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憂鬱聖女の結婚事情 ー憂鬱聖女は今日も最愛の恋人を探して旅に出ますー  作者: 矢間カオル


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24話 旅の途中

サラたちが初めに目指した場所は、馬車で二日ほどかかるテイラー侯爵領だ。


王都に近いため、領地民の人数も多く、商売も盛んで活気にあふれているという噂だ。


神殿も王都ほどではないが、なかなか立派で大きいらしい。


テイラー侯爵領に到着するまで、サラたちは街道を通り、食事や宿泊は、町や村の食堂や宿屋を使うことにしている。


食事時に町が近くにない場合は、馬車に積んでいる干し肉や乾パンなどを食べる。


地図を見ながら計画を立てるのも、ディックとセブの仕事になっていた。


神殿を出て五時間後、王都の端にある町の食堂で、一行は昼食をとることにした。


「すぐに食べ物を運ばせるので、荷物番をよろしくお願いしますね。」


サラは、御者のニックにそう言って食堂に入っていったが、ニックはサラの心遣いを嬉しく思った。


普段、御者のことを気にかける貴族や金持ちはめったにおらず、荷物番なんて当たり前すぎて、お願いなんてされたことがない。


言葉通り、すぐに運ばれてきた食事はとても温かく、普段より品数が多く、とても美味しかった。


きっと聖女様が、自分のために頼んでくれたんだなと思うと、ニックの心がほわっと温かくなった。


サラたち五人が食堂に入ると、食堂にいた客が驚いた顔をしたが、騒ぐことはしなかった。


神殿で祈りを捧げた客もいて、その者たちはサラの顔を知っていたし、聖女に声をかけるべからずという決まり事も、よくわかっていた。


だから、食事中はそっとしておくことがマナーだと、じっと我慢をしていたが、こんな機会はめったにあるもんじゃない。


客の数人が、店からそっと出て行ったかと思うと、ぞろぞろと店の中に静かに人が増え始め、気がついたころには、ほぼ満員状態になっていた。


サラたち五人が食事を終え、一息ついたかと思えたときに、客の中の一人がサラに声をかけた。


「あ、あの・・・失礼とは十分わかっているのですが、もしよろしければ、一緒に祈りを捧げていただけませんか?」


店の中にいる全ての人が同じ考えらしく、期待を込めた目でサラを見つめていた。


「はい。喜んでお受けいたします。私も皆さんと一緒に祈りを捧げたいと思っていました。」


サラは皆がよく見えるように、店の一番前に歩み出て、いつものように言った。


「皆さん、それでは一緒に祈りましょう。私が終わりを告げるまで祈ってください。」


ここでも残念ながらヒューイの存在を確認できなかったが、これからも食堂にたちよる度に、こうやってヒューイ探しができると思うと、サラは嬉しく思った。


この噂は瞬く間に広がり、これから先、食堂で食べた後も、宿で泊った朝も、人々は集まり、サラは集まった皆と祈ることになった。


そして、一緒に旅をしている皆は、サラが嫌な顔を全く見せず、むしろ積極的に人々の願いを聞き入れ祈る姿に、さすが聖女様と感動するのだった。




馬車の外側には、鳥かごが一つぶら下げられていて、その中には鷲を小型にしたような鳥が、ちょこんと止まり木に止まっていた。


民家のない街道で休憩するときは、ディックが鳥を鳥かごから出してエサをあげたり、なでたり、少し飛ばして運動させたりしていた。


カイゼルはその鳥にとても興味を示した。


「ねえ、ディック、僕がエサをあげてもいい?」


「やってみるか?どうなっても知らないけど・・・」


ディックは、ミミズが入った入れ物とピンセットをカイゼルに渡した。


鳥はディックの腕に止まったままだ。


カイゼルが、恐る恐るピンセットで摘まんだミミズを、鳥の嘴に近づけると・・・


「いててててて!」


鳥はカイゼルの手を、嘴で激しく突いた。


「ははは、ごめんごめん。レディが懐いているのは俺と陛下だけなんだ。だから人からエサをもらうときは、俺と陛下からしか受け付けないんだ。」


「まったく冗談がすぎるぞ。危険なことは初めに忠告するべきだ。」


馬の鐙を点検していたセブが横やりを入れた。


そばで皆の会話を聞いていたアイリスが尋ねた。


「レディって、鳥の名前?」


「ああ、そうだよ。この鳥はイグレスって種類の鳥でね。すっごく賢いんだ。だから上手く訓練すれば伝書鳥にも狩りにも使える。俺と陛下で伝書鳥の訓練をしたのさ。俺が放せば陛下の城へ。陛下が放せば俺のもとに戻ってくる。それで、二人の名前を合わせてレディって名前にしたんだ。」


アイリスの隣にいたサラが、可愛い名前ねとレディに話しかけると、驚いたことにレディがクック―と甘えるような声を出し、サラの肩に飛び移った。


しかもレディはサラの頬にすりすりと自分の頬を摺り寄せた。


「え~、レディ、なんで?」


一番ショックを受けたのはディックだったが、


「さすが聖女様と言うべきなのだろう。」


セブの言葉にアイリスもカイゼルもうんうんと頷いたのだった。




王都を出発してから、翌日の昼にはテイラー侯爵領内に入った。


馬車から見る農村で働く人々は、真面目に働いていて、皆の顔に笑顔があふれていた。


きっと農産物の収穫が良かったのだろう。


農村を抜けると町に入ったが、市場や店などにも活気があり、往来する人々の数も多く、王都の賑やかさとさほど変わりなく思えた。


サラたちは食事や休憩を繰り返しながら、日没直前にテイラー侯爵城に着いた。


大きな門がテイラー侯爵の羽振りの良さを表しており、その向こうに見える城もとても大きい。


セブが門の番人に聖女が来たことを告げると、連絡は届いていたらしく、門番は門を開けてくれたが、門番の表情が暗かったことが気になった。


馬車はそのまま門を通り抜け、城の前で停まると執事が迎えに出てきた。


セブが馬車のドアを開け、サラとアイリスが出てくるのを手伝った。


カイゼルは、御者のニックの隣に座っていたので、御者台から降りてきた。


五人がそろったところで、執事がサラに話しかけた。


しかし、この執事も暗い顔をしている。


「聖女様、遠方よりお越しいただきましてありがとうございます。どうぞ皆様、中にお入りください。ただ・・・、今は立て込んでおりまして、十分なおもてなしができないかもしれません。そこのところはどうぞご理解くださいませ。」


執事に案内されながら、サラたち五人は城の中に入った。


入ったものの、使用人らしき男も、メイドたちも皆表情が暗く、中には泣いてる者もいた。


「何かあったのですか?」


サラが尋ねると、執事は答えて良いのか判断に困ったらしく、言葉を濁した。


「いえ、あの・・・それが・・・・」


そこへ、この城の主人らしき身なりの良い老人が現れた。


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