩けない。


先頭はセブ、その後ろにレオン、サラと続いて、ディックが最後尾を歩いた。


少し歩いたとき、サラが躓き、ぽふっとレオンの背中にぶつかってしまった。


「あっ、ごめんなさい。」


「サラ、転ぶと危ないから。」


レオンはサラの手をつないで歩いた。


つないでいる手は支えとなって、歩きやすくなった。


レオンの手は温かく、握り方も優しかった。


サラは、また躓けばレオンに迷惑がかかると思い、レオンの優しさに、少しの間、甘えることにした。


レオンは、この地下通路が、ずっとずっと続けばいいのに・・・と思った。




皆がベイツ伯爵城に着くと、そこからとても忙しくなった。


ベイツ伯爵の取り調べのために、サラの領地巡りはいったん中断し、皆で王都に戻ることになった。


王都に戻ると、ベイツ伯爵の身柄を検察部に引き渡し、取り調べと罪の確定が行われた。


まず、聖女誘拐監禁、及び殺人未遂。


これは、国王が証人となる現行犯だ。


ベイツ伯爵が言った拷問部屋は、ベイツ伯爵城の地下にあり、泣いても叫んでも外に声がもれない防音設備が整った部屋だった。


次に公金横領。


セブが証拠として差し出した書類により、殺された神官が報告した金額より高額の請求をしていたことが判明した。


また、請求書や監査書類に記された神官のサインは、偽造であることも判明した。


この二件に対しては言い逃れはできなかった。


公金横領の動機は、戦争で領地収入が減ったため、コレクションを手に入れる金が欲しかったという、極めて身勝手な理由だった。


チャリティーオークションで、絵画を高額な値段で競り落としたが、あれに関しても、結局、横領した金を使ったのだった。


しかし、神官殺害に関して、ベイツ伯爵は全否定した。


知らぬ存ぜぬの一点張り。


だが、これはブラッドの協力により、ベイツ伯爵に毒薬と睡眠薬を売った医者を突き止めることができた。


医者は、「弱みを握られており、仕方なく一般への販売を禁止されている毒薬を売ってしまった。だが、神官毒殺に使われたとは知らなかった。」と証言した。


城内を捜索した結果、半分使われた毒薬と未使用の睡眠薬が見つかり、これが動かぬ証拠となった。


他に恐喝と窃盗。


調べれば、まだまだ余罪があるだろうが、審議の結果、ベイツ伯爵の爵位剥奪、並びに死罪が確定された。


レオンの頭を悩ませたのは、ベイツ伯爵の家族に対する処分だった。


慣例では、同罪にはしなくても、何らかの処罰が家族に与えられる。


しかし、ベイツ伯爵夫人は、十年以上も前から別居しており、離婚を請求していたという。


さて、どうしたものかと、目の前に置かれている報告書を手に取った。


既に一度読んでいる報告書は、夫人の証言を、速記記録官が夫人の言葉通りに記録したものであった。


レオンは再度報告書を開いた。


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